第57話 メデューサヘッド

 メデューサヘッドっていう宇宙生物がいる。

 生物としての系統は、ウニが1番近いらしい。


 見た目は直径1メートルくらいの大きさのウニ。

 ただし、ウニの特徴であるあのトゲトゲが、イソギンチャクの触手のようなものになっている。

 そういうものを想像してもらうと分かりやすい。


 色は緑色の、水棲生物

 そして食性としては草食。

 で。


 ……植物ならなんでも、そしていくらでも食べてしまう。


 原産はどこだったかな。

 詳しくは覚えていないんだけど。


 原産の星では天敵が存在し、そいつがこいつの数を調整してくれているんだけど。

 天敵がもし存在しない状況下なら、多分その惑星ホシの水中植物を喰い尽くすだろうと言われている。


 そういう生き物で。

 こいつらはもっぱら……


「惑星M-818に放したメデューサヘッドを数匹捕獲し、胃の内容物を調べたい、か」


 惑星改造の過程で、現地の水中植物を絶滅させるのによく投入されるんだ。

 悪食で、植物なら何でも食べるから。


 で、頃合いをみてサンプルを捕獲して、餌不足が伺われる結果になってきたら。


 こいつらの天敵であるペルセウスという宇宙生物を大量投入。

 メデューサヘッドを根絶するんだよ。


 で、まっさらな海に、昆布やらワカメやら。

 その他水質を良くする水中植物類。


 そういうのを海に植えて、心置きなく育てるんだ。

 そうやって、人類に都合のいい地球そっくりの環境に整えていく。


「メデューサヘッド、捕獲場所は散らさなきゃだめだよ」


「分かってる」


 相棒の言葉に、そう返す。


 俺たちは惑星M-818に来ていた。

 大きな海のある惑星で、重力もちょうどいい。


 陸地と海のバランスも地球に極めて近く、農業や漁業をやるには最適の惑星ホシ


 なので、なるべく地球に近い環境にしたいらしいんだわ。

 で、徹底的にやる気になって、この仕事。


 メデューサヘッドを数千頭放流したのが数年前。

 順当にいけば、この惑星の海から水中植物が無くなってるはずなんだけど。


 ……どうなんだろうね?




「メデューサヘッド、数がそんなにいない印象ね」


 相棒と一緒に、5頭目のメデューサヘッドを海から引き揚げつつ。

 残り5頭。


 与えられた仕事は、メデューサヘッドのサンプルを、10頭程度採取してきて。

 用があるのは胃なので、なるべく原型を留めたままで。


 こんな感じだ。


 要望はサンプル採取だから、採取する場所は散らさないと。

 そうでないと、特定個所のデータになってしまうからな。


 俺たちは採取のために、宇宙船から引っ張り出してきた、海洋小型船の上で。

 捕獲したメデューサヘッドを確認した。


 直径1メートルくらいの、緑色の触手生物。

 見た目はあまり良くない。


 生物としてはウニに近いらしいけど。

 中身だけは美味かったりするんだろうか?


 それを俺と一緒に確認しつつ。

 相棒は


「……今日のところはこれぐらいにしとこうか」


 5頭捕まえるのに、8時間くらい掛かった。

 確かに少ないのかもしれない。

 見つけることでだいぶかかったし。


 ……そういえば。

 海に植物、見なかった気がするし。

 既に餌不足の環境なのかもな。


 つまり、数が減り始めているってことなのか。

 それで、見つかりにくいのかね?


 ……残りはまあ、明日で良いか。


 彼女の言う通り。


 ……俺たちは、今日の業務を終了することにし。

 宇宙船を着陸させてある陸地に向かって小型船を走らせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る