第5話

 大晦日のとても大きな歌番組で歌わなかったとかで、彼女の評価が数秒で地に落ちた。年越しまで、あと数分。大炎上しているSNS。


 最大の好機だと思った。さすがの彼女も、ぼろぼろだろう。はやく来い。化物。殺してやる。殺してくれ。記憶を寄越せ。なにも要らない。相反する期待と闘争感が、自分を支配していく。


 彼女が捌けてくる。


 マネージャーすら、彼女に何か言っている。こわいこわい。勝手に持ち上げておいて、裏切られたら勝手に罵る。


 とりあえず、彼女を近場のビルの屋上まで連れていく。殺し合いをするにも、多少場所は選ぶ。


 屋上。星が見える。年はさっき越した。


「悪くないな」


 いい夜だ。


 彼女。キス待ちをせず、しょぼくれて座っている。


「化物が出たら、走って逃げてね」


 邪魔だから。





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