デート、そして――
第27話 俺と一緒に、悪い子に
『琉斗:明日、一緒に出かけよう』
覚悟を、決めた。告白をしようと。
紗月に連絡をいれる。明日、出かけようって。どこでもいい。紗月といっしょに過ごせるのなら。
『紗月:……明日、会見じゃないの?』
やっぱり紗月は真面目だから。会見を優先させようってしてる。
けど――ちょっとだけ、悪い子になってもいいんじゃねぇのか?
『琉斗:午前中は、空いてる……よな?』
『紗月:けど、あんなの撮られた上にまた――』
『琉斗:紗月、俺達が会見する理由って、こういうことを堂々とするために、だろ?』
すぐに既読はつくけど、返信はなかなか来ない。
葛藤してるんだろう。一日くらい、我慢したほうがいいんじゃないかって。
『紗月:……わかった。出かけよ?』
けどな、紗月は結局来てくれる。なんでかわからないけど、そんな確信があった――。
________
紗月とデートの約束を取り付け、それに対するワクワクのあまりあまり寝られなかった。……まぁ寝られなかったからと言ってなにかあるわけではないけど。
ちなみに、週刊誌は今日発売だ。
そして会見も今日。対応は早いほうがいいと思うし。
多分今日のSNSでは、だいぶ話題になってるんだろうな。
連ドラ主演女優と、一般人との熱愛報道。しかも週刊誌、顔にモザイクかけてなかったから。
……あれ、今さらながらに思うけど俺達デート行っても大丈夫なんだろうか?
大丈夫、のはずだ。だって俺達は――ナンパ師からも逃げおおせたんだから。
髪をセットして、勝負服に着替えて。紗月の家に迎えに行く。
堂々と、しておかないとだな。萎縮してたらまたマスコミに騒がれる。
明るい日差しの下、周囲にいる明らかにカメラを持っている怪しい人たちのことを横目に、紗月の家に行く。
おうおう、もっと見たらいいさ。減るもんでもないし。これも全部――今日の反転攻勢の材料になってくれるから。
紗月の家に着き、インターホンを鳴らす。
「春宮です」
「琉斗ー! すぐ行くねー!」
その言葉のとおり、1分も待っていない間に紗月は出てきてくれた。
「琉斗ー!」
いつもの撮影終わりとは違う。俺にしか見せてくれないであろう、優しい雰囲気を漂わせて声をかけてくる。
「……あ、おはよう」
少し歯切れが悪くなってしまった。
それも仕方がない。だって今の紗月は、俺でさえ見たことがないくらいには素敵で。
深い青色のブラウスを着て、下には黒のロングスカート。モデルをしているだけあってスタイルはいいけど――それをより良く見せているのが今日の服装である。
髪の毛はさらさらで、顔にはいい感じに化粧が施されている。
「ね、変じゃないよね……?」
不安そうに俺の方を見ながら尋ねてくる。
俺からしたらなに当たり前のことを聞いているんだって思うけど、ここは言葉にしてやらないといけないってこともわかってる。
「すごくいいぞ。――めっちゃ可愛い」
そして、今日は俺だって本気なんだぞっていうことを示すために、言葉にだって気を遣う。
「ありがとう。琉斗だって――いつもよりクールな格好で、めっちゃかっこいいよ」
その言葉と共に、いつも通り――いつもって言えるくらい、回数が多くなってきた――に手を繋ぐ。
「行こうぜ。今日はめいっぱい楽しむんだろ?」
「うん――学校サボってデートする、悪い子二人だけどね」
小悪魔的な笑みを浮かべながら。けれど、俺よりもこの状況を楽しんでいるであろう紗月が言う。
たまにはこういうのだっていいだろう。
「――俺と一緒に悪い子になろうぜ?」
「ん、喜んで」
俺の、人生をかけた大勝負は、最高のスタートを切った。
まだまだ最高の思い出にするつもりの一日は始まったばっかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます