第28話 マジかぁ………
それから何事もなく魔法少女ロナに日焼け止めを返して貰い、三人をボーッと眺めていた時だった。
ドォォーーン!!
大きな破裂音とともに、浜辺の砂が舞い上がる。
何事かとその場にいた全員がそちらを見やると、そこには高笑いをする怪しげな男が立っていた。
「ワーッハッハッハ!恐れ戦け!愚民共ォ!」
そうして、着ていた黒のジャンパーの…アレ、紐みたいなやつを思いっきり引っこ抜いた。
この時、誰もが思った…こいつはヤバイと。
本来なら紐を引っこ抜いた事に絶望するだろうが、その男はその紐を空に投げた。すると男が着ていた黒いジャンパーが不気味なオーラを放ち、男を覆う。
「うぉおらぁ!」
男が気合いを入れたように叫ぶと、特撮のバイクの方によくいる敵のような姿になった。
それを見た人達は、悲鳴を上げて逃げるように走る。ここにいたらヤバイと思ったのだろう。
その判断は正しい。だって明らかに強そうだもん。
「彼方に願いを!」
その言葉が響くと逃げていた人達が眩い光の方を見て歓声を上げる。
魔法少女ロナは石の他に砂も操れた筈だ。ここはお手並み拝見と行こうかな。
そう思っていると、三人が帰ってきた。
「小田さん、あの人は?相馬さんも岸くんも知らないって言うんだけど。」
流した汗を腕で拭き取りながらJKが話しかけてきた。
「確実なことは、我々の味方ではないと言えることだろうな。私は静観しようと思っています。」
「えぇ?危なくない?」
「最悪、私と晴太の二人で切り抜ける。敬一は私達の切り札でもあるから奈々は敬一を連れて避難しといてくれ。」
「ぬ?それは…」
「敬一?」
「む…仕方ない。奈々行くぞ。」
「え?………分かった!」
将軍とJKは駐車場の方に向かった。
「セータ、動けるよな?」
「もちろん、タロウさんよりはね。」
「ならば良し。」
とは言ったものの、実際問題戦いたくはない。だってあの男どう見てもイカれた奴だよ。左手に逆手持ちナイフに連射性能の高い…なんかの銃を持っているが、矢鱈目ったら意味の無い射撃をしている。あれは目が悪いとかじゃなくて、楽しんでたり、今の自分に酔っている手合いの行動だね。
魔法少女ロナは浜辺の砂を巻き上げ、目眩ましにしたり、砂を凝固させ石と同等の扱いをしながら応戦しているが、苦しい表情をしている。
「タロウさん。行きますか?」
「うぅん、……そうだな。でも魔法少女はどうする?」
「協力するしかないんじゃないですか?ここは不戦同盟的な。」
「まぁ、ダメでも私達があの男を攻撃していけば、優先順位くらい弁えてくれるだろ。」
「そうですね。」
私と農家はブレスレットに手を伸ばす。
ー魔法少女ロナー
うぅこの男、近付こうとするとナイフを振り回してくるし、石を操っても正確な射撃で撃ち落としてくる。最初はただ、撃ってただけなのに……もしかして私の能力に目が慣れたのかしら?それだとかなりまずい。近くの魔法少女も来るのに時間がかかるらしいし、なんとか耐えないと。
そう思った時、後方からあの男に向けて鈍い光が向かう。
それに気付いた男は銃身で受けようとする。
「剪定!」
その言葉が響くと男が持っていた銃の先端がドサリと地面に落ちた。
「暴れるのは、それくらいで十分だろ?」
後ろを見ると先程の鈍い光、鎌を両手に持つ赤色のローブと、ゆったりと構えながら男に静止の言葉を告げる黒いローブ。
「あなた達!ニューワールド!」
それに、幹部が二人も!どうしよう………
「あぁ?ニューワールドだぁ?フハハハハ!
丁度良い!ニューワールドのトップは俺が貰う!」
え?あいつはニューワールドじゃない?いやもしかしたら謀反かも?
男が高笑いをしながら近付いてくると赤のローブが応戦するように両手の鎌を振るう。
それを見詰めていたら背後から肩を叩かれる。
「やぁ、魔法少女ロナ。ご機嫌いかがかな?」
「あなたは……」
「おっと、これは失礼。私はニューワールドNo.2の軍師タロウでございます。以後お見知りおきを。」
な、な、な、No.2!?ど、どうしよう!?絶対強いじゃない!この笑みも強者の余裕って感じがするわ!
「何の用?」
ここは焦らないようにしないと。
「これは酷い。せっかく助けてあげたと言うのに。」
軍師タロウはやれやれと言った態度を取る。
「くっ!…………それは助かった。でもあの男は何?あなた達ニューワールドの人じゃないの?」
「まさか!あのような野蛮人いる筈がございません!」
「どの面で言ってるのかしら……まぁ、いいわ。それで、条件は?」
「ほぅ、話が早くて助かります。今回は手を合わせてあの男を倒す。あの男はそちらに一任する。そして、終わった後何事も無かったようにお互い帰る。どうでしょうか?」
……いえ、前回の時も言われたけど命大事に。なら乗った方が良いわね。
「構わない。私はあの怪物と相性が悪いから期待させて貰うわ。」
「それは何より。……そういえば前のように戦わないのですか?」
前のように……?………っ!もしかして!
「社員寮の時の幹部、あなただったのね。」
「おや、やっとお気付きですか。」
くぁ!?その笑い方ムカつくぅ……
「あれは切り札ですから!そう易々と見せびらかしたりしないのですよ。」
切り札って言っても、どうやったか覚えてないんだよなぁ……どうやったんだろぉ?
でも、ノイちゃんが言うにはアメリカの魔法少女のイサドラさんと似た感じって言われたなぁ。何が条件なんだろう。
「フフフ、そうですか。
…………一つ聞いても?」
「何ですか?」
「気付いていますか?」
「……な、何にですか?」
軍師タロウの向いている方向を見たが、少しとぼける。
「あなたも気付いているでしょう?あの怪物男、あいつだけで良いんじゃね?…と。」
もう一度よく見ると、先程まで威勢の良い声を張り上げていた男のその声は鳴りを潜めたように聞こえなくなり、悲鳴混じりの情けない声が聞こえる。
あの幹部、名前は知らないけど強すぎじゃないかしら?私なら瞬殺の自信があるわね。
「……よく分かりましたね。もしかしてあなたも?」
「ふ、愚問ですね。」
この人…私と同じ匂いがするわ!?
「それと、聞いていましたか?」
「え!?何をですか?」
「あの怪物男、ここからが俺の本気だぁ!と息巻いたくせに結局押され…あ、負けましたね。」
「…………」
敵幹部との対話で戦闘が終わっちゃった!?
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