第20話 母の決断
夜も
共和国の国境沿いに位置する商業都市ビバルデ。
その庁舎の一室を借りているのは、今朝この街を訪れたばかりのダニアの女王ブリジットだ。
部屋には彼女の他に側近のベラとソニア、そして数名の
護衛の兵たちは部屋の前で待機している。
元々視察でこの街に一泊し、翌日に帰る予定で取っていた部屋だが、この部屋は今、昼間にこの街で
机の上にはこれまでに入手した情報を
買い物の途中でこっそり親元を抜け出して、護衛の兵も振り切って消えたプリシラとエミル。
それだけならば幼い頃からお
ここまでに得た情報では、2人は街で開催されていた
そして
それを不審に感じたブリジットは
ベラとソニアという
「まさか
ブリジットは
その非合法なことをしている集団に、プリシラとエミルは
若く美しい2人は
「今頃はエミルと共に
そう言うとブリジットは机の上の紙に目を落とす。
そこには
ブリジットは立ち上がり、壁に張られているこの周辺地域の地図を見た。
「公国は
そう言うとブリジットは指で地図上をなぞり、国境線を越えてここから公国内の最も近い位置にある街で指を止めた。
「公国領……アリアドだ」
それを聞いたベラは即座に立ち上がる。
「アタシとソニアで夜通し馬を走らせれば連中に追いつける。プリシラとエミルをすぐに連れて戻ってやるぜ」
室内には
だがブリジットはそんな旧友の言葉に感謝しつつ言った。
「待てベラ。おまえの気持ちはありがたいが、まだアリアドに連中が向かっていると決まったわけじゃない。ただの推測だ。外れかもしれん先に
「けどブリジット。ここでこうしていても2人は帰って来ないぞ」
ベラの言葉にブリジットは
「ああ。だから……ボルドにここに来てもらおうと思う。体調が優れないところだが、我が子の危機だからな」
ボルドは元々、今回の視察に同行する予定だったが、3日前から
子どもたちがいなくなったことについてはすでにダニアへ
早馬を飛ばせばダニアまでは1日ほどの距離なので、人を向かわせてボルドをすぐに連れてくれば、
当然、数日の時間を
それほどあの
「アタシもここに……」
そう言いかけてブリジットは口をつぐむ。
彼女には女王としての立場があり、共和国からの依頼をこなす義務がある。
明日にはここを
「プリシラとエミルのことはアタシとベラに任せろ」
そう言ったのはソニアだ。
彼女はいつもの
「ソニア……」
「2人をちゃんと連れ帰るまで戻らない。ブリジットの気持ちになってプリシラとエミルを探す。だからブリジットは自分の役目に徹してくれ」
そのソニアの言葉にブリジットは心がじわりと温まるのを感じた。
ぶっきらぼうな物言いの中にソニアの優しさが詰まっているのだ。
プリシラもエミルも幼子だった頃からソニアには
2人はソニアの優しさに気付いていたのだろう。
そしてきっとソニアも我が子を探すような気持ちで2人を探してくれるだろう。
そんなソニアの
「……分かった。2人とも。頼む」
そう言うとブリジットは両手を2人に差し出す。
ベラとソニアは幼き頃からの友の左右の手をそれぞれ握り、その目を見つめて
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