みんなの居場所
あれから数日が経ち、最後の一人を家族の元へ送り届けることができた。みんながそれぞれ、わたしに暖かな家庭の景色を見せてくれた。それだけで、頑張ってよかったと心底思えた。
ほとんどの時間飛び回っていたため、エイナたちと話す時間はあまりとれなかった。食事も作っておいたのを食べてもらうだけだったから、久しぶりに一緒に穏やかな時間を過ごしたい。
わたしは、みんなの居場所になれるだろうか? 正直不安だ。だけど、頑張ろう。これがわたしのやりたいことだから。
「おかえり! ハツキ!」
「おかえりなさい。ハツキさん」
「うん、ただいま、二人とも」
家の前にワープすると、ちょうど玄関の前に、エイナとナツメがいた。
「他の、みんな、は?」
「レイとメイはお昼寝してるよ。セツとフカミは畑の方にいるはずだよ」
「そっか。二人は、今は、何を?」
「私たちは、家の掃除をしようかなって思ってる。結構散らかってるから」
「そっか。わたしも、手伝おうか?」
「ダメだよ。ハツキは休んで! ここ最近全く休んでないでしょ?」
エイナの言う通り、わたしはみんなを家に帰すため、最近は一睡もしていない。だが、わたしの身体は疲れないし、心の方もみんなの笑顔が見れたから、十分に癒されている。正直休む必要はないが、エイナ達の気遣いはとても嬉しい。素直に厚意を受けとるべきだろう。
「うん、分かった。じゃあ、セツと、フカミに、会って、くる。二人とも、お掃除、頑張って、ね」
「うん。任せて!」
とは言え、ただ休むだけと言うのは退屈なので、セツとフカミに話しかけに行くことにした。
畑の方に向かうと、わたしの姿に気づいたセツがこちらに走ってきた。フカミも、セツが走り出したのをみてわたしに気づいたのか、同じように走り出した。
「おかえりなさいませ! ハツキ様!」
「はぁ、はぁ……おかえり。ハツキ姉さん」
「うん。ただいま、二人とも。前も、言った、けど、セツ、わたしに、様なんて、つけなくて、いい、よ?」
「いえ! ハツキ様はわたくしの恩人ですから! 敬意を払うのは当然のことです!」
「そう、思って、くれる、のは、嬉しい、けど、なんと言うか、むず痒い、ね……フカミ、大丈夫? まだ、体力、戻って、ない、でしょ?」
「……大丈夫。心配はいらないから……本当に大丈夫だから、そんな顔しないでよ」
フカミは、盗賊達に捕まえられていた時間が一番長く、かなり身体が弱っていた。心配しないでと言われても、そんなことできるわけがない。
「わかった、けど、絶対に、無理、しちゃ、ダメ、だから、ね」
「分かってるよ」
「本当に?」
「わ、分かってるって。分かってるから、離れてくれない? その、顔が、ち、近いから」
これくらいはっきり言わないと、この子は絶対に無理すると思う。顔を赤くしながらも、頷いたのを確認すると、顔を離した。
「二人は、何を、してた、の?」
「ちょっとした運動にと、畑の雑草を抜いておりました! 元々はわたくし一人でやるつもりだったのですが、フカミさんが手伝ってくれまして!」
「俺は、やることがなかったから。実際、いい運動になってると思う」
「そっか。ありがとう、ね。二人とも」
そう言ってわたしは二人の頭を撫でた。セツは嬉しそうに顔を緩めた。フカミは恥ずかしそうにしつつも、その口元を緩めた。
「二時間後、くらいに、ご飯に、する、から、それまで、には、家に、戻って、きて、ね」
「かしこまりました!」
「うん、わかったよ」
私は家に戻ると、音を立てないように、レイとメイが寝ている部屋に入る。穏やかな表情で眠っている二人の姿が見えた。二人が並んで寝ている様は、何というか、すごく絵になる。
私は二人の枕元に座った。ずっと眺めていても飽きない、そんな気がする。一時間くらいしたら起こしてあげようと思いながら、わたしは二人の寝顔を見守っていた。
あとがき
レイとメイは次回でちゃんと喋ります。しばらくはこんな感じでほのぼのしますので、気楽にお楽しみください。
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