第22話 フラグ立つの早ぇよ!
プリザブック他、変身アイテムと将軍の力を込めた何かよく分かんないやつを持って、Dは研究室に帰っていった。
私もさっさと仕事に戻ろう。そろそろ魔法少女イサドラが帰国し、BとHが戻ってくるし、プリザブックの調整が終わるまでは絶対に表にでないでおこう。
「今日は相談に乗っていただきありがとうございました。」
「いやいや、そんな。」
今日は戦士から業務についての報告とこれからの方針について話し合った所だ。
前に将軍の力の解放をする要因になった他社については一段落したようで安心した。
「それにしてもここの喫茶店、落ち着いた雰囲気で良いですね。よく来るんですか?」
「まぁ、太郎くんと敬一くんに拾って貰う前に勤めていた会社時代からの常連ですね。」
「あぁ…懐かしいですね。二人で会社を立ち上げるのが心配で賢さんをスカウトしましたねぇ。」
私があの時を思い出しながら呟く。
「ハハハ、あの時は考え無しに退社して一年程、ネットに浸かってましたねぇ。二人が声をかけてくれたお陰で今の私がいます。改めてお礼を。」
「そんな!たまたまですよ。それに、ネットの勧誘なんて怪しい物に来てくれて、こちらとしては感謝しかありませんよ。来てくれたのは賢さんだけでしたし。」
「フフ、そりゃそうだよ。基本は釣り認定だし、私も嘘だと思ってたからね。だからこそ、その話が本当だと分かった時に私が変わるターニングポイントはここだと確信したよ。」
「そう思っていただいて嬉しいです。いつか退社した理由も聞かせて貰いたいですね。」
賢さんがコーヒーを口に運ぶ。
「ハハ、まぁ追々ね。」
賢さんが曖昧な返事をする。
出会った時から、前の会社を退社した理由だけは頑なに話してくれない。まぁ、無理に聞かない方が良いだろうから聞かないけどね。
「でも、賢さんが協力してくれて助かりました。二人だけだったら何から着手すれば良いか分からないで、右往左往していたでしょうから。」
「フフ、確かに。二人は最初、本当に何も知らなかったもんね。二年前だっけ?あれでよく会社を立ち上げようと思ったね?」
「お恥ずかしい……」
私も将軍も大学中退したからねぇ……
「それと、その頃から君たち二人の活動が変わったよね?何かあったの?」
ちょっと込み入った話になりそうなため周りを確認しながら小声で話す。
「いやぁ…まぁ…魔法少女が現れ始めたので。」
「本当に?二人が最初ニューワールドとして活動していた時は結構犯罪行為をしていたじゃないか。その時のニューワールドの人達も従者以外はいないよね?
この前のハナコが裏切った時は、遂に昔に戻ったかと思ったよ。」
私は紅茶をそれなりに飲んで、喉を潤す。
「まぁ、まぁ、事情があるのですよ。」
言えない……外国のニューワールド組が日本はあまり精力的に活動してないけど実際どうなんだい?とか聞いてきたから証拠動画として使うためのものだったなんて。……まぁ、あの時の戦闘員は正規のではなく、犯罪を犯しても裁かれずに、隠して生きていた人達を口八丁手八丁で誤魔化して連れてきた人達だから大きな打撃はなかったし、ハナコが裏切ったお陰?で外国組が大変だなとか、協力しようか?とか同情してくれて精力的に活動してないことは不問になったから良かった…のか?…………考えないでおこう。
あの後、他の幹部からあの時の兵士ってどこの誰って聞かれて、冷や汗をかいたものだよ。
「それに、ハナコのアパレル会社が独立したにも関わらず会社の経営が回ってるのが不思議です。立ち上げる時もお金の心配はないと言っていましたが、いったいどこからそのお金は出てるんですか?」
「まぁ……追々ね。フフ。」
「フ、なんですかそれ。」
なんとか誤魔化せたか?
「そろそろ出ましょう。今日は本当にありがとうございました。」
「いえ、私もこんなに良いお店を知れて嬉しいです。」
「おや、誰か一緒に来る方でも?」
「まさか。」
絶賛募集中ですわ。
それは喫茶店を出て、賢さんと二人で歩いている時に起きた。
「っ!」
急に戦士が歩みを止めた。
「どうしました?」
私が尋ねると、何も言わずに私の背中に隠れるように立つ。
「右斜め前……」
戦士が、小声で私の耳元で囁く。
私は顔を動かさずに目だけでそちらを見る。
「っ!」
魔法少女ヒミカ!?
……いや、こちらに気付いてはいないみたいだ。
「賢さん大丈夫です。正体はバレてないですから。」
私が小声で伝えるが賢さんは隠れたままだった。
怪しまれちまうよぉ……
しかし、私の心配をよそに魔法少女ヒミカはスタスタと歩いていった。
「もう行きましたよ、大丈夫です。」
私の言葉にそっと背中から出てきた。
「…どうしたんですか?チョーカーも着いてますから問題はないですよ。」
「いやぁ、ごめん。でも…ちょっとね。」
やけに戦士の歯切れが悪い。
「わけありですか?」
「うん……まぁ、ちょっとした知り合いなんだ。」
…………ふ~ん、やーな予感。
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