「改めて、よろしく、ね」
「レイ、メイ、起きて。もうすぐ、ご飯、だから」
寝顔を眺めるのに夢中になっていたら、すでに一時間半も経過していた。エイナに声を掛けられなかったら、このままずっと眺めていた気がする。
「……んーもうちょっと、もうちょっとだけだから……ママ」
その言葉にわたしは二人を起こそうとする手を止めた。そうだ。この子たちはもう親がいないんだ。わたしと同じように、これから先どうやっても無くならない傷を抱えている。
その消えることのない寂しさに、わたしは寄り添えるだろうか?
(今考えても分からないことだけど……わたしにできることをしていけば、きっと、何とかなる、かな? まぁとりあえず今は、二人を起こそうか)
「今、起きな、かったら、ご飯、なし、だよ?」
「やだやだ! 起きる! 起きるから! メイのご飯とらないで!」
「起きるよ! だからレイにもご飯食べさせて!」
わたしがそう言った瞬間、二人は文字通り飛び起きた。
(……なんだろう、すごく申し訳ない気分になるな。うん、二人には、好きなものを好きなだけ食べさせてあげよう。絶対に)
「おはよう。レイ、メイ。安心して。ご飯は、ちゃんと、あるから、ね」
「本当に? マ……ハツキお姉ちゃん」
「うん。本当だよ、メイ。レイも、安心、して、いいよ」
(起こすためとはいえ、不安な思いをさせちゃうのは、ダメだよね……効率よく、安心させたまま起こしてあげる方法、なにか考えないと)
「30分後、くらいには、できる、から、それまで、には、降りて、来て、ね」
「「はーい」」
二人の返事を聞いたあと、キッチンへと向かい、わたしは料理を始めた。そして、料理が完成する頃には、全員が食卓についていた。
「あ、ハツキ! できたの? 運ぶの手伝うよ!」
「うん、ありがとう」
料理を運び終え、わたしも席に着いた。みんなの顔を見渡し、笑顔で話しかける。
「改めて、よろしく、ね、みんな。わたしは、みんなが、ここに、いると、選んで、よかった、と、思える、ように、頑張る、から」
「ハツキは頑張りすぎだよ! そんなに頑張らなくたって、私はここに留まる選択をしたことを後悔はしてないし、ここがいい場所なのは、もうみんなわかってると思うからさ!」
「そうだよ、ハツキさん。そんな風に気を張らずに、一緒にのんびり過ごしてくれればそれでいいの」
エイナは少し怒っているような表情をしてそう言った。ナツメも、わたしのことを心配しているような表情をしており、他の子も同じような顔をしていた。
(心配、させちゃってたんだ……そうだよね、それじゃあ駄目だよね。安心させるために頑張ってるのに、心配なんかさせちゃったら)
「ごめん、ね、みんな。頑張り、過ぎない、よう、気を付ける、から」
「絶対にだよ!」
「うん、わかってる。それじゃあ、食べよっか」
これからどうなるかは分からないけど、穏やかな日々を送れることを、今はただ願うだけだ。
あとがき
最近少し投稿が止まってしまい、申し訳ありません。いやー学マスが楽しくってですね。面白いですよー。
毎日は無理ですが、週三回くらいは投稿していきたいですね。
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