第38話 会見①
挨拶をした瞬間、カメラのシャッター音が鳴り響く。
はっ、なんか有名人になった気分だ。ただの高校生だっつーのにな。
「さて、みなさま。こちらからは、何も申し上げることはありません。悪いことは何もしていませんので。そのため、いきなり質問を受け付けようと思うのですが」
これは、監督さんからの入れ知恵。全部の質問に答える、という姿勢を見せることで、あらぬ疑いを晴らしてしまおうということだ。
そして、いろんな会社の人が手を挙げている。
うーん、最初は1番近くにいる人でいいか。
ちなみに、この会見に司会者はつけてない。
俺が自分で、当てる人を決めようと思っているから。
「ではそちらの方、どうぞ」
「ありがとうございます。えー、琉斗さんと、紗月さんが付き合っている、という報道は事実でよろしかったのでしょうか?」
「はい、その通りです」
否定はしない。する意味がない。堂々と知らしめてやろう、そう思っているから。
「は、はぁ……。出会いはどこで?」
「高校ですね」
「なるほど。ありがとうございました」
最初の人は、意外とまともだった。普通もっとマスコミってさ、――いや、これはただの思想になってしまうか。
「では次、そこの4列目の方」
「はい、ありがとうございます。おふたりは、いつから付き合い始めたのでしょうか?」
……来た。この質問、正直に答えるか否か。
正直に答えなかったら、一体どうなる?
考えろ。考えろ。どっちの方が、紗月にとって得になる?
――決めた。
「今日、ですね」
「……はい?」
「今日、さっき、付き合い始めました」
ざわ、ざわ……。また会場がざわつく。そりゃあそうか。付き合ってると思って記事を出したのに、本当はそのとき付き合ってなかった、だもんな。
マスコミのメンツが潰された、と思われても仕方がない事実になっている。
「それは本当ですか?」
「えぇ、紗月呼んできましょうか?」
「い、いえ。結構です」
思わず紗月、と呼んでしまったことは触れないでいただきたい。
「では、次の質問がある方――二列目の女性の方。どうぞ」
「ありがとうございます。あの、先程述べられていたことが事実とするのであれば、週刊誌の方は、付き合っていない人たちを熱愛、と報道したということでよろしいでしょうか?」
「えぇ、その認識で間違っておりません」
つまり、誤報だ。週刊誌は誤報が多いとはいえ、こう公の場で堂々と誤報を突きつけられたら、少しくらいダメージが与えられてるはずだ。
「――嘘だ!」
そんな黒い考えが頭の中で渦巻いている中、ある1人の記者が声を上げた。
名前を見る――あぁ、俺たちを盗撮した出版社の人間か。
「嘘、とは?」
「あの写真を撮った時には、もう付き合っていたのだろう!? 私たちのイメージを下げるために嘘をついているのではないのですか!?」
予想通りだ。予想通りに、アホな質問だ。
正直に言う答えるまでもない。くだらない。少しくらい頭を働かせればわかることだろうに。
「そうですねぇ、本機で復讐したいと思っているのなら、今頃盗撮の被害届でも出してますかねぇ……」
少し笑って。なるべく煽って。
「理解されましたか? 私が復讐目的で嘘をつくことなどないんですよ」
「……なるほど」
そこからも、どんどん出てくる質問に1つずつ、丁寧に答えていく。
そして、質問がなくなってきたところで、俺の方から作戦を用いる。
「さて、では質問が一段落したところで――僕の方から、質問させていただきます」
―――――――
はい、また遅れちゃいましたね。
課題やばいっす許してください。
そして、明日はマスコミボッコボコにするぞぉ!
お楽しみに!
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