閑話 モデル様の本心
「お疲れ様でしたー!」
ある有名雑誌の専属モデルとして、1ヶ月後の表紙の撮影を終えた。
相変わらず撮影をするのはつかれてしまうけれど、どこか楽しい部分もある。
「今日もいい感じでしたね」
担当のマネージャーさんが、私に向かってねぎらいの言葉をいってくる。
この人はとても優しい人だ。私がこの業界に飛び込んだ時から、心配して、大切にここまで育ててくれた。
わたしはこのマネージャーさんなしではここまで上り詰めることはできなかっただろう。
「ありがとうございます」
「……じゃ、今週も頑張ってね! 意中の彼を落とすの」
「ちょっ……!? そんなんじゃないですって」
「……照れやさんだなぁ……」
実はこのマネージャーさんには、私の学校での恋心を一度うっかり漏らしてしまったことがある。
本当はこんなモデル業、恋愛なんてないに越したことはないのだけど、マネージャーさんは私のことを責めるどころか恋を応援してくれている。
「ま、まぁとにかく……! 今日もありがとうございました!」
「うん、また来週もよろしく」
マネージャーさんや監督さんたちに挨拶をして、家路につく。
あぁ。明日になったらまた彼に会える。
私が大好きで、私がいっつも自分に素直になれなくて喧嘩してしまう彼と。
________
変装をする。私は、このまま街に出てしまうと一般のファンの方に声をかけられてしまうから。
厳重に。マスクをして、フードを被って、メイクを落として。
もうこれをしたら、一般人。誰にも身バレする心配なく歩ける。
って、思っていたのに。
「な、そこのお嬢ちゃん。俺とお茶でもどう?」
なぜかはわからないけど、チャラそうな男にナンパされてしまった。
……最悪だ。わたしは今まで、この変装のおかげで、声をかけられるなんていうことはなかったのに。
対処法を知らない。初めての経験だから。
怖い。心配。悲しい。誰か助けてほしい。このまま連れて行かれるのか……。あぁ、私は傷物にされるのか……。
そんな恐怖でいっぱいだったところに、ある1人の男子高校生が来てくれた。
その人は最初はナンパ男に詰められてて、やっぱりだめか……って思ってたけど。
「あなたと一緒にですけどね! 行きますよ!」
その言葉とともに、私の手を握って走り出してくれた。
かっこいい。自分の危険を考えずに私のことを助けるために頑張ってくれている。
そして、走っている途中に気づいた。私を助けてくれた人は、私の想い人である春宮琉斗くんだって。
本当は大好きで仕方がないのに、私が自分の気持に素直になれずに喧嘩ばっかりしてしまっている人。
彼には本気で嫌われてるのかもしれないけど、わたしは大好きな人。
幸せ。この幸せをずーっと噛み締めていたい。そう思ってたら、いつの間にか家の近くまで送ってもらって。
「お前……紗月か……!?」
本性がバレてしまって、結局素直になれずに喧嘩してしまったけど、休みの日に彼と話せた時点で大満足。
……幸せな1日。ナンパされるのも悪くないのかも? ……大好きだよ、琉斗くん。
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