第42話 最強、動く
「君のその強さ、活かさなくてもいい。けど、いざという時に発揮出来る。そんな仕事に就くつもりはないか?」
人気絶頂、半タレント化してきている。そんな時に、大怪我をしてしまった私は、人生に失望してしまっていた。
まだ、齢17歳だった。高校すら卒業していない。青春を、全て努力に注いできた。
そんな私から、努力をつぎ込んできたものを奪ったら、一体何が残るのか。
そう思っていたところに、声をかけてきてくれたのが、今の会社の社長さん。
「君の、努力を続けられるところ。そこは、才能だ。その才能を、私たちの業界で活かしてほしい」
そう言われてしまっては、断る理由なんて見当たらなくて。
その日から、私がマネージャーとして、1人前になるための修行が始まった。
しんどいこともあったし、理不尽だ! って思うこともあったけど、タレントさん画私のことを頼ってくれることが嬉しくて。
ようやく1人前になれた。社長さんからもおっけーを貰った。そんなときに私の担当になったのが紗月さんで。
実はこんなことを言われていた。
「彼女を――山本を、人気者に出来たら、君には次のステップに移ってもらう」
だから、全力でサポートした。話し相手にもなった。最初は、私の出世のため。
けどそれがいつしか、私の心の支えにもなってたりして。あぁけど、出世する、ってことは決まってるし。
もう変えられない。人気になってくれた紗月さんに、最後に私ができること。
それは、少しでも脅威を取り除くことだよね。
「なんで、ここだとわかった?」
だから、目の前に、写真を流した犯人がいるってわかってても冷静に過ごす。
ここでことを荒らげるのは得策ではない、そう思っているから。
「あぁ、紗月さんから教えてもらったんですよ。あなた、紗月さんをナンパした張本人ですよね?」
紗月さん達が急に仲良くなった理由は、ナンパ師から助けたから。そう聞いていた。
そして、撮影の時の様子で、確実にこの人はただのファンじゃない。何か変だなって思った。
決め手は、撮影の時の言動。
『狙った獲物は、逃しませんから』
普通だったら、ただ撮影中に執拗に声をかけていただけの紗月さんに向けた言葉に聞こえる。
それだったら、紗月さんに視線を向けながら言っていた意味も通る。
けど――それだけじゃない。そう思った。
「あぁそうだ。狙った獲物は逃さない、1度言ったはずだよな?」
やっぱり。推測が当たっていた。つまり、目の前の男は――
「最初にここでナンパした時からずっと、紗月さんのことを狙っていたと?」
「あぁ、そういうことになるな」
はぁ。ストーカーと言われてもおかしくないことをしている。その自覚は無いものか。
いや、あるよね。あるからこんなことをしてたんだろうなぁ。まぁ仕方ないかな。
「で、紗月さんたちの写真を流した、と?」
「あぁそうだ。紗月とあんな奴が付き合ってる、そのことがそもそもおかしいとは思わないか?」
全く思わない。イライラする。許さない。
いくら顔が少しいいからとはいえ。
「いえ、全く。紗月さんと彼氏さん、お似合いだと思いますけどね?」
「へぇ、お前の目は節穴なんだな。というかそもそも、俺が付き合ってやってる、って言ってるのにあんな奴を選ぶなんて……」
あぁだめ。すごくダメ。なんでだろう。
紗月さんも、琉斗さんも。両方貶して。
私を貶すならどうでもいいんだよ。けど、私の大切な人たちを貶すだと?
――昔の、血が騒ぐ。
「あぁ? 目が節穴なのはお前の方じゃねぇのか?」
「……んだと?」
「そもそも、ナンパするようなクソ底辺が、ちょっと顔いいからって言って紗月さんに選ばれると思ってるのが間違いなんだよ。ドブにでも嵌ってろカス」
……もう、後には戻れない。
久しぶりに戦闘態勢に入ろう。こっからは、裏での闘い、決着をつけるために暗躍しよう。
――よし、私なら。かつて、世界一になったことのある私なら、きっと大丈夫。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます