第69話 共和国を目指して
「おい。アリアドが
早朝。
共和国領ビバルデでは昨日到着したばかりのボルドが
「アリアドが……?」
思わず
するとまだ早朝にもかかわらず、通りは物々しい
この街の共和国軍兵士たちが急ぎ足で広場に集合し始めていた。
「昨日ここからアリアドに向けて出発した隊商の連中が今朝とんぼ返りで戻ってきたんだ。話を聞いてきたんだが、国境の
「え?
「ああ。アリアドを落とされた公国軍が共和国軍に要請して共同で
そう言うとベラはボルドの顔を
アリアドが
王国軍に占領されてしまえば、2人はその身柄を捕らえられる危険性がある。
事態が大きく悪化しつつあることにボルドは拳を握りしめた。
(どうすれば……)
そこにソニアが駆けつけてきた。
「共和国軍の奴らに話を聞いてきた。やはり国境の
18歳でブリジットに拾われダニアの一員となってから、彼はずっと知識習得のために勉強を続けてきた。
ブリジットの情夫としてふさわしくあるべくという思いと、体の強くない彼が一族に貢献するには知識を得てそれを活用することだとの考えからだ。
ゆえに彼の頭の中には様々な知識が詰まっている。
ボルドはすぐさま
それは共和国の全域と周辺諸国の一部を記した地図だ。
ベラとソニアが上からそれを
「以前に聞いたことがあります。共和国と公国の間の国境越えに使われる山道があると。高さはそれほどでもなく、迷いさえしなければここを通り抜けて公国側へ出られるはずです」
そう言うボルドの指が
そこは目的のアリアドから南に位置する平原だった。
「本来であればエミルの残した足跡を
「だが、そんな時間はないな。アリアドにプリシラたちがいるとしたら事態は一刻を争う。どうする? アタシらはボルドの勘に
ベラからそう水を向けられたソニアは
「すでにブリジットが共和国の首都に伝令を飛ばし、状況を伝えている。共和国側の
「決まりだな」
2人の言葉にボルドは感謝の表情を浮かべて
ボルドは必ず子供たちを連れ帰るという決意を胸に、宿を後にするのだった。
☆☆☆☆☆☆
「彼らが来たよ……」
「予想通りだね……」
公国と共和国の国境に
生い茂る木々の間に若い男が2人、潜んでいる。
深い緑の衣服に身を包み、その白い髪を緑色の布で
ヒバリとキツツキ。
チェルシー配下のオニユリが抱える私兵たちだ。
彼らの目には今、この山の
ダニアの女王ブリジットの子女であるプリシラとエミルの乗る馬車だ。
オニユリの命令でエミルを追っていた彼らは、プリシラ一行の進行方向を見極め、先回りをしていたのだ。
「国境の
プリシラ一行を追跡しているのは彼らだけではない。
オニユリの兄であるシジマと、
ヒバリとキツツキは彼らに知られぬよう、彼らを出し抜いてエミルを奪い去らねばならない。
そのためにはシジマたちより先んじている必要がある。
後ろから追いかけていたのでは遅れを取ってしまうのだ。
そしてヒバリとキツツキはエミルを奪い去る時期と状況をあらかじめ決めていた。
今は息を潜め、その好機が訪れるのをじっと待つのみだった。
すべてはオニユリのためだ。
「姉上様のために必ず成し遂げるよ。キツツキ」
「姉上様は
「
「そうだね。姉上様のためになることをしている。そのこと自体が僕たちとってのご
☆☆☆☆☆☆
「ここまでありがとう。村長によろしく」
そう言ってジュードは御者と握手を交わすと、ここまで自分たちを運んでくれた馬車がセグ村へと引き返していくのを見送った。
ここから先は山道であり馬車が通るには
プリシラとエミル、ジャスティーナを振り返ると、ジュードは
「さて、共和国まであと一息だ。この山を越えればいよいよビバルデも近いぞ」
ジュードのその言葉にホッと
「一日では越えられないでしょう?」
「ああ。この時間からだと途中で夜になる。いくつか山小屋があるからそこで一晩過ごすようだな。順調にいけば明日の昼くらいには山を抜けられるだろう」
「食糧はたっぷりあるから今夜はちょっといい食事ができそうね」
そう言って笑い合うプリシラとジュードをよそに、ジャスティーナは荷物を背負って早々に歩き出した。
「ほら。お
そんな彼女を追って3人は山道に足を踏み出すのだった。
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