第35話 ガチ惚れ
「琉斗ってさ、自分がクラスの中でモテないなーとか思ってたんでしょ？」
「……まぁ、うん」
なんだろう。顔はそこまで悪くない――と、思いたいけど、何故かモテないどころか女子からは意図的に絡まないうに避けられてる気がしていたんだ。
だから、女子の中でまともに話が出来ていたのは紗月だけ。
あとはほとんど男子の友達ばかりだ。……ノリが良くて楽しいけどな。
「それってね、琉斗が人気なかったってわけじゃないんだよ」
「……どゆことだ？」
避けられているのに、人気がないわけじゃない？ ……何を言っているのかよく分からない。
避けられてる＝嫌われてる＝人気がない、この式は成り立つはずだよな？
「うーんとね、今から言うこと、ちゃんと受け止めてくれるかな？」
「そりゃあ。別れてくれとか言われない限りは」
「それは言わないよ！？ 大好きだし」
紗月はそう言って、一度深呼吸をして。
「琉斗がモテなかったのって、全部私のせいなんだよね」
「……え？」
あまりの衝撃に、間抜けな声が出てしまった。
……え？ 紗月のせい？ 紗月がなにかしてたのか？
うーん？ 普通の高校生（モデル様ではあるけど）にそんなことできないと思うんだけどなぁ。
「私さ、琉斗と同じクラスになって、すぐ好きになったって言ったでしょ？ それでさ、私と琉斗、すっごくクラスで話してたでしょ？」
「うん、確かにめっちゃ話してた」
「そしたらさ、クラスのみんなが琉斗は私のものだって勘違いしたらしくて」
「……なるほど？」
勘違いされるほど仲良くはしてなかったと思うんだが。喧嘩してたんだし。
「でさ、勿論私は琉斗のことが好きなわけでしょ？ ……だから、みんなにお願いしたんだよね。『琉斗に唾つけないでね』って」
紗月はガン決まった目で言う。重いお話が飛んできた。
「……ごめ、やっぱり重かったよね。こんな私の事なんてもう……」
「いや、大丈夫だ。確かに……少し重いな、とは思ったよ？｣
そう伝えると、やっぱりと言った表情で、少し雰囲気が暗くなる。
「けど――好きな人に向ける感情って、それが普通なんじゃないのか？」
「……え？」
「俺はさ、紗月が初めての彼女だから。普通はどうだ、とか。これは一般的にはおかしい、とか。そういうのは全然わかんない。けど、別にいやとは思わなかった。なんなら――ちょっと嬉しかったかも｣
そう、俺だって大概だ。こんな気持ちを受け止められてるんだから。好きだっていう気持ちは負けるつもりないし。
「へぇ、重い女が好き？」
「別に、きらいじゃない」
「こんなに重くても？」
「まぁ、好きな人から向けられるなら」
「これからもっと悪化するかもよ？」
「それは俺も、可能性があるだろ？」
「へぇ、覚悟できてるんだ？」
質問攻めを捌いていく。うん、一度大丈夫だ、って思ったらなんてことはない。
逆に愛しさまで感じてくる。
「覚悟できてる、っていうかさ――紗月に向けられる分にはなんでもいいんだよ。全部大好きだから」
あー。言ってしまった。やっぱり今日の俺、ちょっとおかしい。浮かれてる。
重いって思われる。紗月よりよっぽどじゃないか？ 今の発言。
「……ね、琉斗ってさ、思ってたより私のこと好きだったりする？」
「え、大好きだぞ？」
「……なにそれ。ガチ惚れしてるじゃん」
「逆に、紗月はガチ惚れしてくれてないのか？」
「――してるに決まってるでしょ？」
俺の横にいる彼女は、世界で1番可愛い。
少し会話をするだけで、その確信がどんどん深まっていく。
「じゃあ琉斗、そろそろ向かわないとね」
「……そうだな」
そして、今から2度目の大勝負。
けど、俺たちならきっと大丈夫だ。
告白は成功した。
天気は快晴。今を輝いている紗月と同じくらい、太陽も明るさを放っている。
ほら、いいことしかない。じゃあ失敗するはずがないだろ。
そして――隣には、紗月がいてくれる。
この事実があるだけで、俺は元気づけられる。
――――――――
琉斗がモテない理由を明かすお話でした。
そして、明日からは最終のお話へ。
さて、驚きの展開もご用意してますよ。
それでは、本日更新が遅れたことをお詫びいたします。そして明日からも、このお話を読んでいただけると幸いです。
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