2人の危機

第23話 スキャンダル

「紗月さん。今すぐ来てください。いつもの撮影現場です。緊急で話し合わないといけないことがあります」


 撮影も一段落して、明日から学校に復帰できるかもしれないという日曜日。


 急にマネージャーさんから電話がかかってきて、今日は撮影もないのに呼び出される。


「……はい、なんでですか?」

「……それはこっちに来てから話します。ですが――覚悟しといてください」


 今日はいつもより何倍もマネージャーさんの言葉が暗くて。もしかしたら私なにかやらかしちゃったのかもしれない。そう思って、急いで撮影現場に向かう。







 _______







「ようやく来ましたか……」


 撮影現場に入ると、マネージャーさんと監督さんが私のことを待っていた。


「じゃあさっそく本題に入るが……」


 そこで一度言葉は切られ、監督さんと目が合う。

 思わず息を呑む。


「実は、明日発売の週刊誌にこんな記事が出されるらしくてな」


 見せられた画面は、日本では一番メジャーな週刊誌。あることないこと書くけど、『文春砲』などと言われていたりもする。


 けど、今回乗っている記事は明らかに正しい記事で。


『君の心を溶かした末にの主演、山本紗月に熱愛報道!? 撮影からの帰りに、男性と腕を組む現場を激写!!』


 こんな見出しのタイトルとともに、私と琉斗が手を繋いでいる姿や、イチャイチャしている姿が載せられていて。


 混乱してる。動揺してる。どうしたらいいのかわからない。申し訳ない。


 舞い上がりすぎていた。主演のドラマの撮影中だっていうのに。私のプライベートはもっと後回しにするべきだった。


 そんなふうにひとりで焦りまくっていると、マネージャーさんから言葉をかけられる。


「あー、紗月さん。今日は責めるために呼び出したんじゃないんですよ」

「……え?」


 監督さんも同意するように頷く。


「実は、こうなることはわかっていたんだ。私も、マネージャーさんも。けど、あえてなにも言わなかった」

「私達はさ、演者の幸せを優先したいの。それに――紗月さんなら、変えれるから」


 意味深に言われたこの言葉。全く意味がわからない。なにを言っているんだろう。


 というか、変えれる? なにをだろう。


「山本さんは、多分自分が思っているより才能も、人気もある」

「私と、監督さんは、そんな才能に惚れた」


 脈略がない。なんでこんな、告白みたいなことを今されてるの? 私を責めるべきなんじゃないの?


「なにが起こっても俺が。この有名な監督である深海誠が、起用してやる。干したりはしない」

「私も、紗月さんのことは妹のように思ってる。見捨てたりなんてしない」


 なんでこんなに、目の前のふたりは優しいんだろう。私のことを責めないでいてくれるの?


 他の役者さんにも迷惑かかってるし。今すぐ処罰食らってもなにも文句言えないと思ってたのに。


「だから――――一つ、俺達と一緒に社会を変えてみないか?」

「……はい?」


 あれ、さっきまでは私のことを信じてくれるとかなんとか……。なんで急に社会変えるとかいう話になってるの?


「紗月さん。本心では、彼氏さんと付き合ってたいって思ってるよね?」

「……もちろんです」


 実は、付き合ってないんですけど。なんで言えるわけないか。


「じゃあこの機会に、山本さんといっしょに一つ動いてみたいんだ」

「動く……ですか?」





「――――好きな人と一緒にいるだけでスキャンダルになる、こんなおかしい世の中を変えてみないか? ってことだよ」







_______







なんでこんな事になってるのか作者もわかってません。けどまぁ、なるようになりますね。


こっちには琉斗くんいるので。無敵です。


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