第24話 変革
「……え?」
頭が、耳が。全く正常に働かなかった。
なにを言っているのか理解ができなかった。
迷惑をかけている私をするすどころか、味方になる。いっしょに戦ってくれる。
そんな都合の良いことがあっていいのかな。いや、あるわけないよ。あるわけないから困惑してるんだよ。
「これは本気ですよ。紗月さん。どうですか? 彼氏さんと堂々と過ごせる世界、作ってみません?」
正直、私にそんな力があるとは思っていない。
まだまだ若手の私、たとえ主演を張っていると言えども若手。
けど、人としてのやりたいことはたくさんある。
友達とバカして笑い合ったり。
世界一周の旅行をしてみたり。
あぁ、まだ見つかってない新種の動物を見つけてみるとかもやってみたいかな。
そんな夢の中でも、一番大きな夢は、私の好きな人とイチャイチャすること。
仕事が仕事だし、そんなことはできないって端から諦めてた。
できないことをわかってこの業界に飛び込んだんだもん。わがままを言うつもりはなかった。
けど、わたしっていう人は。仕事が忙しくなるにつれて、欲が深まっていって。
どうにか照れ隠しで、琉斗と喧嘩っぽいことをして、好きっていう気持ちが爆発しないようにしてた。
なのに。ナンパから助けてくれた琉斗は、今までよりも何倍もかっこよくて、さすが私の王子さまだって。
もう抑えられない。もうだめ。私は琉斗とイチャイチャする。
その覚悟が決まった瞬間、どんどん琉斗にアタック仕掛けていって。
相手を照れさせることもできた。
カウンターを食らわさせることもあった。
そんな一瞬一瞬が思い出で、私の一番大好きな時間で。
最近の感じ、多分琉斗も私のことを好きになってくれてるんじゃないのかなって思ってる。
そう思ってたからこそなのかな。私は、仕事があるっていう事実から目を背けちゃって。
誰が見てるのかわからないまま、簡単に手を繋いで。毎日、毎日ずっと。
だから撮られた。言い逃れはできない。私が悪い。
だけど、私に協力してくれるっていう人がいる。しかも変な人じゃない。私と一緒に歩んできてくれた人と、私と一緒に作品を作ってくれていた人。
迷惑をかけてしまったのなら、私の身を持って、その二人の申し出を引き受けなければならない。
――覚悟は、決まった。
「私に、できるのなら。やらせてください。禊のためにも」
私はずいぶんと長く考えていたのだと思う。だからなのかな。私が了承の返事をした瞬間にふたりはすごく嬉しそうなかおをしてくれて。
「じゃあ二人で頑張っていきましょう」
「紗月さん。あなたを矢面に立たせてしまうかもしれない。批判を食らってしまうかもしれない。それでも、やってくれるってことだよね?」
……そんなことは、わかっているのだ。それでも私がやりたいって思った理由は、禊ともう一つ――
「――えぇ、私のことは、大好きな人が慰めてくれるので」
ふたりはふっと笑って、
「そうか。じゃあ明日から。よろしく頼むぞ」
「……はい!」
――変革させてみよう。こんな社会を。
私が琉斗と一緒に、堂々と。イチャイチャできる世界を作るために。
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