第9話 愛してる
「ね、一つ勝負してみない?」
教室でどうでもいい言い合いをして。湊や晴翔にいじられて。
けどそれは楽しかった、その楽しかったことをした日の放課後。
今日も結局なぁなぁで一緒に帰ることになった紗月が話しかけて来る。
「いいぞ? まぁどうせ今日も俺が勝つんだろうけどな」
というか、めずらしい。いつもは勝負を仕掛けるでも仕掛けてくるでもないのに。
話してて、白熱して。気づいたら、喧嘩みたいになってる。もちろん本気でやってるわけじゃ……ないよな?
いや、負けたくないとは思ってるけど。喧嘩して、仲が悪くなる。なんてことはないから。
「……今日はほんとに私のほうが負けそうなんだよねぇ……」
「へぇ、珍しいな」
いつもなら自信満々に、負けるわけないっていう雰囲気が溢れ出てるのに。
「ま、とにかく私と勝負してくれますか!?」
「それは別にいいけど……?」
というか、今更なにをいう。普通にふっかけてきたらいいだろうに……。
「じゃあ、私と愛してるゲームしよ?」
……?
「ごめん聞こえなかったもう一回」
「だーかーらー! 私と! 愛してるゲームしようよって!!」
…………?
「いや、まじでなに言ってんの? もう一回」
「愛してるゲームしようって言ってるの!! 愛してる!!」
「へぇ、愛してるんだ」
「……違うから!! 愛してるゲームしよって!」
っとまぁ、一回からかいを挟んだところで冷静になろうか。
今の状況としては、俺と紗月が二人で帰ってて、その帰り道、愛してるゲームをしようと言われた。
……うん、どこのラノベの世界線かな?
「……いや、俺とだぞ? あんなに喧嘩してる俺とだぞ??」
「いいの! 結局あんたが一番仲いい男子だから……」
「それは……まぁ嬉しいんだけどさ」
愛してるゲームをする必要があるのか……?
別に他のゲームでもよくないか? なんでわざわざそのピックを……。
しかも紗月はモデル様だ。万が一スキャンダルなんかになってしまったら……。
「ね、いいでしょ……? ――愛してるんだから」
とんでもない不意打ちがきた。まだやるとも言ってないのに。
ま、負けてやるつもりは毛頭ないがな。
「いいぞ? 俺のほうが愛してるからな?」
「愛してるよ、琉斗」
「愛してるぞ? 紗月」
お互いに、若干照れが入っている気がする。
「愛してる!!」
「愛してるよ、紗月ちゃん」
「愛してる愛してる愛してる」
「こっちのほうが愛してるっつーの」
中学生くらいだろうか。ある1人の男の子が俺達の近くを通り過ぎる。
……やめろ。顔を赤くしながらこっちを見るな。俺だってやばいことをやってるのはわかってるから。
「琉斗!? 私は琉斗を愛してる」
「愛してるよ……! ダカラハヤクコウサンシテ」
「なんて言ってるのよ……。けど、そんなところも愛してる」
いやけどこれ、愛してるって言い合うだけじゃ一生決着つかない気がするな。
もう俺達なんか耐性ついてきてるもん。愛してるっていうことを恥ずかしいって――いや、思ってるけど負けたくないだけか。
けどさ、愛してるゲームって、相手のことを照れさせたら負けなんだよな??
なら、『愛してる』と同じ意味の言葉なら多少は許されたりしないか?
……よし、やってみよう。
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