第4話 こ…怖すぎる!!
「皆情報は集まった?」
「軍師様ようこそ。資料はこちらです。」
「ありがとう。」
現在、日本全国の監視をしているモニタールームにいる。ここでは日本で起きた事件や事故に対応するために動く魔法少女達の能力を調査するためのものだ。
これは事前に言っておくが、監視を担当しているのは全員女性だ。これは声を大にして言わせてもらう。
「……東北地方と中部地方に一人ずつ増えたのか。」
「はい、能力はそこまでですが、数が増えたことによる連携は訓練されたような動きです。」
「そうか。」
魔法少女は国と密接に関わっており、多分どこかで国の管理の下、修行か何かをしているのだろう。
今話している女性はモニタールームのエリアリーダーの戦闘員AQ。確か…………四十三番目に所属した人物だ。あっ、名称適当とか言うなよ?
私が情報の確認をしていると、突然部屋のランプが光り、警報が鳴り響く。
「至急!至急!神奈川県◯◯市で誘拐!目撃者無し!犯人は黒のバン!一人の中~高校生の少女が黒ずくめの四人の人物に無理矢理乗せられていました!」
ニューワールドは地球征服を企んではいるが、人類を滅ぼすわけでは無いため、このような闇に埋もれそうな事件に対処することがある。
「軍師様、一度失礼します。
騎士様!よろしいでしょうか?」
ここのモニター管理と戦闘演習の仕事を担っている人物こそ十一将が一人、騎士ダイゴだ。
「あ~あ~、気持ちよく寝てたってのによぉ~。」
「騎士様、状況は……」
「分かってる、警報で起きたから全部聞いてる。」
因みに騎士の能力はショートスリーパー。私のゲームよりは断然便利で羨ましい。
その割りには基本寝てるのはよく分からんが。
「では、お願いします。転移ポータルも犯人のアジト付近に設置完了しています。お気を付けて。」
「お~う、それじゃあ……」
やっぱやる時はやる男。頼りに……
「行くぞ、タロウ。」
「……は? うげ!?」
騎士ダイゴに首根っこを捕まれてそのまま転移ポータルの上に乗せられた。
「え?……………あ……すみませーーーん!!」
転移する時、大声で土下座する戦闘員AQが見えた。
「よっしゃ、行くか!」
「行くか!、じゃねぇーよ!なーにしとんじゃい!」
この野郎、やりやがったな。俺が弱いってバレるじゃねえか。うっ……太陽光が暑い、眩しいぃ……
「まぁまぁ、お前いっつも引きこもってるし、たまには外出ようぜ?」
「うるさいな、余計なお世話だよ。
ったく、お…私は戦闘向きじゃないのに。」
「今更演技しても遅ぇぞ?」
「っ!………行くぞ。」
「へへ、だな。」
「犯人は……この如何にもな倉庫の中か。」
見てみると隠すように黒のバンも停められていた。
「え?何で知ってんだ?」
「え?このドローンで通話出来るだろ?」
私は極小型ドローンを指差す。
「そうなのか!」
「何で知らないのー?」
「いやぁーいつも部下に任せてるからー。」
「えぇ……じゃあこういう時は?」
「片っ端から。」
「効率悪すぎ、これからはちゃんと使えよ?便利なんだから。」
「へいへい。」
「てめぇら誰だ?」
おっと話し込んでたら見つかってた。
だが、俺は慌てない。華麗にやり過ごす。
「あ、あぁ、すみません。偶々通りかかっ……」
「お前らが誘拐犯だってこっちゃあ知ってんのよ。大人しくお縄につきな!」
「うぉおぉぉい!馬鹿野郎!自分から優位な状況を捨てんな!」
「ちっ!お前らやるぞ。」
「「おう。」」
そう言うと、誘拐犯達は四人ともナイフを取り出した。
「おい!おいおいおい!どーすんだよ!」
「タロウ……」
「な!何だよ!?」
「二人よろしく!」
ダイゴはニヒルな笑みを浮かべながらサムズアップをした。
そしてそのまま、誘拐犯に殴り込みにいった。
ふ、ふざけんなぁーーー!!
「お、おぉ…今の内に……」
私はバレないようにそっと足音を出さずに逃げようとした。
「おっと逃がすと思ったか?」
無理でしたぁ!!対ありでっす!!!
しかも何でリーダー格みたいなやつがこっちにいるんだよ!………もしや、あいつも俺みたいにそこまで強くないタイプ……………………………
「見られちゃあ、仕方ねぇよなぁ?
てめぇの不運を呪いな!」
ガッ!!
