.Ⅱnd 02
チュウカはまたひとりだった。軍がこの街に押し寄せたあと、チュウカは一時女の元に居た。同居していた。知り合いの店の、アキラの店の女だった。武器もその時にどこかへわざと置き忘れた。もう、戦わなくてもいいかもしれないと思ったからだ。彼女はなぜかチュウカに優しくし、気安く声を掛けてくれた人だった。恋人というよりかは、家族のようであった。しかし、死んでしまった。
病気だった。倒れて救急搬送されて、そのまま帰らぬ人となった。チュウカは落ち込むことはなかったが、悲しくはあった。前に師匠と別れたときのような、そんな悲しみがあった。
それからは裏街を転々としていた。いつものことだった。最近は、見つけたばかりの違法投棄された家電の山をねぐらにすることが多い。物が多いと、何かあった時に武器にしやすいのだ。ここしばらくはビニールパイプを手にしている。やはりある程度の長さと頑丈さ。これは前の武器もそうだったが、必要条件となるなと、そう思っていた。
「ちわー」
「よお、チュウカ。いらっしゃい」
俺はアキラの店に入ると、カウンターに座り、グラスに入った水を受け取った。
「注文はあるか?」
「そうだな、チャーハンとジュースを」
「またそれか。いつもチャーハンばかりだな。……それより、金はあるのか?」
チュウカは財布を見せる。
「合法的では無さそうだな」
「俺が合法だったときがあるか? それじゃなきゃこんな店使わないぜ」
「また酷い言い草だ」
「注文頼むよ、マスター」
「はいよ、お客さん」
チュウカはあたりを見回すと、変わらない店内に変わらない内装に安心感を覚えた。そして、どうしても目に入ってしまうのが鉄の塊だった。それは中華包丁のように大きく、子供の、たとえばチュウカの身長よりはデカイ長身の武器だった。それが店の奥に立てかけてある。今は主人なきそれは、その時をひっそりと待つかのように。
「チュウカ、もうこれは使わないのか」
「ゆい、だったか。彼女に戦いはもうするなって言われてるんだよ。傷つくのは、いやだからって。死んだけどな」
「そんなこと言って、さっき喧嘩してたじゃない」
「あれは、仕方無くな。相手が殺すとか言うから。殺されるのは嫌だろ。だから、抵抗したんだよ。そう、あれは抵抗で仕方なく」
「はいはい。わかったから、ほら、チャーハン」
「……いただきます」
チュウカは安っぽいチャーハンをかき込んだ。何かをごまかすように、食べた。こういうところはいくつ経とうが、変わらないのかもしれないと思いながら、ただ、今は眼の前の焼き飯を食べることに、それだけを嬉しく思いながら、ひたすらに食べたのであった。
※ ※ ※
店を出て通りに出た時であった。
その時、敵は突然襲来してきたのであった。
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