第10話 大好きだよと愛してると付き合って
「あれ？ もう降参？ なにも話さなくなってるけど。やっぱり私のほうが強かったかぁ……」
「いや、まだ終わってねぇぞ？」
負ける気はさらさらない。降参なんてしない。照れさせたら勝ち。
「――大好きだよ、紗月」
ちょっと言い方を変えてみよう。若干不意打ち、けどそれはさっき紗月もやってたからね。
……けどこれ、結構効いてるんじゃねぇのか？ なにも話さなくなってるし。顔赤くなってるし。
いや、急に我に戻っただけっていう可能性もあるけどさ……。
「……こっちのほうが大好きなんだけど？」
なるほど。これは結構くるね。
「愛してるし大好きだって！！」
「それはこっちのセリフ！ 私と付き合うとかどう？」
「付き合う程度で終われるわけねぇだろ？ こっちのが愛してるんだから」
その言葉を最後に、少しの沈黙ができた。
その間、紗月はなにかを言うまでもなく体をわなわな震わせて。
なにかしてしまったのかな、って思ってたら一言言われるんだ。
「――破廉恥」
ここで、ようやく自分の言ったことに気づく。
なんかこれ……。誘ってるみたいになってるよな。
「違っ……！ 違うからな……！？」
「――ま、別に受け入れてあげるけどね？」
(ﾟＡﾟ;)ｺﾞｸﾘ。……そんなことを言われたら期待――するわけじゃないけど、ちょっとばかし勘違いしちゃうかもしれないだろうに。
そもそも男として見られてないとか？ うん、そっちの可能性のほうが高そうだな。
よし、また愛してるゲームに戻ろうか。そろそろ勝てるかもしれないな。
何回も戦ってきたけど、ようやく初勝利か。嬉しいなぁ。（フラグ）
「――そゆとこもふくめて愛してるぞ」
「え？ 私のが愛してるよ？」
なんでこいつは、いともたやすくカウンターを返してくるのか……。
「なに言ってんの？ こういう言い合いも俺は好きなんだが？？ ……愛してるよ」
「もう。ほんっとに降参しないんだね」
「そりゃあな。負けたくないわけだし」
「へぇ……」
なんだか不気味な気配を感じてる。このあと、特大の一撃がくるみたいな。
これは、警戒をつよ――
「――――愛しとーよ」
めるまえに、特大の一撃がきた。
けどまだ、うん。まだ負けてない。だいぶ照れてるけど。だいぶ羞恥心が限界に来てるけど。
それでもまだ！！
「な、俺と付き合おうぜ？」
「えっ……！？ いや、それはまた意味が……」
「いや、さっき紗月も言ってたしな。あと普通に、愛してるゲームの延長線上だろ」
「むぅ……」
なに不満そうな顔をしてるんだか。いや、どっちかと言えば期待ハズレで落胆してる顔とでも言えばいいか。
「ってことで、愛してるぞ、紗月」
「大好き、琉斗。結婚しよ」
「おまっ……！？ さっきそれはまた意味が違うって……！」
「ま、琉斗のそれがオッケーだったらこれもオッケーだよね」
そう言われてしまっては俺はもうなにも言えない。
けどさ、そろそろ決着をつけてあげないといけないと思うんだ。
いつまでもこんな――羞恥心に耐えながらするのは自分的によくない。
俺が勝つ。その形で決着を付ける。
俺は前に聞いたことがあるんだ。紗月は意外と強引にされるのが好きだって。
ならこの言葉が、最強に効くんじゃないのか？
「――な、紗月」
「なに？ 愛してるよ？」
「――――もう俺の女になれよ」
「はうぅ……」
俺の渾身の一撃を食らった紗月は、膝から崩れ落ちた。もう完全に照れてるな。
ここで判定をしよう。
――春宮琉斗、史上初の歴史的な勝利を挙げる。
……それはそれとして。
とんでもなく恥ずかしいんだが！？！？
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