エピローグ・ナンパされてから始まった恋の行く末は――
「…………たしかに、怪我は治ってます。けど、1度全てを投げ出してここに来たんですよ……!?」
「それでもいいじゃないか。君なら実力で、相手も黙らすことが出来るだろう?」
「それも、できます……」
「いちばん大切なのは気持ちだよ。どう考えても、自分のことが一番大切だ。――あぁ、これだと社長としての立場とは矛盾するけど、これは1人の人間としての言葉だ」
――急に、現役復帰とか言われても決断できないのが普通だろう。
紗月のマネージャーから、別の人のマネージャーへ。そう思っていたのが、急にまたアスリートに戻る道が示された。
たしかに大変だ。俺だったら、頭の中がぐるぐるして何が起こっているのかわからなくなるだろう。
「自分の気持ちに従って、答えを出してくれ。俺は応援しているぞ」
「……はい」
社長は俺たちのいる部屋から出ていこうとしてしまう。
けど、完全に出る前にもう一度俺の方を向いて。
「琉斗くん。君にもそのうち、話があるんだ――」
―――――――
「終わったー!」
「ようやくだー!」
湊と晴翔は、戦いからの解放を喜んでいた。
彼らでも、今回の任務は大変だったようだ。
「けど、途中から琉斗に関する呟きが多くなってきたのは解せぬな」
「しかも内容が『会見に出てる紗月さんの彼氏、イケメンすぎる』とかばっかりなのが余計にな」
そう、今回の会見。話題の中心となったのは、もちろん会見の内容もそうだが主には、琉斗の容姿に関してだったのである。
「――『俳優になってくれないのかな』か。まぁあいつじゃ無理だよな」
「けど、山本さんのマネージャーとしてくらいならたまにあるんじゃね?」
「え? マネージャーさんは別にいるんじゃないのか?」
「……あいつら、イチャイチャしたいがために琉斗がマネージャーになる可能性があると俺は踏んでるんだ」
「……たしかに。ま、これでアイツらも晴れてカップルということで!」
「そうだな!」
そうして、2人はポンポンとお互いの肩を叩く。
そこには、2人と琉斗の間にある、固い絆が現れていた――。
―――――――
「琉斗!! 早く!! 玲奈さんの復帰戦だよ!!」
「おうよ。――今日も、あれするのか?」
「……お願いしよっかな」
俺と紗月は、同じ屋根の下でテレビに向かっていた。
俺が座って、その膝の上に紗月が居る。
カップルがよくやるそれだ。
「けど、こんなに頻繁に俺が紗月の家に来てもいいのか?」
「うーん、いいんじゃない? 打ち合わせってことにできるし」
「――たしかに、家に来れることのが俺からしても嬉しいことばっかりだしな」
紗月が俺の方を向く。首の回る角度がどうなってるんだ、と思いつつも、やっぱりその可愛さに見惚れる。
そして、お互いに笑いあって――そのまま唇を重ねた。
「幸せ、だなぁ」
紗月がどこか上の空になっているかのように言う。
「俺も、同じ気持ちだよ」
この気持ちは、俺たち二人の間で永久に共有できるものだ。
「あ、始まるっぽい!」
「よし……! 玲奈さん頑張れ!」
そう意気込んで応援を始めたのはいいものの…………
「あれ、もう終わりなの?」
「……おう、玲奈さんが強すぎるのが全部悪いわ」
一瞬で決着がついてしまった。
結果は玲奈さんの圧勝。テレビでは、『最強女王の帰還!!』ともてはやされている。
「すごいね、玲奈さん。これに加えて、まだ私のサポートもし続けてくれてるんだもん」
あの会見から、3ヶ月くらい経つ。結局、玲奈さんは紗月のマネージャーを続けることになり、選手と並行して行うことになっているらしい。
「ほんとう、頭があがらねぇな」
「……ま、今の琉斗からしたら師匠みたいなものだしね」
「…………実は、結構厳しめなんだよな」
この会話がなんの会話かというと、俺にも、やりたいことが出来たのだ。
――そう、紗月のマネージャー業。
俺が裏で、紗月をサポートする。そう決めたのは、あの会見をしてからすぐのこと。
だから今では、玲奈さんから色々なことを学んでいる。……少し厳しめだけど、やりがいもあるんだ。
「けど、将来は2人で支え合って行く、でしょ?」
唐突に、とんでもないことをぶっ込まれる。
「――もちろんだ」
けど、考えていることは俺だって同じ。こんなことで返答に窮するような俺じゃない。
「よし、じゃあ打ち合わせ、始めるか」
「私の2作目の主演ドラマ、成功に導いてよ? マネージャーさん」
「当たり前だろ? ――俺の作品でも、あるんだから」
そう、紗月の2作目の主演ドラマは、俺の作品でもある。
――俺の、俳優デビュー作。
社長さんから、あの後直々に話を頂いた。
俺がネット上で、話題沸騰中なんだと。
だからこの機会に乗じて、君も俳優になってみないか? と。
いちばん俺の背中を後押ししたのは――紗月と、同じ舞台に立てるということ。
紗月を、影からでも。表からでも、支えることが出来る。
そう思えば、俺が1歩踏みだすことに何ら躊躇はなかった。
「ふふっ、2人で最高の作品にするんだよ?」
「当たり前だ。――よろしく頼みますね、ヒロイン様」
「任せておきな!? ――相手役の琉斗を導いてあげよう」
本当に、俺の彼女は心強い。こんな彼女がいて幸せ者だ。
「よし、じゃあまずは共演者から――」
こうして、俺たちふたりはカップルとして、仕事仲間として、人生を過ごしていくことになる。
俺たちの最初の作品は、後に世間でも大きな話題を呼ぶことになる。
そんなドラマになるとも知らず、俺たちふたりが打ち合わせを行っているドラマのタイトルは――
“街でナンパから助けた男の子が、私と犬猿の仲であるクラスのイケメンモデル様だった件”
〜〜〜完〜〜〜
――――――
あとがきだけ書きたいと思っています。
今日か明日、あとがきを更新して完結とさせていただきます。
ひとまず、本編はここまでです。
この作品に巡り会ってくれた方々、本当に。本当に、ありがとうございました!!!
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