.Ⅱnd 03

 無人飛行機。プロペラ四つをくるくると回し、カメラと自動小銃を備えた物騒なやつ。危ないと思ったときには遅く、地面に鉛の玉が無数に放たれた。チュウカはすぐに走って飛んだ。


 コンクリのビルの屋上へ飛ぶと、急いで次から次へと飛んだ。屋上から屋上へ。やがて通りを出ると、街の外れへと来る。瓦屋根へ飛び移ると、電線へ飛び、看板の上に飛び、そして小道に降りる。



 ぶーん。



 相対。会敵。



 自動小銃から放たれた鉛の玉を飛んでかわし、ビニールパイプで敵を真上から粉砕。撃破。衝撃が真っ直ぐ当たり、機体を真っ二つにすることでその活動を停止させた。



「いったいこれはなんなんだ……」


 

 ラジコンのおもちゃのようにも見えたが、しかしそれにしては物騒なものがついている。近くによって、手にとって見ると、本当におもちゃのようである。プロペラが四つ、小型のカメラが一つ、小銃が一つ。他には何もない、使い捨てのような機体。壊されることを想定しているかのような機体。本気で殺しに来てはいない、何か、警告のような、そのようにも感じた。警告。それは、なんだ?



 すぐに思い浮かんだのは軍だ。これも軍のおもちゃなのかもしれない。銃も付いているし、可能性としては最も高いだろう。しかし、あの軍は撤退したはずだ。この俺を、対象をロストしたことにして、撤退した。するとなんだ、警察か? ついに、ようやく警察が重い腰を上げてチュウカ捕獲に乗り出したのか。いや、それにしては物騒なやり方だ。武力的すぎる。彼らならもっと直接的に、警棒振りかざして追いかけてくる。それが、普通だ。日常だ。ガキとの追いかけっ子と、警察との追いかけっ子。それがチュウカの日常。



 チュウカの日常にはもう一人存在した。それは闇だった。チュウカの影で、影武者で、影分身。闇と名乗るもう一人の自分。最近はそんなやつにも悩まされていた。チュウカの日常は忙しいのだ。



「闇は良いぞ。身を委ねろ。闇に生きろ」


「またお前か。しつこいぞ。うるさいぞ」


「闇は力になる。絶対的な力となる。この街で最強だ、誰も敵いやしない。挑む気力さえなくなる」


「俺はこの街で最強だ。そんなモノ必要とはしていなくていないんだ。今忙しいんだ、黙ってろ」



 ぶーん、ぶーんと鳴った。



「ケケ、あーあ、面白くなってきやがった。まあ、どうせ表街の連中の誰かだろうよ」



 新手が追って現れたのだ。二機、三機と次々にぶーんと飛びあがっては、チュウカめがけてやってくる。チュウカはハエ叩きのように、モグラたたきのようにそれらを撃破する。しかし、何度やっても、その追撃は止むことがなかった。チュウカは、また街を飛び始めた。

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