第34話 照れ隠し

 まだ信じられていない。隣にいてくれる好きな子が、俺の彼女になっただなんて。


 すっげぇ可愛い。さっきよりも可愛くないか? 彼氏――まだこう自認するのは恥ずかしい――の、贔屓目を抜きにしても可愛すぎる。


「あぁ……! まだまだ信じられてないなぁ」


 ひとしきり泣いて、少し顔が腫れている紗月がつぶやく。


「俺も。こんなに幸せでいいのかなって」

「ねーほんとに。今、私たちが日本で1番幸せだと思うよ?」

「当たり前だろ?」

「へへぇ……」


 俺の腕に頬擦りしてくる。かわいいな。うん、かわいい。かわいいしか語彙力がなくなってるけど、かわいい。


「ね、琉斗っていつから私のこと好きだったの?」


 ひとしきり頬擦りを終えて。けど恋人繋ぎじゃなくて腕に絡みついてくるようになった紗月が聞いてくる。


 ……これはまた難しい質問だ。


 気持ちを自覚したのは、つい最近。うん、ドラマの撮影が始まって少し経ってから。


 けど、個人的な考えでは、多分もっと昔からすきだったんじゃないのかなって思ってる。


 じゃないととっくの前に紗月のことは嫌いになってただろうし。


「悩んでるね? もしかして、最初からだったり?」


 あながち間違ってはいない。故に肯定も否定もしにくい状況で。


 押し黙ったままいると、紗月の顔が段々と赤くなってきて。


「やば、私と一緒じゃん」


 そう言ったのであった。


「――え?」

「だから、私と一緒だねって!」


 えーっと、それってつまり……


「紗月さん、だいぶ前から俺に惚れてた?」

「――そうだよ! 私は実は同じクラスになってすぐから、琉斗のことが好きでした!」


 自分の方から聞いたはいいものの、いざ面と向かって言われるとすこし気恥しい。


 2度目の告白みたいだしなぁ。


「へぇ……」


 思わず顔がにやけてしまう。


 なんだ、両思いだったのか。それも最近じゃなくて、ずっと昔から。


「ってことは、俺に対して態度がきつかったのって……?」

「……お察しの通りだよ? 恥ずかしくて、ついついきつく当たっちゃってた」


 はっ。思ってたよりも惚れられてるじゃねぇか、琉斗くんよぉ。


 お前、ほんとに幸せものだな。あんなにモテないモテない騒いでたのはなんだったんだって言うくらいに可愛い彼女ができて。


 ――うん、それはそれとして。


 紗月の方に近づいて、頭を撫でてやる。

 さらさらな髪の毛。そういえば、髪のケアは結構入念にしてるって言ってたような。


「な、紗月」

「……なに? 重かった?」

「いや、お前さ――可愛いかよ」

「え?」

「だから、最初から俺のことが好きだったのも、それの裏返しで強く当たってたのも。全部、可愛いかよ」


 ……あぁ恥ずかしい。2回も言わせんなこんなこと。照れるだろ。


 けど、嬉しそうにしてるから。その事実だけで、2回言っても良かったって思える。


「ありがとね、琉斗。こんなに重い女を受け入れてくれて」

「――好きな子だったら、重くても大歓迎だぞ?」

「じゃあ――まだ、琉斗に話さなきゃいけないことがあるんだけど、いいよね?」


 少し神妙な面持ちで、そう話しかけてくるのだった。


 ……別れ話、とかじゃなかったらいいんだけど。


「大丈夫、別れ話とかじゃないからね?」

「お、おう……」


 俺の不安を見透かしたのか、紗月が追加で一言言ってくる。


 けど、わざわざ今話さなきゃいけない話って、一体何なのだろうか……。








―――――――







ここでキャッチコピーの回収しました!

こんなふうに、まだまだ若干謎に包まれている部分を明らかにしていくのがこっからのおはなしです!


安心してくださいね! イチャイチャも沢山ありますから!


そして昨日は星たくさんありがとうございました!! まだまだまえます! 頑張ります!



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