「うお!?」
あの野郎、何か隠してると思ったら右手で金属バット使ってきやがった!
どうす………おやぁ?隣のやつ震えてるぞーー??
「けっけっけっ!」
「なんだ?その気色悪い笑い方。」
ふふふ、金属バットヤローがこっちに来てくれたお陰で、プルプルちゃんと俺の方が距離が近い!
俺は足がガタガタのプルプルちゃん向かって走る。
「あ、てめぇ!」
「う、うわぁ!!」
プルプルちゃんは俺が急に笑いながら走ってきたことに驚き、しりもちをついた。
金属バットヤローが気付いて走ってきたが無駄だな。
「貰うぜ。」
「あぐ!?」
プルプルちゃんの顔を蹴り飛ばしてナイフを奪う。
どうやら気絶したみたいだ。
にしても、何でこんなことをしたのかねぇ。全員高校生っぽいからこの感じ、いじめっ子といじめられっ子かね?
ま、どーでもいいか。
「へ、これで戦えるってもんよ。」
「ナイフ一つ持った程度で思い上がってんじゃねぇぞ!」
「それ、ブーメランになってるの分かってる?」
「うるせぇ!」
金属バットを振りかぶりながら突っ込んできた。
あーー……どうしよ?なんも考えないで煽っちまった。そりゃ、相手の無力化ぐらい出来なくはないが、傷をつけるのは抵抗がある。
だって打撲とかは治るけど、刺し傷とかって治らなそうじゃん?
ガッ!!
「あーウゼェ!」
金属バットを振り下ろす時にこっちを見ていないお陰で、荷物の裏に隠れることが出来た。
やっぱ素人だな。どうす……………
これは砂利か。使えそうだぁ………
「あぁ!どこ行きやがったぁ!」
ガンッ!!ガララ……
金属バットヤローは手当たり次第、倉庫の荷物に八つ当たりをしている。
よしよし、そのまま……
タッタッタッ!
「そこかぁ!!」
俺は金属バットヤローが振り向いた瞬間に手に隠し持っておいた砂利を投げ付ける。
「うわ!何だぁ!?」
目を瞑りながらも金属バットを振り回す。
「そーら、よっと!」
「がっ!?」
取り敢えず蹴り上げた。
えっ?何をって?男の金的よ。
金属バットヤローが痛そうにうずくまる。
「ぐ…ぅぅぅぅ…………」
「そい!」
「が!?」
お腹も蹴って気絶させとく。
痛みが収まったら面倒だし、金属バットは没収してと。さっきの砂利を纏めてた紐で縛っとくか。ちゃんとした紐じゃないからちぎられそうだけど…無いよりはマシだろ。
「何だよ、もっと圧倒的な力を見せて欲しかったんだがなぁ。」
「うお!?」
ビックリしたぁ…。ダイゴが二人の少年の上に座りながら膝に頬杖をついていた。
「ふん、この程度の敵に私が本気を出すわけ無いだろう?」
「ふーん。まー俺は警察に連絡しとくわぁ。」
「お、おう。頼んだ。」
怖っわぁ。あいつ俺の実力を疑問視してるみたいだ。まぁ、その通り弱いんだけど……誤魔化しきれたかな?
「よっしゃ、終わった。帰ろーぜぇ。」
私とダイゴは倉庫を出た。
「あーーやっとか……」
ちゅどぉぉぉぉーーーーん!!!!!
「何だ?何だぁ!?」
「だ、大丈夫か!」
私が手を振り回すと誰かの身体に触れる。
「騎士か?」
「そうだ!」
そう言うと煙を振り払うように私の手を掴む。
取り敢えずお互いの死角を消すように背中合わせに立つ。
「モニター、状況は?」
『ザ、ザザーーー……………』
「ちっ!壊れたか。最悪だ。」
壊れたモニターをポケットの中に入れる。
そして、段々と煙が晴れると一人の少女がいた。
「あー……本っ当に、最悪だよ。ダイゴ、後で奢りな?」
「しゃーねぇーなぁ、………無事に帰れたらな。」
お互いに深呼吸をしながら相手の出方を伺う。
「あなた達が、誘拐犯?」
む?これはもしや……逃げれるかもな。確かこの子の名前は。
「あなたはもしや、魔法少女ナノハ様では?」
「おい…」
「ダマッテロ!」
察してくれよぉ。
「誰?」
「し、失礼しました。我々は誘拐犯の場所を通報した者です。こ、こちらに履歴が。」
私はダイゴから携帯をぶんどって、警察に連絡した履歴を見せる。
「確かに……巻き込んで、ごめんなさい。」
魔法少女に謝られてしまった。なんか不思議な気分だ。
「あ……いえいえ、そんな。我々はここらで失礼させていただきますね?」
「うん、バイバイ。」
ふぅ、セーフ。
ダイゴと共にいそいそと帰ろうとした。
「ちょっと、お待ち下さいませんか?」
OMG
「な、何でしょう?」
振り返ると我々の逃道を塞ぐように車を停めた後、車から女性が降りてきた。
「私は魔法少女ナノハのサポート担当しているものです。」
「そのような方が我々に何か?」
「そちらの筋肉が多い方、いつもそのよう格好なのですか?」
どういうことだ?
