第2話 お…重すぎる!!
秘書ハナコの離叛から数日たったある日、ハナコの部下の半数が消えた。どうせハナコの下に向かったのだろう。………それはいい、まだ良いだろう。ハナコが慕われていたというだけだ。問題は月一の給料が支給されてから逃げやがったんだよ、クソが!!
まぁ、その可能性は考えていた。だからこそ監視もしていた。だが、あいつら金品だけ持ち出して、それ以外は全て部屋に置いていきやがった。
「誰が処理すると、思ってんだぁぁぁぁ!!!!」
フゥーフゥー………とまぁ叫んでも始まらないため現在部下の治療や、裏切者の部屋の掃除に片付け、名簿の更新を続けている。
幸いなことはスパイがいないことだ。何で分かるかって?ハナコはそれなりに年をとってはいたがアイドルや女優並みに肌艶が若く、顔も美人だったためファンの追っかけのように部下がいなくなったからだ。消えた奴らも全員ハナコの熱狂的な支持者達だった。
それにこいつらが消えたことで拠点の移動に着手することが出来る。
そんなこんなで色々と片付いたが、一つ大きな問題がある。
そう、ハナコの後釜だ。
「というわけで第六十七回ニューワールド日本支部の作戦会議を始める。皆忙しい中、集まってくれて感謝する。」
私が基本的に司会を担当するのだが、今までで一番部屋の空気が重い。
あぁ…溜め息で幸せが逃げていくぅ………
自部隊の現在の状況や何人が戦線離脱したかや担当会社の経営状況等、当たり障りの無い報告を続ける。
我々ニューワールドでは戦場に立っていようがいまいが、資金作りのために週休三日制で朝から夕、または夕から朝まで働かせている。このように仕事に追われる毎日を送れば疲労によりニューワールドから離れる気力を失うという寸法さ。これは私と将軍の二人で考えた最高の作戦だ。
「………とりあえず………秘書の後釜に……」
"秘書"という単語を口にした途端一気に場の空気が最悪になる。
「えっ…と、まずは医者…」
「いらん。」
「次…に従者…」
「いりません。」
「………スゥ、いらないと思う人は挙手…」
Wao、将軍以外の皆が手を挙げた。
「皆は一人増やさなくてもニューワールドは回せるし必要ない…でOK?」
私の意見を口にすると将軍を除いた全員が頷いた。
「将軍…よろしいでしょうか?」
「……そうだな。それでは十二将から十一将に改名だ。それと秘書のアパレル会社が抜けた今だからこそ諸君らの会社経営に我が日本支部の全てが懸かっている。」
「「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」」
会議は終わり他の十に……おっと十一将が帰っていった。
「「フゥー。」」
私と将軍の溜め息が重なる。
「将軍、報告した通りこれからは慎重に慎重を重ねた行動が必要となります。如何するおつもりで?」
「……なぁタロウ。」
「……何でしょうか?」
「誰もいないしタメで……」
「将軍?」
「は、はい!」
「私と将軍が幼馴染みであっても公私混同は良くないことなのです。お分かり戴けませんか?」
「……すまない、忘れてくれ。」
「はい。」
「それでこれからだったな、当分は我々が敵として地上に出ることはない。あくまで客と店員、ギブアンドテイクで部下達の心も身体も万全にするのだ。」
「何を仰いますか。あのように仕事漬けでは思考力を低下させ我々ニューワールドへの服従を促す、の間違いでは?」
「ハッハッハ、そうとも言えるなぁ?」
「フッフッフ、それに命を張って戦わせているにも関わらず月収三十万とは、なんと少ないことか。あれでは娯楽に逃げることも出来ないでしょう。」
「ハッハッハ!日本支部立ち上げの時に二人で考えたこの制度、これのお陰で所属した者達がハナコの件を除いて誰も辞めたことがない!私達には経営の才があるのやも知れんなぁ。」
「フッフッフ、死ぬまで働かせて我々ニューワールドの糧にさせましょう!」
二人で一頻り笑った後、将軍がポツリと呟く。
「軍師よ、これは一人言だ。」
「?」
「何故、ハナコは離叛したのだろうか。我々のやり方はまぁ、社会では認められないことだろう。
だが、ニューワールドとしての誓いを立て、皆で笑いあったあの時間は何だったのだろうか?嘘…だったのだろうか……。」
これは…ちょっと重症かな。少しはフォローが必要か。
「では、私も一人言を。
我々ニューワールドは少なからず何かしらの理由があって所属している者達ばかりです。ハナコはその何かしらの理由がなくなった、もしくは単に我々のやり方に嫌気が差したのでしょう。」
「そうか……」
「はい。」
「ハナコは今、笑えているだろうか。」
「きっとそうですよ。だって我々ニューワールドは、基本自己中心的、なんですから。」
「ふっ、そうだな。」
どうやら持ち直せたようだ。願わくば将軍が…敬一が笑顔であらんことを。
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