第3話 超!厚待遇!!

 いやー昨日カッコつけて、笑えてますよ(キリッ)、みたいな発言しちゃったのにまさかなぁ……。

 ネットでこんなものを見つけた。





花花

しばらく会えてなかった娘と会えた!

感激ィ~




 と、続いて女性と少女の笑顔のツーショットだ。

 女性はどう見てもハナコ。それに少女の方に見覚えがある。………確か近畿地方で活動している魔法少女だった筈だ。二人ともニッコニコやね。

 確か………






 あった。ハナコが就職の時に提出した履歴書と面接の時のメモ。何々……娘を生んですぐに夫が亡くなり、そしてニューワールドに入る少し前に、一人暮らしを始めた娘が音信不通…………なるほどね。


 何で知ってるのかって?将軍が力を与えられる人は限定的というか、よく分かっていない。将軍の能力には一目その人を見ただけで、力を与えられる素質があるかどうか分かるというものがある。が、将軍も直感的に感じ取れるだけで、詳しくは分からないらしい。だからこそプライバシーを侵害しない程度に話を聞いて、我々幹部の共通点を探しているのだ。分かれば効率よくもっと幹部を増やせるのだがねぇ。

 おっと、愚痴って失礼。


 ハナコは魔法少女の中に娘がいたから離叛したと。取り敢えず将軍には伝えておくが………ネットリテラシーとかは……ギリギリ出てくる前か?

 それにあれだ。十一将の一人の平民の能力で記録媒体や人の記憶に干渉して幹部の顔をボヤけさせてるから顔は割れてないのか。

 因みに幹部以下の部下達には通気性抜群、洗えるスポーツマスクを配布している。目元は…まぁスマン。

平民にも限度はあるため、最低限幹部と将軍にだけその能力を使って貰っている。






「将軍、ハナコの件ですがこれを。」

「………元気そうだね。」

「はい。」

「……………まぁ、仕方ないね。」

「……………はい!」

 ちょっと気まずくなったからさっさと切り上げた。

 さーて仕事仕事ォ!











「呼ばれたから来たよ、タロウくん。」

「おぉ!有り難いです。ケンさんが来てくれるなら管理会計とか諸々が楽になりますよ。」

「いやいや、それよりあっちの仕事放って来ちゃったけど大丈夫かな?」

 ケンさんには不動産会社の代表取締役に就いてもらっている。

「大丈夫です。それよりも大変な仕事を手伝って貰うんですから。マイナスどころかプラス査定にしますよ。」

「はは、将軍とタロウくんはいつも、太っ腹だね。」

「何言ってんですか。働いた分の給料出すなんて当たり前じゃないすか。」

「ハハハ、そーだね。ホントに……有り難いよ。」

 部屋にはカタカタとパソコンのキーを叩く音が響く


 我々ニューワールドはテレポートの使い手に無理を言って拠点のあちこちに転移ポータルを設置している。それのお陰で表の会社からニューワールド日本支部の拠点まで一瞬で来れるようになっている。



「おや?また人数が増えてるね?」

「ふふん、まぁ最近はニューワールドとしてではなく、普通の人として我々の会社に入社する人達が増えてますからね。」

 我々の求人では何故か多くの人達が面接にやってくる。我々としては嬉しい限りだが、何故こんなに劣悪な職場を選ぶのだろうか?最近の人達はすぐに文句を垂れるという印象をテレビで持っていたが……意外とそんなこともないのかね。

「まぁ、給料も待遇も良いもんね。」

「そうですか?そんなこと無いと思いますけど。」

「いやぁ、待遇はまぁ会社によって各々だけど、初任給五十万、月収基本三十万、働きによって随時ボーナス、それに戦場に立っただけで五十万プラスでしょ?十分高いよ。」

「もう、その話は良いでしょう?私と将軍でちゃんと話合って決めましたし、給料未払いにはなってないですよ?」

「それにしても高すぎるよ?」

 なんでケンさんはこの話ばかりするのだろうか……ケンさんは確か前の職場から転職してきた筈だから………もしやもっと給料が安かったのか!?生活出来ないじゃないか!どーりでここの給料に戸惑うわけだ。

「えっ?どうしました?急に震えだして。」

「あっ、いえいえ!最近貧乏揺すりが癖になってきちゃいまして……あはは、気にしないで下さい。」

 あぶねー、やべぇ奴だと思われる所だった。

 えっと、会話の続き……と。

「給料が高いという件については理解しました。

 でも、人が増えれば将軍の力を十全に使いこなして、我々のように幹部や幹部候補になる人が現れるかもしれないですし、今まで一般人だった人が急に戦場に立って魔法少女と戦え!なんて言われるんですよ?それには怪我や最悪亡くなってしまうかもしれないんです。だから変えることは無いですし、この程度は出さないと。」

 幹部候補とは言葉通り、将軍が力を与えることが出来る人のことだ。

 それと、他の部下達でも恩恵がない訳じゃない。力は与えられなくとも将軍が仲間だと判断すればどんな人間でもそれなりに能力が上がるという正にチートのような能力を将軍は持っているのだ。


 分かりやすく言うと五十メートル走が八秒の人物がいたとして、将軍の能力を受けると六秒にタイムが縮まるのだ。

 さらにもう一つ例を挙げるとしたら、元々不摂生だった人物が将軍の能力を受けた後から、体調が良くなり便秘も解消されたとか。

二つともかなり分かりやすい例だと思う。

 これにより社員の能力が上がり、会社の業績も順調に上がっている。



「う~ん……」

 しかし、ケンさんは一体どうしたんだ?腑に落ちないような声を出して………はぁ!そっか!そういうことかぁ!私はなんということを!

「ケンさん!すみません誤解させてしまって!安心してください、別に戦場に立った全員が同じ給料では無いですよ!」

「ほっ、なんだ、やっぱりそうですよね。流石にたか……」

「はい!活躍に応じて順位をつけて、ボーナスも出してます!」

「…………は?」

 セーフ、セーフ!いやー誤解させる所だったよ。

 ちゃんと働いた人にはその分の報酬が無いとモチベーションが下がっちゃうもんね。

 それにケンさんは社会人としての先輩だし、そこら辺に懸念があるのは当たり前だ。

「あぁ!ちょっとケンさん。手を止めないで下さい。ちゃんと働かないとボーナス出しませんよ!」

「え、っと………すみません?」

 この後は順調に黙々と作業をこなした。

 なんとか今日中には終わりそうだ。

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