第19話 これが罰だと言うのか!?

 やっばあぁ……………………

 我々はこんなのと戦ってたのかぁ。魔法少女カザリと魔法少女ナギサがハイタッチをした後、二人で魔法少女イサドラに手を差し伸べる。

 普通の人なら微笑ましかったり、感動したりとあるのだろうが、私からしたら戦力が高すぎて戦々恐々である。そして、そんな私の心情を小馬鹿にするように赤木が盛大な拍手をする。

「感動しました!」

 それを見て魔法少女三人が優しく微笑む。なんか恥ずかしいのは私だけですかい?




 そんなこんなで、それからは魔法少女イサドラによる戦闘の講習や、議論をしていた。

 そして何故か赤木も戦闘の動きを魔法少女カザリに教わっていた………何してんだよ………


「あなたの相方さん、面白いですね。」

「うえ?………ナギサ様。」

「様!?……私も偉くなったのかしら!」

 最初は驚くも誇らしげに胸を張る魔法少女ナギサ。

「そうですね。日本に住む人からしたらカザリ様とナギサ様は有名人でしょう。」

 魔法少女イサドラは東京の魔法少女五名に指導、赤木は魔法少女カザリと訓練、魔法少女ナギサが私に話しかける……のは道理なの……か?

「その……一つ聞いても良いですか?」

 魔法少女ナギサが伏し目がちに尋ねてきた。

「な、何でしょうか?」

 落ち着け!このチョーカーは故障してないぃ、このチョーカーは故障してないぃ……

「前に……どこかで会いませんでしたか?」

「………………………………いいえ?」

 バレてる?…………いや……なら既に攻撃をしているか?いったい何だ?

「むぅ、そうですか。」

「えっと……何故それを聞いたのですか?誰か似たような人でも?」

 怖いよぉー!早よ!詳細早よ!


「……実は、離れ離れになった兄を探してるんです。私も名字が小田なので、もしかしたらと。年齢も近そうでしたし。」

 ………そっかぁ、苦労してるんだなぁ。

「すみません。私は違いますね。

 何かもっと詳細な情報等はありませんか?」

 こんな顔をされると協力してあげたいと思ってしまう。

「……分かりません。離れたのはかなり小さい頃でしたので。」

 魔法少女ナギサはツインテールの左側を右手で撫でるように触る。

「そ……そうですか…………」

 もっと重いよぉ………

「あ!そんなしんみりしないで下さい!大丈夫ですから!」

「……すみません。私も小さい頃に妹が亡くなってしまって、生きていたらナギサ様と同じ年だったなと思いまして。」

「っ!?……あ…えっと………」

「あぁ、気にしないで下さい。昔の話です。」

 そう…昔の話だ。

「そう……ですか。」

「はい、ナギサという名前が妹と同じ響きでしたので思い出しただけです。」

「そう…なんですね。」

 …よかった、暗い顔は少し消えたようだ。










「イサドラ様、一日だけでしたがお世話になりました。」

「あら?まだ護衛期間の途中では?」

 魔法少女イサドラがキョトンとして顔を傾ける。

「えぇ、そうなのですが赤木でも十分に出来ているということで、経験の為に有望な新人をつけたいと社長が仰られました。さぁ、自己紹介を。」

「はい!渡辺です!よろしくお願いします!」

 渡辺。もちろん私の部下、戦闘員Hである。

「あら、女性もいたのね?ワタナベ、よろしく頼むわ。」

「はい!」

 魔法少女イサドラと渡辺が握手をする。


「それでは、私はこれで。」

「ええ、短かったけど楽しかったわ。」

「光栄です。」

 私は深くお辞儀をしてその場を立ち去る。


 フゥー……それっぽい理由で逃げられたな!やはり私に前線は向いてないようだ。

 Bは…まぁ、あれだったが仕事は真面目にやるため問題ないし、Hのフォローも十全に行えるだろう。







 従者と将軍には納得してもらってHを投入したが、本当は私の都合を隠して提案をした。何故かと言うと、Dから私の専用の試作品が出来たと連絡がきたからだ。

 これはD以外には恥ずかしくて伝えていない。



「えっと…"要望通りにしましたが、まだ完成ではないため危険を考慮して広い場所で使ってください。万が一を考えて貴金属等は外しておいてください"か。」

 私は包装を外してダンボールの中身を取り出す。態々ニューワールドが所有する森林に来たが、なかなか雰囲気が良い。神秘的で良い感じになりそうだ。


 準備は整った。

「すげぇ……さてと、やってみるか。」

 私は機械仕掛けの本を取り出し、良い感じに立つ。

 初変身はカッコ良くなくては。

 

