第7話 終わったぁぁぁ!

「っ!とりあえず変わってくれ。騎士の対応は私がする。」

「承知しました。」

 私は戦闘員FZからダイゴのサポートをするドローンのマイクを借りる。

 とにかく、ダイゴにナズサさんと会わせないことが一番だ。確認したところ従者の副官であるIとJ、そして何故かBが付き従っていた。

「AQ、どうして戦闘員Bも現場にいるんだ?」

「は、はい!Bさんはモニタールームの定期報告のために来てもらっていたのですが、従者様が……」

「……了解、分かった。戻って良いよ。」

「はい……失礼します。」

 AQが凄く申し訳なさそうにしていたが、幹部の一人にそう簡単に物申すことは出来ないからね。特に従者には。

 Bに関してはあまり気にしていない。彼は私の副官の中で一番の武闘派だ。遅れを取ることはないだろう。




「騎士!騎士!今いいか?」

『お?軍師か、どうした?』

「お前は今、どれくらい把握してる?」

『把握?……従者のじいさんがハナコ殴ろうぜって言ってついてきた…かな?』

 そうか、ナズサさんがいることは分かってないのか。それは僥倖。

「実は、ハナコとハナコがサポートしている魔法少女の他にもう一組、魔法少女とサポーターがいて、二手に分かれて布陣している。

 だからB、I、Jにはもう一組の方に向かってほしいんだ。ハナコは強い。それに魔法少女と一緒だ。半端に人がいると被害を出しかねない。

 もう一組の方のサポーターはあまり戦闘が得意では無さそうだから、三人いれば簡単に片付けられるだろう。」

『でも、従者のじいさんは納得するのか?まとめて戦いたい!とか言いそうだけど?』

「ハナコに滅多打ちにされて、魔法少女に追い打ちを掛けられたら?って言ってみな。」

『確かに、魔法少女にやられたら将軍の力が消えて、国に保護されちまうもんな。』

 保護、ねぇ……まぁ今はいいか。

「あぁ、従者も手塩に掛けて育てた逸材を見す見す手放す程、愚かではないだろう?」

『そうだな、言っとく。』

「頼んだ。」


 従者は渋い顔はしながらも納得はしてくれたようで作戦には従ってくれた。いつもこうなら楽なんだが。







 


「久し振りだなぁ!ハナコォ!」

 従者が不敵な笑みを浮かべながらハナコに奇襲を掛ける。

「あんたも元気だねユーじいさん、そんな重いものさっさと捨てて引退しな!」

 ハナコは従者の大槌をヒラリと躱し、お返しとばかりに長剣で斬りかかる。

 ガキンッ!

 大槌と長剣のぶつかる音が戦場に響く。

「お母さん!大丈夫!?」

「大丈夫!楓花はそっちの筋肉達磨の相手して!」

「分かった!」



「ったくハナコの奴、筋肉達磨はねえだろ。

 やれやれ、お嬢ちゃん。相手宜しく頼むぜ。」

「お母さんの知り合いだからって手加減しないよ!」

「上等!」


 そう、両者ぶつかり合う寸前。

 パン!!

 白い煙が少し遠くで上がった。


 あれは、魔法少女達が使う救援信号だ。

 ハナコと魔法少女フウカは目を合わせると後ろを向いて走り出す。

 

 ヤバいヤバいヤバい!B、I、Jが使った奇襲で思いの外優勢になりすぎたせいでナズサさんが狼煙をあげた!

 ぐ、うぅぅぅ………複雑な気持ちが込み上げるぅ。


「ま、待て!騎士!向かうのは従者だけで…」

『何言ってんだ、軍師!向こうに行った三人が殺られちまう!』

 

 あぁーーーー終ったぁぁぁぁぁ………

 ダイゴが従者の後を追うように走っていった。


 とりあえずドローンを動かしてダイゴについていくが、気持ちは最悪に近い。

 







 しばらく移動するとハナコと魔法少女フウカが魔法少女ナノハとナズサさんを庇うように立ち、従者が戦闘員B、I、Jを戦場から遠ざけるように蹴り飛ばした瞬間が見えた。

 ……痛そー。

 だが、よく見ると三人は身体の其処らじゅうに切り傷があった。多分だが、戦闘中にハナコに後ろから不意を突かれたってところだろう。命に関わる程ではないが、早急に治療が必要だろう。


「NE!戦闘員B、I、Jの回収作業を急いでくれ!」

「了解しました!」

 よしよし、従者が木々の影に蹴り飛ばしてくれたお陰でその下に転移ポータルを設置する事が出来る。

ナイス判断と言いたいが、日頃の行いのせいでボーナスは無しだ。


「菜…梓…。」

 ついに対面してしまった騎士は、ナズサさんを見つけると名前を呟きながらチョーカーを引きちぎった。

 ほらな?やっぱり、だと思ったよ。平民に土下座して作ってもらったチョーカーを一瞬で壊しやがった。

「……大吾。」

 ナズサさんも少し動揺しながらもそれに反応した。

 

「え?二人は知り合いなの?」

 唯一二人と面識のあるハナコがキョトンとした顔で尋ねる。

「「まぁ…一応。」」

 仲良いな、この二人。


「ねぇ!大吾!私達の方に来ない?そうすれば前みたいにさ!」

 まさか、こんなどストレートに誘うとは…ここは!


「おい!従者!今すぐあの女を止めろ!騎士が!」

『何を言ってるのか分かりませんね、軍師。こんな面白そうなことを止めるなんて野暮でしょう?それに、場合によっては騎士とも本気でやりあえるなんて……ふふふ。』

 てめぇ、後で給料半額にしてやるからな?覚えとけよ。

「く、仕方ない。騎士!おい、騎士!」

 私は騎士に大声で呼び掛けるが、返答がない。

『あぁそれと、騎士がちょっと預かっといて、と無線機を渡されました。』

 …………………ハァー。おつかれさん。

 もう終わりだよ、ったく。


「菜梓、お前とまた一緒にいれるのは嬉しいけどよ、俺にだってプライドってもんがあるんだ。

 だからそっちの四人と俺で勝負だ。そっちが勝ったら俺は大人しく従ってやる。」

 コイツは馬鹿か?……いや馬鹿だったわ。

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