第27話 こんな暑かったっけ!?

 体感バチクソ長かった夏休み期間もあと少し。ということで、ニューワールドで大々的な長期休みを実施した。二つのグループに分けて一週間ずつ休みをとるのだ。…因みに、研究施設では休みよりも金銭の方が喜ばれた。平民が目の下に黒いクマを発生させながらもD、他の研究員達と万歳三唱をしていた。

 連れていくの早かったかなぁ?悪い影響を受けてなきゃ良いけど………。




 一週間、いつもより多忙な日々を過ごした私は、一週間の休みを満喫したCとHに仕事を丸投げしてきた。

 CとHだけでなく他の戦闘員達も上機嫌で働いてくれている。思い付きで実施してみたけどこれからも定期的にやってみようかな。








 私達(軍師タロウ、将軍ケイイチ、農家セータ、JKナナ)幹部四人で、石川県のとある浜辺に来ていた。

 将軍がどうしても夏の思い出にと言った為、身内感覚の農家を誘って三人で行こうとしたのだが、JKが私もと声を上げたのだ。

 まぁ、来るのは別に良いんだが、その…なんだ、私も将軍も農家も女性と出掛けるとは縁遠い毎日を送っていた為、ビーチマットにビーチパラソル(どっちもJKの私物)の中で、少しそわそわしながら成人男性三人が体育座りで海を眺めていた。

 余計なことは考えないように………


「待ったぁぁー?

 ………プッ!ッハハハハ!三人で何してんのさ?ツボッちゃうじゃん!ックハ!」


 そんな笑うこと無いだろ……

 そう心の中で思う三人だった。


「ほら、三人とも遊ぼうよ!」

「フム、良いだろう。ビーチバレーで誰が一番か分からせてやろう………」

 将軍ノリノリやわ。

「お、将ぐ……あぁ、そういえば三人はそれぞれ名前知ってるみたいだけど、私知らなかった!

 私は石倉奈々。さぁ三人も教えて!」

 あぁ、確かに。私と将軍は一方的に知っているが、基本的に下の名前ぐらいしか知らないからね。

 思考していると、まずはとばかりにすっくと立ち上がった将軍。

「そうだったな!将軍改め、相馬敬一だ。」

「オッケー!相馬さんね、よろ~。」

 控え目に片手を顔の横に上げながら農家が答える。

「岸晴太だよ。……なんか不思議な気分だな。今更自己紹介なんて。」

「確かに!よく顔会わすのにね!

 …うーん、なんか岸さんも岸くんもピント来ないからキッシン?………やっぱ、言いづらいから岸くんにするね?」

「あ、うん。好きにして良いよ。」

 農家……女子のノリに付いていけず、目が半分死んでいる。

「じゃあ最後だな。軍師改め、小田太郎だ。」

「ブフゥ!語呂良!もぉーまた笑わせな、ブハ!」

「いや、思い出して笑ってるし……」

 最近の女子高生(奈々は中退)はこんなに明るいのか?それともこの子だけ?

「……ハハ。はぁー笑った!それじゃあ行きましょう!」

 JKが丁度良く空いた場所を指差しながらビーチボールを抱えて言う。

 他二人がついていく中、私だけ座ったままな事を不思議に思ったのかJKが尋ねてきた。

「小田さんは来ないんですか?」

「いや、私はキツいかな。運動してないこの身体にはね。」

「えぇー遊びましょうよー。」

「な、奈々。太郎はこういう時は変にごねない方がいい。後からどうせ合流するから。」

 将軍、今ちょっと意識したな?

「そうですね。」

「むぅ、ならしょうがないなぁ。」

 そう言うと、三人は燦々と照りつく太陽の下でビーチバレーを始めた。

  

 ……いつもなら頃合いを見て混ざるのだが、将軍と農家に見透かされた状態で、JKの前に姿を見せるのがとても恥ずかしいため、混ざるのは辞めておこう。

 ……だが、砂の城を作れる程器用でもないし、なんとなく虚しくなりそうな為どうしようか……



「あの…すみません。」

「?…はい、なんで………!?!?!?」

「ど、どうしました?」

「い、いえ、な、なんでも!?ないですわよ!?」

 ちょっと、久し振りじゃないの、魔法少女ロナちゃん。……………いやマジで、何でいるのかなぁ。

 君、富山の学生じゃん。今年受験じゃん………


「アハハ、何ですかそれ?」

「えっと、それで何用で?」

「あ、すみません。実は日焼け止めを持ってないかなって。忘れちゃって。」

「何で私に?」

「いえ、お連れの方が丁度今遊んでるじゃないですか。遠目に一緒にいるのが見えたのでもしかしたら持ってないかなって。」

 なるほど。JKを見て持っているのかと思ったわけだ。そうでなきゃ私に話しかけることなど無いだろう。

「あぁ良いですよ。……どうぞ。」

 JKが皆も使っていーよぉ!と置いた、でかめの日焼け止めを渡す。

「わぁ、ありがとうございます。」

「……そうだ、あなたはどうしてここに来たんですか?これも何かの縁ですし。」

 これくらいの情報は貰っておきたい。

「そうですね。この近くに私のお祖母ちゃんの家があって友達を誘って泊まりに来たんです。」

 なるほど、長期休暇の時期などは魔法少女ロナの居所を視野に入れておくように後で伝えておくか。

「そうなんですねぇ。」

「そちらは、観光ですか?」

「え?えぇ、まぁ。」

「フフフ、羨ましいです。ダブルデートなんて。それではお互い楽しみましょうね!」

 そう言うと、後で返しに来ますと告げた魔法少女ロナが走っていった。

 …………………ワット?

 だぶるでーと?

 フム……将軍は黒のブーメラン水着、農家は高校の時の学校水着、JKはフリルのついた水玉水着。

 そして、私は太股まで隠れている白のジャンパー。それに加え正座で座っていた為、ジャンパーの下の布が一切見えない。……見た目のせい?

 ……………いや、まさか!

 私はゆっくりと首元のチョーカーを触る。

 ……咲子ちゃんのままやんけ!

 私は前屈みになり、ビーチマットを拳で叩く。

 このチョーカー、同じチョーカーを着けている人には効かない為、何も言われなかったのだろう…

 まぁ、もうめんどいからこのままでいいか。

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