「そうだ。この服は極限まで動きやすさを……」
「フム、そうですか。
ナノハ!その筋肉はニューワールド幹部の騎士です!おそらくもう一人もニューワールドの者です!」
な、何故バレ……ぐえ!?
「ゴホッ!ゴホッ!」
「スマン、タ……お前。ちょっとまずいな。」
ダイゴが何故そう言ったのかはすぐに納得がいった。躊躇なく棍棒の様なもので、我々がさっきまでいたところに攻撃をしている魔法少女ナノハがいた。
「む、外した。」
いやいやいや!やべー!そりゃ、現場がどれだけ危険か知ってたけど、怖ぇ!地面抉れてるじゃねぇか!
「おら!」
私が戦いているとダイゴが魔法少女のサポート担当の人に殴りかかった。
さすが、ナイス判断だ。
「きゃ!?」
「叔母さん!」
魔法少女が動いたか、うぅ、怖いけど!
ザッ!
「っ!」
「悪いけど、この先は通さないよ。」
や、やっちまったぁーー!!
私は先程のプルプルちゃんから強奪したナイフを魔法少女に向けて投げた。地面に突き刺さったナイフと私を確認するように見ながら、魔法少女が身構えた。
しめた。我々ニューワールドにも投げナイフを使って戦う者もおり、こうすればまだナイフを持っていると錯覚出来るかもと思ったが!ビンゴだ。
ふふ、それに国を介して魔法少女の掴んだ情報を他の魔法少女に流してるってのも分かったし、何より魔法少女にサポートをする人物がいるというのも初耳だし、二つともかなり有用な情報だ……帰れればだが。
「な!?」
これは、ダイゴの声だ!
「どうした…騎士……様!」
魔法少女を警戒しながらダイゴの方を見ると、静止したダイゴと掛けていたメガネが取れて座り込むサポーターの女性がいた。
「お前……まさか、菜梓か!」
ダイゴのやつこんな時に何ナンパしてんだよ!!
「な、なんでお前が私の名前を……」
「は?俺の顔……あぁ、そういうことか。」
そう言うと、ダイゴは我々の顔を隠すための道具、首元についたチョーカーを破壊した。
「はぁ!?ちょ!おま!何しとんじゃあ!!」
「叔母さん!」
「あ、やべっ!」
ダイゴに気を取られていると、魔法少女がサポーターの所に向かってしまった。
私も急いで追いかけるが、悲しいかな追い付く気がしない。
私が追い付いた時には、ちょうどダイゴの顔隠しの靄が消えた所だった。
「俺だよ!大野大吾だ!覚えてないか!?」
「え?……ホントに……大吾?」
「そうだよ!久し振りだな!」
「え、えぇ……」
「叔母さん、知り合い?」
「まぁ、一応。」
「おいおい、一応って、酷いなぁ。」
なんだ、これは?何を見せられてる?
……は!?これってハナコの二の舞じゃねえか!?
「騎…もういいや!ダイゴ!帰るぞ!!
聞けないなら給料無しだ!!」
私は転移ポータルに向かいながら大声を出す。
「おっと、それはキツイ!
じゃあな菜梓!会えて嬉しかったぜ。」
「さっさとずらかるぞ!馬鹿野郎!」
「あいあいさー!」
怖い怖い、二度と外なんて出るもんか。
まぁ、ダイゴにはそれなりの物を奢って貰わねぇとなぁ?
「あ……」
「叔母さん、大丈夫?」
「え、えぇ…」
「追いかける?」
「……いえ、取り敢えず騎士と対等と思わしきあの人物の姿を、戻って確認することが先決ね。もしかしたら新しい幹部の情報かもしれないし、今逃げてるのだって罠かもしれないわ。」
「そ。……叔母さん顔赤いよ?」
「な!?な……な……忘れて頂戴。」
「アイスクリームトリプル。」
「…………分かったわ。」
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