第18話 すっげえぇぇ!
「ここが日本の魔法少女の訓練所なのですか?」
「そうとも言えますね。関東という地区の魔法少女が使う場所の一つです。」
魔法少女カザリが笑顔で喋ると私と赤木に小声で話しかける。
「ボディーガードのお二人は分かってると思いますが、機密情報ですので漏らしたりはしないように。」
「もちろんです!」
赤木が元気に返事をする。
まぁ、漏らすも何も当人なんだが……まさか、高校の地下にあるとは思わなかったよ。
流石に入る時は目隠しをされたが、モニターで監視していた為、現在色々と解析中だ。
「それでは、イサドラさんには東京の魔法少女数名と模擬試合をしてもらいます。その後、私と本気でやりましょう。」
「えぇ、良いわね。」
最初は憂鬱だったが、魔法少女のデータを間近で撮れるというのは嬉しかったりする。
それに、東京ということは魔法少女ナノハは不在、問題はないな。
東京に魔法少女は五名。その内二名は見とり、三名が模擬試合のようだ。
「そちらの三人は用意は良いかしら?名乗った後、変身して好きに攻撃しなさい!」
"Wish for the other side"
魔法少女イサドラが呟くと光を放ち、変身する。
光の中から肩を回す魔法少女イサドラが見えるようになると、人差し指で三人を挑発する。
「はい!魔法少女サキ!」
「魔法少女クズネ!」
「魔法少女サエカ。」
「「「彼方に願いを!」」」
三人はネックレスに触れながら口上を述べて変身し、光を放ちながら一斉に走り出す。
魔法少女サキは水を操る。魔法少女サクラや魔法少女ラナのようにホースの様に射出するのではなく、身体に纏わせての近接戦法が得意。
魔法少女クズネは火を操る。空気中に手をなぞるとそれに沿って火の玉が出現し、自在に使う戦法が得意。
魔法少女サエカは氷柱を操る。氷柱を射出したり、防御に使ったりと攻防一体の戦闘得意とする。
対する魔法少女イサドラは……
「きゃ!?」
「ぐうぅ!」
「押し返せない!?」
火だ。ここは敢えて炎と形容した方が良いと思う。魔法少女イサドラは魔法少女クズネと同じように火を操るのだが、使い方や動かし方に無駄がなく洗練されており、戦闘が長引く程自身の感情も熱く燃え盛り、強くなる。
将軍が言った魔法少女イサドラの情報の中にアメリカのニューワールドの基地を吹き飛ばす映像があった。それと一緒に人だった何かの焼け跡も映されていて、私と将軍は吐いてしまった。唯一従者は何回もリピートしていて私と将軍はめっちゃ引いた。
………模擬試合の結果は三人の惨敗。文字通り手も足も出ずに負けていた。まぁ、私なら秒で殺られるだろう。自慢じゃないよ?…死活問題の話さ。
「二人は三人のことを頼んだわ!
