第29話 久しい会議!

「えぇ…これより、第六十九回ニューワールド日本支部の会議を始めます。

 まずはこの動画を見てほしい。」

 私が再生ボタンを押すと、昨日の怪人男と農家との戦闘シーンが映し出された。 

 …………………………………




「今見て貰った通り、我々ニューワールドと魔法少女の他、第三勢力らしき存在を確認した。今日はこの対象についての考察と対処について話し合いたいと思う。」

 従者が手を上げる。

「従者ユータ、どうぞ。」

「弱すぎます。この程度なら危機感を持つ必要はないのでは?」

 お前から見たらそうだろうが、一般人が遭遇したらイッパツアウトなのは分かるだろ………

「……これから更に強くなった怪人がドンドン増える可能性も考えられる。だからこその会議だ。」

 従者はまぁ、それなら……と小さく呟いた。


「はい。」

「平民ヨシ、どうぞ。」

「俺はあのジャンパーの絡繰が気になります。何かそれらしきものは残ってなかったのですか?」

「農家セータ、発言を。」

「戦い終わった後の怪人は人の姿に戻ってました。そこで、件のその黒いジャンパーを掴んだのですが、塵となって消えてしまいました。おそらく、証拠が残らないようにするためでしょう。」

「なるほど、ありがとうございます。」

 すると平民はブツブツと何かを言い始めた。

 ………Dの影響かな?



 ヌルッとした動きで医者が手を上げる。

「医者カズヤ、どうぞ。」

「んぁ~、セータに聞きたいんだけど、怪人から人に戻った後のその男の目立った外傷は?」

「農家セータ、発言を。」

「……ありませんでした。砂や汗で全体的に汚れてはいましたが、外傷は特に見当たりませんでした。」

「へぇ、そうか。ありがとよ。」





 とりあえず、質問時間は終わりかな。

「では、これから考察に入ります。」

 私の発言を聞いて、まず口を開いたのは平民だった。

「とにかく未知ということが何よりの不穏要素です。次に遭遇した場合は無力化し研究施設に送りましょう。そこで詳しく調べるのです。」

 平民が積極的になったのは素直に喜ばしいが、少しマッドの片鱗が見えていることが不安だ。

 次にJKが平民に顔を向ける。

「でも、ちょっと危険じゃない?自分達から行くにもどこいるか分かんないし、ホネオリゾンになっちゃうんじゃない?だからそこまでガツガツいかなくても良い気がするなぁ。」

 骨折り損のイントネーションは気になるが、一理ある。

 それに従者が賛成する。

「確かに、件の怪人が弱すぎるため興味が湧きませんし、我々にもやるべき事があります。受動的でいいかと。」

「それだと日和見になるのではないかしら?接触方法は思い付きませんが、後回しはいけない気がします。」

 貴族が少しムッとした表情で従者を見る。

「つっても、対処は魔法少女達がしてくれんじゃないの?ニュースでも大々的に報道してるし、日本はニューワールドよりもこちらを優先すべきって意見も見たしな。」

 医者が欠伸を噛み殺しながら呟く。

「僕もそう思います。この先は分かりませんが、あの怪人と同程度の力なら魔法少女が二人もいれば簡単に片付くでしょうから。」

 農家が淡々と答えた。

「私も、態々皆が怪我をしてまでする必要はない気がするわねぇ。」 

 板前が医者の方をチラリと見ると、医者が軽く頭を下げていた。

 板前は医者の負担をなるべく減らしたいのだろう。

「………………」

 有能は何も言わずに頭を下げる。

 特にないらしい。

「それでは将軍、決定を。」

「ウム。」

 うっうん!と威厳を出すように咳払いをする。

「我々ニューワールド日本支部は、怪人及びその仲間に積極的に関わることはない。攻撃を受けない限り、戦闘は許可しない。怪人の事は魔法少女に任せる。

 この方針で行こう。」

「「「「「「「「は。」」」」」」」」


「それと、貴族。」

「何でしょうか?」

「バイトで雇った魔法少女サクラから逐一、怪人について聞けるだけ聞いてくれ。怪人についてなら一般人として質問しても怪しまれないだろう。」

「承知しました。」

 

 今回の会議は問題なく終わったな。……ていうか前回と前々回の空気が重すぎただけか!

 …………思い出したら辛れぇ……………

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