第3話 『不器用な約束』
腹はえぐれ、手足はちぎれ、誰が見ても死は免れない。そんな状態。それでも――。
はは、と、乾いた笑いを浮かべた。
「……こんなになってもまだ、死ねないなんてな。ほんと、人類の技術はすごいよ」
いったい、いつの頃だろう。突如としてやってきた異界の侵略者。追い詰められた人類が最後の切り札として開発した不死身の生体兵器。それが、
その圧倒的な代謝能力は肉体に歳をとらせることはなく、一瞬にして肉体のすべてを原始還元されるレベルの傷を受けない限り、死なせはしない。現にいまもこれほどの重傷にもかかわらず
――ああ。まだ戦わなくてはならないのか。たったひとりで。
どれだけの年月、こうやって戦ってきただろう。共に戦った仲間たちは
「……そう言えば、別れるとき、泣きながら約束した女の子がいたっけ」
それももう、どれほど前のことだろう。
思い出せないぐらい遠い昔。
それでも、泣きながら訴えるその女の子の顔ははっきりと覚えている。
「約束する! あたしは、あなたを絶対にひとりにはしない! もう一度あなたと一緒に戦ってみせる!」
侵略者との戦いで足を失い、もう二度と戦えない体となりながら、泣きながらそう訴えてきた。
「……あの子、なんて言ったかなあ。ああ、そうだ。『
そうだ。あのときから自分は戦うことをやめられなくなった。だって、
だったら、自分はそのときがくるまで戦いつづけなくてはならない。たとえ、そんな日は永遠にやってこないのだとわかってはいても……。
傷ついてなお鋭敏な
見渡す限り、大地を埋め尽くす異界よりの侵略者の群れ。いままでに見たこともないほどの大軍。これでは、
「……はは。さすがにもう終わりみたいだな。ごめん、
静かに、自分の戦いの終わる時をまった。しかし――。
訪れたものは死の静寂ではなかった。
無数の機械音と砲声。
大地を駆け、空を飛ぶ戦闘兵器の轟音。
大地を駆ける戦車が、空を飛ぶ攻撃機が、高出力のビーム砲を放ち、異界よりの侵略者を駆逐していく。
「間にあってよかった。
「……あなたたちはいったい」
「覚えておいでですか? かつて、あなたとともに戦った
「覚えている……けど」
「わたしたちは、その
「なんだって⁉」
「
わたしたちは決してあなたをひとりにはしない。わたしたちが死に絶えても、わたしたちの子孫が必ずあなたの側にいる。さあ、行きましょう。異界の侵略者どもからこの世界を取り戻すために」
そう言って、人間の兵士は手を差し伸べた。
はは、と、
「……はは。そうか。
立ちあがった。
不死身の戦士はいま再び、立ちあがったのだ。約束の仲間たちと共に。
完
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