……さて、お持ちかねよ。」
「ふふ、メインディッシュの登場ね!」
魔法少女カザリが変身を……
「ちょっと待ってぇ!!」
する前に誰かが乱入する。
が、ここは地下かつエレベーターでの移動のため、声がしてから全員が少し待っていた。
………やべ、この間笑いそ。
「あら、ナギサじゃない。どうしたの?」
魔法少女ナギサ。…確か二番目の魔法少女の筈だ。
「その勝負、私も混ぜて!」
その言葉に魔法少女カザリの目が点になった後、チラリと魔法少女イサドラを見る。
「ふ、魔法少女ナギサ……噂は聞いてるわ。日本のNo.1とNo.2と戦えるなんて最高じゃない!良いわ、受けてあげる。」
「やった!」
「ハァー、本当にあなたは………
イサドラさん我が儘を聴いていただきありがとうございます。ですが、ニ対一でも手加減しませんよ!」
「もちろん、私も丁度燃えてきた所なのよ。いつもよりも私は熱くなってるわ!」
獰猛な笑みを浮かべて魔法少女イサドラが吠える。
「行くわよ、ナギサ。」
「オッケー、カザリ!懐かしいね!」
「えぇ、そうね。」
魔法少女カザリと魔法少女ナギサ。日本人なら誰もが知っている最初の魔法少女。我々日本支部が少しだけ"荒れていた頃"から活躍していた二人だ。
「彼方に願いを!」
「彼方に祈りを!」
目映い光を放ち、二人は変身すると、魔法少女カザリが風の刃を操り放つ。それと同時に魔法少女カザリの追い風に乗り、日本刀を持った魔法少女ナギサが魔法少女イサドラに向かう。
「うおぉぉ!!生で見れるなんて!感激です!」
こいつ、嫌いになりそう………
ー魔法少女カザリー
ナギサが私の風に乗って加速しながらイサドラさんを狙って剣を振るう。
けれどイサドラさんは陽炎のように揺れると、突如ナギサの腹部から火の手が上がった。
私はナギサに逆風になるように風を送り、イサドラさんから遠ざける。
多分元々しゃがんでいて、熱で立ってるように見せかけていたからナギサの剣が当たらなかったのね。
「大丈夫?ナギサ。」
「アッハハ、やられたよ。本気だったらもう私はこの世にいないね。」
ナギサが舌をだしておどけたように話す。
「二人ともこんなものじゃないでしょう?さっさと来なさい!」
イサドラさん、熱くなりすぎて口調が激しくなってるわね。
「ねぇナギサ、あの人に隙はあるかしら?」
「あったらとっくに斬ってるよ。」
さっきのおどけた口調は既に消えて、真剣な顔でイサドラさんを見据える。
「…………なら、私が前に出るわ。」
「へぇ~OK~。」
まずはナギサが走る。
「来たか!」
私とナギサが話してる間、ずっと足拍子のように地面を鳴らしていた。私はここまでバトルジャンキーではないが、口角が自然と上がり楽しいと思ってしまう。
「せりゃ!」
「フン!」
ナギサの下からの切り上げをイサドラさんが手に火を纏わせて掴む。
「うひゃあ!マジ!?」
「さっきのサキを見て閃いたのさ!」
イサドラさんがそのままナギサを放り投げる。
「……うお!サンキュー!」
それを私の風で受け止める。
「せい!や!」
私は全身に風を纏わせて軽やかに体術を使う。久し振りだったけど、なかなか良い感じだ。
「フゥ!もしかしてそっちが本職かしら?面白いじゃない!」
私は自分の体術にそれなりに自信があったけど、もう折れそう。そう思えるくらいにはイサドラさんもカウンターを混じらせながら競り合ってくる。
「ふ!流石イサドラさん、ね!」
渾身の回し蹴り!……も腕で受けられた、けど!
「不意打ちは無駄よ!」
ナギサが音をたてずに近付いた一撃もすんでのところで受け止められた。やっぱり向こうはそういうのが日常なのかしら?すごい反射だわ。
「なら!」
私はしゃがんで地面を右の人差し指でなぞる。
「何を?ぐ!?」
私に気を取られたイサドラさんをナギサが蹴りあげ、それを見た私は左手で指パッチンをする。
なぞった地面から力を流し込み、イサドラさんの下から風を巻き起こす。
「何!?……Sit!」
火を出そうとするが、上手く出せていない。力を使う時、身体を踏ん張るようにする人が多いため、かなりの賭けだったけどイサドラさんも効いたみたいね。
私は地面を強く蹴り、身体の自由が利かないイサドラさんに踵落としをする。
「がッ!?」
続けて手刀を繰り出し、遠くに飛ばす。
「やるわね、でも………ふふ、降参よ。」
イサドラさんが両手を上げて参ったのポーズをする。
飛ばされたことで仕切り直しと思ったみたいだけど、そこでナギサがイサドラさんの首に剣を添えたことで諦めたようだ。
「勝ったぁ!やったね、カザリ!」
ナギサが笑顔で走り寄ってくる
「えぇ、ナイスよナギサ!」
私とナギサはハイタッチをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます