第3話 延長戦は終わらねぇ
相変わらずこっちに顔を向けてくれない女子と。
どうしても顔が見たいけどそのことを言葉にできない男子の。
気まずい帰宅の時間、はっじまーるよー!
「いえーい! どんどんぱふぱふー!」
隣からとんでもない空気が漂ってくる。
周りの目線も、すごく冷たいものとなる。
いや、仕方ないじゃん。ちょっと気分盛り上げようとしただけなんだからさ。
いくら電車の中ではしゃいだからって言ってそんな目を向けないでくださいよぉ……。
そんな、許してくださいよ……。ゴマ擦りますから。えへへ。
「……ちょっと離れてもらえます?」
「アッハイ」
……ごますっても許してもらえない世界線って存在するんだァ……(白目)
_______
「で、今日はどんな用事で街に出てきてたんですか?」
俺は沈黙はあんまり好きではない。積極的に話しかけようぞ。言葉こそ人間最大の発明だからなぁ!
……まぁ、さっき離れてくださいって言われたばっかりだから今回はちょっと良くない気もするけど。
「……ちょっと用事で」
「用事って、どんな?」
まぁ根っから拒絶されてるわけじゃないみたいだ。もしそうだったら今頃俺は痴漢冤罪でもかけられてるだろうし。
「……言わなきゃだめですか?」
「いやまぁ別にだめってわけじゃないけど……」
うぅ。めっちゃ警戒されてる……。そんな、危害を加えるなんてことは――しない、はず。
うん、なんか異常に色気を出してくるとかそんなんがない限りは多分我慢できると思うよ。
そんなに猿じゃないしね。
「……ま、いっか。あなた助けてくれたんですもんね。――私、今日はある雑誌の撮影で」
ほぉ。これはまた素晴らしい。なんと俺が助けた相手、モデルさんなんですか……。
……はっ!? モデル?? えっ? は?
「あの、聞こえなかったんですけど」
「だーかーらー!! 私、今日モデルの撮影だったんですよ!! 誰にもいわないでくださいね!?」
……へぇ。こんな現実あり得るんだね。
素晴らしい世界線に来たみたいだ。実はおんなじクラスにもモデル様いるんだけど、そいつとは俺まじで仲悪いからなぁ……。
こんなところでモデル様と接点を持てるなんて。……神か?
おんなじクラスのモデル様なんかより可愛いだろう。うん、そうに違いない。
だってこんなにおしとやかな雰囲気が出てるんだから。これはもはや俺に付き合えと神様が言っているに違いない。
「……そうなんですか……! それはまたすごいですね……」
絶対連絡先聞こう。電車降りる前に連絡先聞こう。そこからメッセージでやり取りしてキャッキャウフフができる世界線へ――!
――あっ。俺もうこの駅で降りないといけないじゃん。
そして連絡先は聞けていない。このことが意味するものは――
死。
やっぱり俺なんかがモデル様と連絡先を交換するなんてできない。できっこねぇよぉ……!
「……じゃあここで降りるので――って、あれ」
「……私もここで降りるんですよ」
なんか既視感のある光景が目の前に広がっていますが。
――ナンパ師からの保護、EXステージ、はっじまっるよー!!!!!
……よし、絶対連絡先交換してやるからな。
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