家族の温かさ
「わぁーー! すごいすごい! 私、空飛んでる‼」
セナをお姫様抱っこしながら、わたしは空を飛んでいた。目的地は当然、セナの家だ。セナの家の場所は、魔力感知を用いることで、どうにかおおよその位置は把握することができた。
双子のレイとメイや兄弟姉妹である子供たちの魔力を見た時に、血の繋がっている人間の魔力が似通っていることが分かった。それを利用できないかと考え、わたしは魔力感知の範囲をこの大陸全体に広げた。情報が一気に脳に入ってきたが、頭が痛くなったりすることは無かった。うん、本当に便利な体だと思う。そういうわけで、今わたしは、似たような魔力があった方向に行っているというわけだ。
(この魔力感知、ずっと展開し続けても問題はないけど、そうしたらずっと家に帰した後の子供たちの様子を気にしちゃいそうだな。それは流石に、なんかだめだよね)
「ハツキお姉ちゃん、本当にすごいね!」
「ふふ、ありがとう、セナ」
褒められるというのは、本当に嬉しいことだな。特に、子供の純粋な言葉は、心に響くものだと思う。
それから少しして、魔力感知で確認した土地が近づいてきた。わたしは少しスピードを落とすと、セナに話しかける。
「ねぇ、セナ。この辺り、見覚え、ある?」
「えっと……うん! あるよ! この近くに、わたしのお家がある!」
セナは興奮気味にそう言った。よかった。魔力感知は正確みたいだ。
「よし、じゃあ、ここからは、歩いて、行こっか」
「うん!」
直接空を飛んできたのを見られたら、色々混乱を招きそうだから、地面に着地し、歩き始めた。それから、数分もたたずに、村のようなものが見えてきた。
「あの村、だよね」
「うんうん。あの村に、お家がある!」
私は一応フードをかぶり、顔を見られないようにして、村へと向かった。そこは、穏やかな雰囲気のある、とてもきれいな村だった。
「良い、村、だね」
「でしょ!」
セナが自慢げにそう言ったのを、ほほえましく思いつつ、村を見渡す。何人か人が見えるが、こちらを見た人は、信じられないものを見たような表情をしたかと思うと、どこかへ走っていった。もしかして、セナのことを知らせに行ったのかな? そうだと良いな。
「セナの、お家は、どっちに、ある、の?」
「えっと、わたしのお家は――あ」
セナの眼は目の前から走ってきている男女に注がれていた。間違いなく、セナの両親だろう。セナもまた、二人の方へ走りだした。
「「セナ!」」
「お父さん! お母さん!」
二人がセナのことを強く抱きしめた。その眼には涙が流れていた。わたしには見えないけど、セナも同じように涙を流してるんだろう。
(良かったよ。もう一度、セナを家族に会わせることができて、本当に良かった)
そこには、わたしにはあげられない家族の温かさがあった。愛情があった。その眩しさに目を細めながら、わたしはその光景を眺めていた。
(あぁ……羨ましい、な)
わたしにはもう、夢見ることすらできない家族という存在。それを、心底羨ましいと思う。
「あなたが、セナを助けてくれたのですか?」
そう、セナのお父さんが聞いてきたので、わたしは小さく頷いた。
「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます‼」
「わたしが、やりたくて、やったこと、だから、お礼は、いらない、よ」
「そうだとしてもです。娘にもう一度会わせてくれたあなたに、お礼を言わない理由はありません!」
「その通りですよ。何か必要なことはありませんか? わたしたちにできることであれば、何でも致しますので」
わたしとしては、この暖かい景色を見られただけで十分すぎる。だけど、二人の思いを受け取らないというのも、失礼だろう。だったら――
「今日は、もう、帰らないと、いけない、けど、またいつか、ここに、来ても、いい、かな?」
「当然です! あなたは、娘の命の恩人なのですから!」
「誠心誠意歓迎しますから、いつでも来てください! ですが、それだけでいいのですか?」
「うん。いい。それだけで、十分。また会って、お話し、できたら、それだけで、嬉しい、から」
わたしは、セナに目を向ける。涙交じりの笑顔でこちらを見てくれた。
「セナ、元気で、ね。その、指輪の、使い方、分かる、よね」
「うん!」
「あの、その指輪はいったい? えっと……」
「ハツキ、です。その、指輪は――」
わたしは指輪の効果を説明した。二人とも驚いていたが、わたしが実際にワープするのを見せると、さらに驚きながらも、信じてくれたみたいだ。
わたしは、セナの手を握り、指輪でこの家へ帰れるように設定を加えると、手を離した。そして笑顔で言う。
「また、ね」
「またねーー! ハツキお姉ちゃん!」
セナとその両親に手を振られながら、わたしはワープして家へと帰った。
あとがき
ちょっと長くなりましたね。セナは今後も出番がある予定なので、お楽しみに。
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