第14話 残った右がやけに熱いぜ!
まずい!
そこからの俺の行動は速かった。
阿比須龍拳奥義・
消化液が胴体に回ってくる前に。
俺は左腕を肘のところで切断した。
この奥義は闘気で痛覚を麻痺させ、出血を抑える。
標的の手足を寝てる間に切除して、生き地獄を味わわせるための奥義だから。
俺の左腕は肘から先が切り離され、地面に転がる。
同時に。
俺の左腕はグズグズに肉が溶けて、人間の皮膚で作られた手袋のようなものになってしまった。
さらば、俺の左手。
……しかし参ったな。
2カ月くらい、義手暮らしか。
宇宙船の中に、緊急用義手ってあったっけ?
……阿比須龍拳を初代様が創った時代。
こういうのは永久障害と呼ばれたようだけど。
今は違う。
人体欠損でもお金があれば、2カ月くらいで治るんだ。
部分クローンで人体の部品を作れてしまうから。
その作成に掛かる時間が……約2カ月。
あとは金の問題だけど、この会社で狩猟課の実働部隊に配属された時点で、人体欠損保険に強制的に入らされるから、問題ない。
保険金が降りるから問題なく治せる。
だから俺に、左腕を無くした悲壮感は全くなかった。
残った右と両足で、こいつを無力化する……
口吻を切断されたハクタクは、もう獲物をそれで突き刺して消化液を送り込むことが出来なくなったので。
鋭さも長さもない口吻の残りで、なんとか鳥羽を突こうとしている。
まずは鳥羽を逃がさないと……!
相沢さんは「生け捕りがベスト」って言った。
逆に言えば、死にさえしなければ、上々だってことだろ?
ぶっちゃけ、現状欠損部位無しの完ピンをお客さんにお届けするのは正直厳しい状況だ。
ある程度の部位破壊は目を瞑っていただくしか……!
「阿比須龍拳奥義!
俺は鳥羽を拘束しているハクタクの角2本のうち片方を、上方向へと蹴り上げる。
その威力は2トントラックのぶちかましと同等。
昆虫は強い筋力を持っているものだけど、2トントラックのブチかましには耐えられず。
根元の組織を破壊して、まともに力を込められなくなる。
そのせいで、鳥羽はホールドが解け、逃げ出すことが可能になった。
身を捩り、鳥羽は死の拘束から生還した。
そして青い顔で転がり込むように、俺の背中へと隠れる。
「あ、ありがとうリューイチ!」
そんな鳥羽の俺への感謝の声に対し、俺は全く反応せずに。
「昆虫って気門で呼吸してるんだっけ?」
それを訊く。
鳥羽はそれに対し
「あ、う、うん。そうよ」
認められた。
ならば
「俺がアイツを行動不能にする! 鳥羽はアイツに毒ガスを吸わせて動きを封じてくれ!」
そう言い残し。
俺は地を蹴った。
ハクタクの脚は6対。
その片方3つを全部失えば動けなくなる!
そして現状、あいつは口吻を破壊され、角の1本も潰された。
だからこいつは今、武器が無い!
だったら……!
案の定、ハクタクは逃げに転じようとしていた。
勝ち目がない戦いに、踏みとどまっている理由は無いものな。
……だけどさ。
そういう姿勢でいることを、他に知られちゃ終わりだよッ!
その後はあっさりだった。
逃げに転じてしまったハクタクの、脚の片方を
そして行動不能に陥ったハクタクに、鳥羽がその気門の傍にピンを抜いた手榴弾型ガス爆弾を投げ込んで毒ガスを吸わせた。
毒ガスが効き、麻痺して動けなくなるハクタク。
……捕獲完了!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます