第50話 宇宙の守護者

「ファッキンジャップと言われたら! 発砲するのが日本人の務め!」


 相棒が腰のレイガンを抜いて、その銃口を白人男性に向けようとしたので、俺は慌てて押し止めた。


「待て、茉莉!」


 俺の呼びかけに、ハッとした相棒がレイガンを腰のホルスターに戻す。

 気持ちは分かるけどさ。


 俺だって、古典映画のあのシーンみたく、あいつに発砲したい気持ちでいっぱいだ。

 けど、見ろ。


 ……あの白人のオッサン、俺たちの様子を眼鏡型携帯端末で撮影してやがる。

 一見黒いサングラスに見えるけど、あれは携帯端末だ。

 フレームの部分に、電気の輝きが見えるからな。


 あとで自分の暴言部分を削除修正して、まるで俺たちが一方的に襲い掛かって来たみたいな鬼畜編集をして、世界中に動画配信するつもりだな。

 クズが。


 そこで俺は、あの白人の正体について考える。


 ……考えられるのは


 あれかな。

 宇宙の厄介者。

 宇宙規模の環境保護のゴロツキ。


 宇宙の守護者スペースガーディアンかな?


 前身は、地球の環境保護団体マリンハウンドっていう、ろくでなしのクズどもだったんだが。

 そいつら、そのときから日本に絡んでて。


 当時の日本人はムカムカしていたらしい。


 そして時が過ぎ。

 今は宇宙の守護者スペースガーディアンと名を変え、未だに日本人に嫌がらせをしてくる。


 昔は日本は、過去の大戦争のせいでまともな軍隊とその運用法を持てなかった時代があって。

 そのとき世界的に


 日本人は殴りつけても殴り返してこない。


 そう思われていたらしい。

 今はそんなこと無いんだが。


 で、当時のこいつらの前身組織はそれをいいことに

 日本人の海洋での行動に嫌がらせをすることで自己顕示欲を満たしていたようだ。

 まぁ、金も動いていたのかもしれないが。


 で、今。


 昔ほど軍事的に舐められなくなったけど、日本は法を厳格に守る基本方針があるので。

 海外だと迷わず発砲、って状況でも、ギリギリまで「それが本当に適当なのか?」と考えようとしてしまうんだよな。


 そのせいで、それが隙になるので。


 そこを狙ってこいつらはパフォーマンスするわけだ。

 俺たちを悪役に仕立て上げて、活躍している様を主張するため。


 正直、ウザイ。


 そんなことを考えていると。

 あの白人


「You, son of a bitch!」


 なんかまたほざいてきた。

 指差しから考えて、どうも俺に向かって言ってきてるようで。


 今度は意味が分からなかった。


 だけど


 それを聞いた相棒の表情が消えててさ

 こめかみがピクピク動いてて


 次の瞬間、彼女はこう言ったんだ。


「黙れこの○○! この■■!」


 ……日本語で。

 放送されると不味いような酷い言葉の暴力を発した。


 ……彼女がここまで怒るってことは、相当酷いことを言われたんだろうな。俺。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る