第三章 『へんろう宿』
飯伏鱒二の『へんろう宿』を知ったのは自分の好きな俳優の話で出てきたからだ。
この話は『へんろう』つまり、四国のお遍路にある宿の話であり、そこの者は全員女で捨て子だ。
そして、彼ももらい子、つまりは養子で実の両親を知らない。
それを知った時、少年の心には深い傷が出来た。
どうしようもない孤独や怒りや悲しみ……
後年、彼はかなりの酒飲みになった。
自分のそうだが、自分の孤独を他者に語ることはとても勇気がいるし、相手に変な同情や悲しみを与えたくない。
その重圧から逃れるのに飲食物は実に有益である。
(まあ、もちろん、後遺症とか色々面倒なものはありますが)
幸い、私の両親は健在で毎日ボランティアで草むしりなどをしている。
だから、今は亡き俳優の気持ちは分からない。
でも、親にしろ友達にしろ『大切な人を失う』という悲しみがボディーブローのように徐々に効くとは想像しなかった。
仕事中や外にいるときに、不意に彼女を思い出す。
以前なら、スマートフォンなどを使い、馬鹿話が出来た。
今はいない。
この悲しみも辛さも、いつか、消えるのだろうか?
ネットの知り合いが同じように親友を失い、こんなアドバイスをしてくれた。
『消えることは無い。ただ、痛さに慣れるだけだ。でも、それでいいんだよ。その時に、心の中で手を合わせればいい』
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