第4話 モデル様の正体が――

「もうここまで来たんだし俺が送っていきますよ……」


 さっき受けた衝撃波との攻防の末、どうにか勝利してこの世に戻ってきた俺は、隣のモデル様に言う。


「……えぇ」


 あの。そのお返事はどちらなのでしょうか。


 私が送っていったほうがよろしいのでしょうか? それとも送らないほうがよろしゅう? あ、私がストーカーみたいなことするんじゃないかって思われてるんですね?


 いやぁそんなまさか厄介塵人間ストーカーじゃないんですからするわけないじゃないですかやだなぁ……グヘヘ。


「……なんかその顔見たら頼む気なくなりました」

「ごめんなさい私に護衛させてください」







 _________







 結局その後も送っていく、送っていかないの攻防を繰り広げた末、俺が押し切ることに成功した。


 ……俺が。モデル様の家に行けることになった。


 ありがとうお母さん。この世に生を授けてくれて。あなたのおかげで今俺は日本で一番幸せものだよ。





「へぇ……。あの『逃げるは恥だが役立つこともある』に出演されてたんですか……」

「まぁ脇役ですけどね……。主演なんて、まだまだ張れませんよ……。そもそもモデルですしね」


 夕方の帰り道、どうでもいい世間話。


 なんとまぁ、周囲からの視線がすごいもので。


 隣のモデル様、顔を隠しているんだ。それなのに、どこか溢れ出るオーラがあるのか知らないが、道行く人がほぼ全員彼女のことを見ている。


「……なんかあのカップルお似合いじゃね?」

「カップルにしては距離ありすぎるけどな笑」


 なんていう言葉も聞こえてくる。


 カップルに見えるんすか。なるほど。お母さん。あなたの息子は新しい称号をてにいれましたよ。


「まぁけど、結構有名な雑誌の表紙飾ったこともあるって」

「……コネ、ですよ。私自身の実力が評価されて表紙に起用されたわけじゃない」


 話しててわかったけど、隣のモデル様、実は結構ネガティブっぽくて。


 俺がすごいですね、とか言うたびに否定してくる。全部実力じゃないんですよ、とか。


 オーラが伝わってくる時点ですごいんだけどなぁ……って、伝えてあげても否定するし。


「それでも、俺に名前は教えてくれないと」

「……バレたくないので。まぁもしまた会うことになったら教えてあげますよ」


 ……危機管理の意識が強いようで何よりだ。俺的には悲しいけどな。


 俺の家が近くなってくる。ま、今日は送るって言ったしな。別にちょっと時間を浪費するくらい関係ない。


 それよりもモデル様と話せていることがすごいことだと思うんだ。


「あ、私このへんなので」


 ……! モデル様の家もこの辺らしい。


 あれ、こんなに家近いのに会ったことが無い……? 


 いや、そもそも相手が何歳かもわからないからまぁ仕方ないか……。


「じゃあ、気をつけて帰ってくださいね」

「えぇ、今日はありがとう」


 結局顔も見れず。名前も聞けず。連絡先を交換できず。


 ただ、モデル様の意識が隣を歩くという貴重な体験をしただけ。


 それだけでも、充分だ。そもそも俺なんかがそんな体験をできただけでも素晴らしい。


 そう思っていたのに――


「あら、紗月。めずらしいわね、あなたが男の人と帰ってきてるなんて」


 ――突然現れた女性は、――。







________







ここまでがプロローグっす! 略称は『街モデ』にします!

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