第26話 作戦会議
「――――俺が、マスコミ全員の相手してきてやるよ」
紗月にかっこよく思われたくて、こんなふうにカッコつけた言葉を発してしまった。
けど、たしかに監督さんたちが言っていることは正しいことで。
俺だって、不注意で。俺だって、紗月と一緒にいたいっていう気持ちが強くなりすぎてしまって。
だから、その気持ちになったからには、俺だって動かなきゃいけないんじゃないのかなって。
そして、俺は監督さんと話をすることになった。
「……君は、本当にマスコミの相手をする覚悟ができているのかね?」
電話越しでもわかる威圧感に、正直怯まされてしまいそうになる。
けどさ、俺はもう決めたから。カッコつけて言ったこと。だから――後戻りなんて、できねぇし、したくもない。
「はい」
力強く。覚悟が伝わるように答える。
「そうか。なら、作戦を説明するぞ」
そう言われて説明されたものは、普通に誰でも考えつくことじゃないのか、と思う内容が――最初の方は、多かった。
記者会見をして、そこで弁明したり。その場に、途中から紗月が入ってきたり。
「最後に。君も、会見までにやってほしいことがあるんだ」
「なんでしょうか」
「私達は、この出来事を社会的に知らしめたいって思ってるんだ。そのためには、SNSで味方を得ることが大切で。――ここまで言ったら、わかってくれるかい?」
これはつまり、SNSを煽動して、俺達の味方につけようってことだよな。
なるほど、今までのメディアになんかそもそも期待していない、と。
週刊誌の味方になる可能性のほうが高いと踏んでいるわけか。
「えぇ、わかりました」
そう返事すると、監督さんはふっと笑って、
「物わかりがよくて助かるよ。将来この業界に入ってくるつもりはないかい?」
「……ない、ですかね」
――将来的に、紗月のサポートという形でこの業界に入ってくる可能性はあるかもしれないけど。
こんな浮ついたことを言うのは正直少し恥ずかしいから。
「そうか……。じゃあ、よろしく頼む。また明日、会場は連絡するよ」
「わかりました」
ツー、ツー、ツー。
電話が切れる音とともに、ほっと一息つく。
やっぱり緊張するものだ。自分よりもだいぶ目上の人と話すなんてさ。
けど――まだ俺はやらなきゃいけないことがあるよな。さっき監督さんに頼まれたこと。
そのために俺は――――親友二人に連絡をいれる。
『琉斗:二人に、お願いしたいことがある』
俺と、晴翔と、湊。3人のグループラインに、こんなメッセージを送った。
するとすぐに既読がついてくれて、
『晴翔:珍しいな、お願いなんて』
『湊:まぁ、できることなら何でもするけど』
こういうとき、なにも詮索せずにお願いを聞いてくれることが、俺にとってはとてもありがたい。
『琉斗:二人の――――拡散力を、頼らなきゃいけない状況になってな』
実はふたりは、機械系に詳しい。その気になれば、スパムレベルにツイートを繰り返せるくらいには。
ここから、今の俺に起こっていることを説明する。もちろん、紗月と付き合っていないことも話しながら。
『晴翔:なるほどなぁ?』
『湊:まさかここで、スパムみたいなことをしなきゃいけなくなるとは』
『晴翔:ほんとだぜ笑 あれ結構手痛くなるんだぞ?』
結構重要な事を話したつもりだったのに。
結構無理なお願いをしたつもりだったのに。
ふたりはやる気でいてくれる。
『琉斗:ふたりとも――ありがとう』
『湊:あ、一つだけ条件があるぞ』
なんだろう? 気になる。
『晴翔:ちゃんと告白しろよ』
『湊:気持ちを伝えてからだぞ』
『晴翔:お、揃った笑笑』
……くっそこいつら、ぜんぶお見通しかよ。
『琉斗:……わかった』
『湊:それでこそ、だ。頑張れよ』
ぜんぶお見通しだけど、どこか救われた。
一つ、決心する材料ができた。背中を押された気がした。
……こういうところが、好きなんだ。こいつらと、親友で居たい理由。
――よし、そろそろ覚悟を決めないと、だな。
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