最推しのVtuberが隣に住む腐れ縁の幼馴染だったことが判明しました~不健康すぎる生活をしているようなので推し続けるためにお世話をしようと思います~
第10話 久しぶりに一緒にやるゲームはやっぱり楽しい
第10話 久しぶりに一緒にやるゲームはやっぱり楽しい
彩音のお父さんとお母さんの話を聞いて何も思うところがないと言えば嘘になる。でも、彩音がそのことを過去のこととして自分の中で消化できているのなら、俺にできることは彩音の願い通り変に気を使ったりなどせずに、これまでのように接することだ。
「やっぱり配信前にゲームの練習とかするのか?」
俺たちは彩音の部屋に移動して昔のように一緒にゲームをするために準備をしていた。
「ストーリー系のゲームはそんなことしないんだけど、今日やるのは一対一の格闘ゲームだからね」
俺の質問に答えながら準備を進める彩音。
「なんでだ?」
「配信始まる前にちょっとやっとかないとキャラを上手く動かせないんだよね。しかも、あまり下手すぎると色々言われちゃうし」
「あー……なるほど」
個人的にはゲームの配信をしているとはいえ、プロではないのだからゲーム技術を求めすぎるのはどうかと思う。推しが楽しんでゲームをしている姿を見るために来ているのであって、上手なプレーを見に来ているのではないのだ。
たしかに配信者の中にはゲームが上手で、思わず拍手してしまいそうになる程のスーパープレイをする人もいる。でも、全員がそうではないのだから、わざわざコメント欄にまで来て文句を言うのはどうかと思う。
実際、花火ちゃんの配信でもそう言った人たちがいた。一人のリスナーとしては悲しいが、だからといって俺にできることはない。せめてそう言った人たちが気にならないように精一杯応援することだけだ。
配信は楽しそうにゲームをしているように見えるが、それだけではないと言うことがわかる。こうやって少しでも自分が上手くプレーできるように配信前から準備しているのだから。
「今日の配信でやるゲーム覚えてる?」
「もちろん」
知ってて当然のことを聞いてくる。推しの配信内容くらい把握している。
「『大乱闘スマッシュシスターズ』だろ?」
『大乱闘スマッシュシスターズ』は人気格闘ゲームだ。今では世界大会が行われるほどだ。
ゲームに出てくるキャラクターは全部で長女から十女までの計10人。この姉妹達は一人の男を巡り戦うと言うなんとも言えない設定があったりする。
キャラクター自体にはそれぞれ特徴があり、かなり凝った作りとなっている。
「そうそう。湊は最近やってる? 昔はよく二人でやったよね」
「そうだな」
まだ疎遠になる前。二人とも子供でよくわからないまま純粋に楽しんでいた。
「最近も一応やっている」
「ふーん、どのくらい?」
「まぁ、人並み程度には」
「そっかぁ! 昔はいい勝負だったけど今は私の方が強いかもね!」
嬉しそうにする彩音。若干煽っているように感じる口調と目線にイラッとする。昔から彩音は調子に乗りやすいのだ。
「私は配信で結構やっているしそれなりに勉強しているから昔とは比べ物にならないくらい強くなったしなぁ〜」
どんどんと調子に乗っていく彩音。俺もこのまま黙っていられるほど大人ではないようだ。昔も似たようなやりとりをしたような思い出がある。どうやら全く変わっていないらしい。
「俺だって昔と比べたら強くなっているし、負けるつもりはない」
「へー……じゃあ、どっちが強いか早速やろうよ」
「望むところだ!」
ゲームを始める用意ができ俺たちはそれぞれコントローラーを手に持つ。
ゲームを起動しキャラクターを選択する。
「私は長女!」
長女は全部のキャラクターの中で最もバランスの取れたキャラクターだ。おまけにルックスもよく美少女なので人気も高い。
昔から彩音がずっと使っていたキャラクターだ。
「俺は三女だな」
三女はいわゆるパワー系のキャラクターだ。筋肉隆々で姉妹達の中で最も身長が高く体が大きい。ゴリラ女なんてあだ名がつくほどだ。
「この勝負もらったね」
もう勝った気である彩音。たしかに三女は動きが遅く扱いが難しいキャラクターということで有名だ。初心者には絶対に勧めないキャラクターだし使っている人も多くない。ほとんどの人はネタで使っていると言うイメージだ。
だが、俺はこのキャラクターを選んだからには自信があるからだ。
「笑っていられるのも今のうちだからな。あとで泣くことになっても知らないぞ」
「やれるもんならやってみてよ」
『レディー、ファイト!!』
ゲームがスタートする。だが、勝負はあっという間に終わる。
『パーフェクト!!』
画面に映るパーフェクトの文字。そして俺の選んだキャラクターがほとんどダメージを受けることなく立っている。
「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」
そして部屋中に彩音の驚きと悔しそうな声が響き渡った。俺は満足げにコントローラーを置いたのだった。
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