第6話 ふざけんなよ!?
「あ、こんにちは軍師様。」
「戦闘員Cか、久し振りだね。」
彼は戦闘員C。
A~AZを持つ五十二人は能力の高さや将軍の力との相性を鑑みて採用していたため、基本的に幹部格の副官を勤めてもらっている。
ハナコのあれで二人消えたけど………
私の副官はA~Hの八人だ。
「こちら、報告書となっています。」
「…うん、ありがと。」
ん?歯切れが悪いって?言わないでくれ。
Cのことは彼が高校生の時からアプローチをかけていたのだが、将軍の力を受けたことで予想以上に優秀になってしまってね。
現在はニューワールドが保有する各会社にマーケティングコンサルタントとして働いてもらっており、彼も何処其処の企業のどーたらがこーたらと説明をしてくれてるのだが、私にはそんな知識は無いため、グラフが右肩上がりだから順調やろ?みたいな感覚しかない。………分かるだろ?この気持ち。
「……ハナコとの接触は?」
実は今回、Cを通してハナコの説得が出来ないか頼んでみた。
「接触は出来ました。私が会社に着くなり社長室に連れていかれ、秘書様に………
私、戻る気はないわ。ニューワールドよりも大切なものを見つけてしまったから。
と、言われてしまいました。」
まぁ、娘のことだろうな。
「それともう一つ、
皆に謝っても許してもらえないのは分かってる。だからこそ戦場で会いましょう。これは私の意地というか義理立てみたいなものだけど、あなたたちの事も最低限しか話してないわ。
だそうです。」
「待て、ハナコは戦場に出るのか?」
それはまずい。
ハナコは騎士、従者と並んで日本支部が誇る戦闘三人衆なのだ。
「そうみたいです。何か悲しそうな表情をされていたのは気になりましたが、私が分かっているのはこれだけです。」
だとすると、戦力を更に上げなければいずれ負けるだろう。やることが山積みだ。
「そうか…ありがとう。もし、まだ何かあったら作戦室に来てくれ。今日は定時までそこにいるから。」
「了解しました。」
「それとハナコの話、他の幹部や将軍にも伝えておいてくれ。」
「え!?私がですか!?」
「そうだ。君にはもっと活躍してもらうから、顔繋ぎも兼ねてさ。頼んだよ。」
「は、はい!」
Cは敬礼をするとブツブツ呟きながら小走りで歩いていった。きっと文言を考えているのだろう。
まずは一つ目。
ハナコは魔法少女である娘と共に戦場に出るのだろうか?
ハナコのネットでは娘と家で撮影したと思われる写真も確認できた。もしかしたらあるかもしれない。
もしも魔法少女と共に出てくるならハナコの娘は近畿地方の魔法少女のため、あらかじめ予測が出来る。だが、それを国が把握していないとは限らないため、念には念を入れるべきだというメモをしておこう。
次に二つ目。
悲しそうな表情。
魔法少女やその関係者には国の手も伸びているため、一般的に学校や職場にいる時でも護衛という名の監視がついているのはモニタールームの情報で分かっている。
それを危惧しているのか?誰とも知らない国の重役達に娘が二十四時間見られてると知れば親としては複雑だろう。
または、ハナコが裏切らないように娘を国で管理し、かつハナコにも監視がついており、ハナコが何か怪しげなことをすれば娘が危険になり、言うことを聞けば数日の接触を認められている……みたいな?ハナコのネットの投稿は不規則なのだが、普通に操作が下手くそというのもある。可能性として考えられなくもないが、Cが接触出来ている時点で監視が無い、もしくは監視はあるが、社内にまでは手を回していない。
どちらかと言われると後者の方があり得るだろう。
と、特に確証もない妄想を拡げながら作戦室で夏蜜柑を頬張る。酸味が効いてて美味しい……
ドタッ!バタン!
「軍師様!!」
三個目の夏蜜柑を食べ終ったところでCが慌てた様子で部屋に駆け込んできた。
「どうしたんだ?落ち着きなよ。」
良かった、ペットボトルの天然水をコップに注いで飲んでおいて。
私は水の入ったペットボトルを渡す。
「あっ……は…………すみま…せん。」
「それでどうしたの?」
「えっと…軍師様が仰られた通り幹部の皆様に伺っていたのですが、最後に従者様とお話をしたのです。」
「何か、嫌な予感がするけど……聞こうか。」
従者ユータ。
度々独断行動をするニューワールド日本支部最年長だ。
「秘書様についてのお話をすると、従者様は笑顔を浮かべながらモニタールームに走り込んでしまいました。」
あーーー想像できるわぁ……。
あの戦闘狂ジジイ、どうせハナコと本気で戦いたい!とかほざいて戦闘員AQに無理を言ったのだろう。涙目のAQが目に浮かぶ。
「分かった、私がモニタールームに向かう。Cくんは自分の仕事に戻ってくれ。」
「あ…でも!」
「大丈夫、君のせいじゃないよ。」
「はい……」
Cは結構落ち込むだろうけど、これも経験だから、これからも頑張ってほしいね。
「戦闘員AQ、状況は?」
「はひ!?……あ…それが……」
なんだ?モジモジして。
「どうした?怒らないから話して?」
AQは涙目のまま角度九十度で頭を下げた。
「従者様が騎士様を強引にお連れになってしまいました!」
「……まぁ、それぐらいなら……そうそう負けることはないだろうし。君も止めることは出来ないだろう。」
「………それがぁ」
AQが何かを言いたげに口をモゴモゴさせていた。
その時、アナウンスを担当している戦闘員POの声が部屋に響いた。
「従者様並びに騎士様を待ち構える魔法少女の姿を確認!モニターに表示します!
敵は……」
その続く言葉に俺は絶望した。
「敵は魔法少女カナそして、元幹部ハナコ!
それと…魔法少女ナノハ!」
ほえ?
俺は急いでモニターに駆け込み、目を凝らす。
そこには俺を追い詰めた魔法少女ナノハとその後ろにちゃっかりとナズサさんもいた。
おっかしいなぁ?
ダイゴとナズサ対面まで残り二分!
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