第96話 これで妹は大丈夫
阿比須龍拳奥義・脳髄粉砕。
身体の
……技の性質上、鉄身五身が有効か怪しい技だ。
鉄身五身は外傷を防ぎ、痛みを軽減する技だからね。
外では無く、内側に働きかけるこの奥義に鉄身五身が効くか疑問。
つまり、頭に当てられれば勝ちを得られる可能性があるんだ。
そして実際、鉄身五身はこの奥義に効果が無かった。
前にタクマに使用した「究極奥義・心臓爆裂」と同様に。
……何故なら、頭突きを喰らった怪人兵器は倒れ伏して、そのまま起き上がってこなかったから。
怪人兵器は俺の頭突きを喰らって、糸が切れた人形のようにうつ伏せで倒れ伏し。
そのまま数分が経過する。
その間、俺は残心を示し、構えて見守る。
真に勝ちを確信するまで、気を抜かないのが武芸者の在り方だから。
油断せずに見守って。
……内心、起きて来ないでくれと思っていた。
するとアナウンスが鳴った。
『The winner is Ryuichi Kokusho!』
……自分の名前は聞き取れる。
だから、俺は
「リューイチおめでとうー!」
「リューイチ! 流石ですぞーっ!」
観客からの祝福の声を聞きつつ。
……自分の勝利を確信した。
スタッフが向こうの出入り口から複数人ワラワラ出て来て。
倒れた怪人兵器を回収していく。
担架に乗せて、運び出して行った。
俺の方にも何人か来て、俺の左手の負傷に手当てを加えてくれた。
簡単な消毒をした後、グルグル俺の左手に包帯が巻かれる。
「Please receive full-fledged treatment at the medical room」
そして包帯を巻き終わった後、スタッフの人に英語で何か言われた。
えっと、分からんて。
「ジャパニーズプリーズ」
そうカタコト英語でお願いすると
「あなた、自発的、医者、行って、go」
……ああ、ちゃんと病院行けと言ったのかな。
その後、俺は血液を献血レベル……約400ミリリットル抜くために、控室に戻った。
控室にはそれ用の機械が運び込まれていて。
俺は簡易なつくりのベッドに横になる。
……ふぅ。
終わった。
決して楽な戦いでは無かったから。
こういう、リラックスできる環境はとても嬉しかった。
そのままスタッフが採血の準備をしているのを横目で見つつ、俺は今後を考えた。
後は日本に帰って、妹に話を切り出すだけだ。
それで、妹の未来を閉ざしかねない「死なないだけで重大極まりない」病が治る。
本当に……良かった……
「リューイチ、お疲れ様」
そんなとき。
茉莉が控室に入って来たんだ。
……彼女の方もニコニコと微笑んでいた。
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