第95話 ピンチはチャンスだ
「リューイチィィ!」
客席から茉莉の悲鳴が聞こえる。
心配かけて悪い、と思いながら。
分析する。
あの触手は俺を傷つける力があり。
触手に捕まるとこちらも奥義を出さないと脱出できず、放っておくとゆっくり切断の流れになる。
しかし、触手切断のために
で、そこから。
向こうにも、俺が攻撃奥義を出すと鉄身五身が途切れるという弱点を抱えていることに気づかれたらしい。
……うん。
結構マズいな。
振り返ってみると、嫌でもそれが理解できる。
けれど、まあ……
ピンチってチャンスなんだけどな。
俺はニッと笑うと、対阿比須の構え……右前の半身の構えを崩さず
「阿比須龍拳奥義!
奥義使用を高らかに叫んだ。
さあ、どう出る……?
俺は相手……怪人兵器を注視する。
ヤツは……
「I will not respond to such lies. You fool」
何か英語で言っている。
俺に理解させる気は無いようだ。
……でもまあ、予想はつくけどな。
大方
「そんな見え見えの引っ掛けには引っ掛からんぞ。馬鹿め」
……こんなところだろう。
まあ、俺もそんなことは考えていないから、それで馬鹿認定されるのは心外ではあるのだけど。
俺が狙ったのは……
俺は間合いを詰めた。
滑るように。
最初から最高速度で。
阿比須龍拳奥義・
……俺が最初から奥義の使用を宣言した。
普通にこれを嘘と見るなら
触手を誘っているわけだから
俺が何か、触手に絡めとられても大丈夫な手。
いや、むしろそれを必要とする逆転の手段を思いついた。
そう見られるよな。
こいつ、頭は悪くないはずだし。
……だったら
アイツは、触手の先端を切り離し、投げつけるように俺に飛ばしてきた。
俺が切断した触手は元に戻っていた。
……再生能力もあるのか。
そんなことを考えつつ
俺は避けない。
飛んできた触手の先端は俺の肩や胸に張り付き……
爆発。
……生物兵器で爆発するとか。
そういう生き物、居るんかね?
茉莉なら分かるんだろうなぁ……
まあ、効かないんだけど。
鉄身五身は切れてないからね。
「鉄身五身、continuing」
アイツの言葉には、嘲りが感じられた。
ほらやっぱり、みたいな感じか。
……ありがたいね。
そのまま俺は蹴りの間合いに踏み込み、蹴りを出す。
いや、繰り出す挙動に入った。
突き刺さる前蹴り……蹴り込みだけど。
すかさず触手が襲ってくる。
おそらくここが攻めどころだ、と思ったのか。
触手は俺の両腕に巻き付いて来た。
蹴り足に来なかったのは、攻撃系奥義が発動中の可能性を考慮して、だろうな。
触手の方もダメージが来る可能性あるし。
俺は巻き付いた箇所に闘気を集中させて防御をする。
触手の棘は、食い込みはするが俺を切り裂きはしない。
「What's happening?」
全く切れないことに困惑している。
それを感じ取った俺は
「闘気、コンセントレーション!」
蹴りを放ちながら。
日本語と英語を混ぜた言い方。
俺の言葉は伝わらないと意味がない。
相手は……
「Don't let it run!」
俺の蹴りを全力で避ける態勢に入る。
本命はこっちだと思ったのかね。
触手の拘束が緩んだ。
抜け出せる……
俺は触手の拘束を抜け、蹴りを繰り出すはずだった足を踏み込みに変え。
さらに間合いを詰めて
近接し、ガシッと怪人兵器の頭を掴んだ。
そして……
頭突きを繰り出し、叩き込んだんだ。
阿比須龍拳奥義・脳髄粉砕の乗った頭突きを。
……本命はこっちだ!
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