なっ!?……お前もかよ!?
麝香連理
第1話 なん……だと!?
ん?これは?………そうか…あぁすまない、とにかく自己紹介をしよう。
私は軍師タロウ。
地球征服を目論むニューワールド日本支部のNo.2にして十二将が一人
ニューワールドとは各国に一人、宇宙より現れた謎の存在、呼称"ニュー"により超常的な力を与えられた者達が地球征服の為に結成した組織だ。私は光栄にも、その選ばれた日本人、ケイイチ将軍に初めて力を与えられたのだ。力を与えられるとその人物の能力が飛躍的に上昇し、さらにその人物が一番得意としていることが特に強化される。
まぁ…なんだ、つまり元々普通の一般ピーポーってことさ!運動は中の上、顔は中の下位。私達が根っからの悪人だと思っていた人達には申し訳ない。
それに私が得意なのはゲーム……だから日本支部で私にゲームで勝ったものはいないのだ!
………ハァ、虚しい……。
あの時運動が一番得意とか思っとけば身体能力超強化!ってなって将軍の助けになれたのに。
よーするに今の私は最初に力を与えられたという地位に固執したちょっと動けるニート……は言い過ぎか。基本は会計や部下の給料の査定をしている事務職さ。
まぁそんな話しはさておき、三年前から我々日本支部は活動を始めた。街の破壊や重役の暗殺、果ては新進気鋭のアパレルブランド会社の設立等々。因みにアパレル会社がこの日本支部の主な活動資金を担っていた。最近の子は新しいのによく食い付くため笑いが止まらなかった。
そして二年前、まぁ、今は一月なのでほぼ去年だが、突如として我々に邪魔をする者達が現れたのだ。それが魔法少女。アニメとかでよく見た存在が現実の物になるとは私も最初は驚いたよ。けど、そいつらは我々のような存在に優しくないのは当然だった。最初は我々も潰そうとしたが、魔法少女達による攻撃で戦意喪失をした部下達は将軍に与えられた力が霧散したのだ。つまり一般ピーポーに戻ったってわけ。
流石にまずいと思ったね。だからこそ、それからは街の破壊を最小限に、ニューワールドの活動資金作りに東奔西走していた。
そして今回……ついに軍備が整ったのだ。この装備にこの人数…負ける筈がない。
なぜかって?教えてやろうではないか!現代ではネットが当たり前のように身近にある、さらに魔法少女は事故や災害にも駆り出されている……つまりネットの情報で魔法少女の人数や担当区域が分かるのだよ!まぁ、我々の拠点は首都にしか無く、十二将の中にテレポート的なやつを使える人材がいるため我々が神出鬼没な行動のお陰で魔法少女は各地に散らばっているのだ。
それにしても、過去の回想とはな。これからとても大きな出来事が起きるのだろうなぁ……フッフッフ。
「将軍、号令を。」
「分かった。
皆、よく聞け!これから魔法少女達と戦う!最初は辛酸を舐めさせられたが今は違う!いつも通りなら負けはしない!今までの辛い訓練を耐えた諸君らにならやってのけると信じている!
……ニューワールドに栄光あれ!」
「「「「ニューワールドに栄光あれ!!」」」」」」
ザッザッザッザッ………
フッフッフ、この綺麗な行進、これ程の練度なら魔法少女達にも効果覿面だろう。
それに十二将は私が拠点、四つの地点に二人ずつ、襲撃部隊に三人がついている。四つの地点で他県から救援に来る魔法少女達を足止め出来れば首都圏の魔法少女を無力化出来る。これだけでも儲け物だ。
『軍師様、こちら第四部隊。順調です。』
「分かった、作戦通りに動け。」
『ハッ!』
よしよし、魔法少女との戦闘が始まって一時間程、そろそろ疲労が見えてきたし、いつまで立っても救援が来ないことに不安を覚えているだろう。他のモニターに移る十二将達は十全に役割をこなしている。……ここで第四部隊の背後からの奇襲で魔法少女を撃滅だ!
私は今ニューワールドの科学技術を使って複数のモニターで現場の指揮を執っている。
あぁ……笑いが止まらない……ここまで上手く行くとはなぁ?
『第四部隊行きます!』
「フフフ、行け!そして誇りに掛けて魔法少女を潰すのだぁ!」
私が一人盛り上がってモニターに移る第四部隊の面々に熱視線を注ぐ。
もうすぐ…もうすぐだ!……………………?
『グハッ!?』
『ガッ!?』
「な!?何が起きている!?おい!聞こえるか!第四部隊!」
どう言うことだ!?作戦は上手く行っていた筈……何故……!?
そこで私は息を飲んだ。何故なら他のモニターには逃げる部下達とそれを追う魔法少女達。
何故だ!?戦線が崩れた!?何故!?何故!?
「何故!?」
もう一度、今度は少し離れて第四部隊の近くを見てみた。
「な…んで……そこで?」
そこにはニューワールド十二将が一人、秘書ハナコが武器である槍を持っていた。それはまだいい、問題はその武器を第四部隊に向けており、あまつさえ魔法少女の隣に立っていたのだ。
私は急いでモニターの通話モードをスピーカーモードに切り替える。
「どういうことだ!?ハナコ!貴様裏切ったのか!」
『ん?その声はタロウ……そこか。あなたはちょっと向こうに行ってて、これは私の戦いだから。』
ハナコがそう言うとそばにいた魔法少女が頷いた後何処かへ向かった。モニターで確認すると他の部下の追跡に向かった。魔法少女の足止めは大事だが今はそれどころではない!それに私は部下を信用している。一人増えたところで負けはしない!
「なんだ!その呑気な態度は!質問に答えろ!」
『ハァ悪いけど、私ニューワールド辞めるから。』
な……に………?
「……辞める?………辞めるってどういうことだよ!将軍に与えられた任務を放棄するのか!」
『あぁ、私が管理してるアパレル会社のこと?それはもちろん今まで通り私が管理するわ。その売り上げがあなた達に行くことは無いけどね?』
「ん…くぅぅぅ…!貴様ぁ!ふざけるな!その会社は俺達皆で作った会社だ!貴様に奪わせはしない!」
『うるさいわね、これはもう決めたのよ。それに素が出てるわよ?』
「ハァハァ……あぁ、そうかよ。ならそんな会社いくらでもくれてやる!それよりもハナコ、お前が将軍に与えられたその力、どうするつもりだ……」
『もちろん、魔法少女のひいては国のために有り難く使わせて貰うわね?』
「貴様ぁぁぁぁ!!!!」
『それじゃ、また会う時は戦場で。』
穏やかに微笑んだハナコは幹部だけが知っているモニターの絡繰、極小型ドローンを槍で破壊した。
「クッソがぁぁぁぁ!!!!!!!」
私は唇を噛みしめ、血が出ているのも気にせず大声で叫んだ。
「作戦は失敗だ!直ちに離脱せよ!無駄な犠牲は許さない!」と。
どうするべきだ。幹部の一人が脱退、それにモニターの絡繰がバレたことで今まで以上に慎重に。拠点は移動させれば何とかなるが、我々のある程度の情報を流されるのは痛い。我々は秘密主義が多いため、ハナコが把握している情報の数にもよるが……やはり最悪までは考えるべきだ。資金に関しても他の会社も伸びてはいるがあのアパレル会社程ではない。ハナコにアパレル会社を任せて、それ以外の会社の情報を伝えなかったのは不幸中の幸い………いや…結局不幸でしかない……か。
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