 適当にページを捲ると機械で出来た花の載った植物図鑑であることが分かる。

 その内の一つに、私が一番好きなオキザリスを見つけた。

「今日はこいつだ。」

 フゥ、ロールプレイが捗るわぁ!

 私は胸ポケットから一つの栞を取り出し、栞の側面にある飛び出た歯車を親指で下に回す。

「ギ!カ、カ、カ、カ、」

 すると、回した歯車によって栞の内部の歯車達が連動して動き出した。

 そして、その飛び出た歯車を機械オキザリスの絵のへこんだ部分に噛み合わせる。

「ギ!カカ、カカ、カカ、カカ」

 歯車の小気味良い音が森に響き、機械オキザリスの絵が光だす。

 変身だと安直すぎるし、どうしようか……

 錆浅黄、万緑一紅、春化、新緑………………うーんしっくり来ない…………

 ならばここは思いきって!


 深呼吸…………

「Preserve」

 敢えての英語ォ……まぁ、また何か思い付いたらそれにしようかな。

 そのまま、私が本を閉じると、私の手元から本が離れ、自我を持ったように空中で動き出すと分裂した本が私の身体にくっついていく。


「complete……Oxalis」

 

 どこから声が出たのか知らないが、音声が出るならDに頼んで増やしてもらおうかな。


「あとは機能を…説明書が紙である!ありがてぇ。」

 えっと……"能力は将軍の力を戦闘全般をイメージしただけです。そのため選ぶ植物の能力は全て白紙設定にしており、軍師様がその植物毎に三つまでご自身で設定してください。能力の設定は良い感じにイメージすれば大体いけます。無理な場合は何も起きないためそれで把握してください。"

「おぉ…良いね。これでまだ試作品なのか……」

 本当に、Dをスカウトして良かったと思う。


 ……オキザリスに合った能力三つかぁ……

 とりあえず、花言葉の輝く心は必須として………


 ゴォォォォォ……

 なんだ?………っ!? 

 私はその場を跳躍して離れる。そこには火が揺らめいていた。

「あなたニューワールド所属…であってるかしら?」

 な…何故魔法少女イサドラが!?

「連絡が来たと思ったら……」

 魔法少女カザリ!?

「でも、ノイちゃんはニューワールドかどうか分からないって言ってたよね。」

 魔法少女ナギサ!?

 なんでここにいるんだ!?

 私の疑問等気にしないように魔法少女イサドラが誰かに話しかける。

「ねぇ、ここは火を使っても良いの?」

「……はい!ここは俺が所属する会社の私有地ですし、怪しい奴はほっとけません!それに責任は全部俺が取ります!」

 おいおい、BとHもいるのかよ!?

 ………いや、Bのことだ、我々の植林計画に少しでも良い感情を持って貰いたくて連れてきたら、私がいたとかそんなところだろう。そうだと信じているぞ!?

 落ち着け…モニタールームに連絡をすればBに連絡がいって誤解が解ける筈………それに魔法少女にはBが演技をして隙を作れば私が逃げられる!なんせ今は身体が軽いからな!

 さて…通信機、通信機…………あれ?


 "貴金属等は外しておいてください"


 ああぁぁぁぁぁ!!

 先程の火で私が所持していた通信機と本が入っていた包装とダンボールは燃えてもう助からないだろう。


 ならば、せめてBに近付いて耳打ちをするべきだ!


「アカギ、ワタナベ!私達から離れてください!

 ここからは人外の驚異です。」

「ですが……」

「良いから!撤退は恥ではありません!」

「………はい!行くぞ渡辺!」

「え!?はい!」

 魔法少女イサドラに説得されBとHは二人でここを離れていった。


 しゅーりょーのおしらせだぁ………

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