また会えるように
眼を開けると、もう朝になっていた。今日はわたしが一番早くに目覚めたらしい。エイナも含め誰も起きている気配はない。いつもなら二度寝をしているのだが、今日は作りたいものがあるため、エイナを起こさないように布団から出た。これから作ろうとしているものは、私のためのものではあるが、多分、きっと、子供たちも喜んでくれると思う。
それから一時間ほどが経って、エイナが起きてきた。製作品はいろいろ実験を繰り返してみたが、問題なく動作することが確認できた。あとはこれを量産するだけだ。
「おはようハツキ。珍しいね、こんなに早く起きてるなんて。それに、何を作ってるの? それは、指輪?」
「うん。みんなに、あげようと、思って。せっかく、出会えた、のに、家に、帰して、それで、お別れ、なんて、ことは、寂しい、から」
「……たしかに、そうだね。せっかく仲良くなれたのに、もう会えないなんて嫌」
きっと思いはみんな同じだ。そう、信じよう。
「ひと、段落、した、から、朝食、作って、くるね」
「うん! 楽しみにしてるね」
朝ご飯だから軽いものではあるが、おいしいものを作れるよう、頑張ろう。
少しして、子供たちも目が覚めたみたいだ。朝食もあと少しで完成する。30人分作るっていうのは、かなり時間も労力もかかる。でも、楽しいな。
「よし、できたよ、みんな」
だってこんな風に、みんなが美味しそうに食べてくれるから。本当に、嬉しいな。可能ならばこのままずっとこの時間が続いてほしい。でも、約束を守らなきゃ。何よりもそれは、大事なことだから。みんながご飯を食べ終わったのを見計らって、口を開く。
「みんな、話がある、の」
「どうしたの? ハツキ」
「約束した、通り、わたしは、みんなを、家に、帰して、あげたい、の。帰りたい、と、望む、なら、わたしは、今すぐに、でも、家に、連れて、いく、よ。もちろん、ここで、暮らしたいと、望むなら、それでも、いい。どう、する? みんな」
わたしがそう言った瞬間、子供たちの表情が一気に暗くなった。家に帰れるのなら帰りたいだろう。だけど、帰れない子もいれば、帰る場所はあるけど、エイナのように帰りたくないと思う子もいるだろう。そんな中、子供たちの中でも特に小さな女の子である、セナがおずおずと口を開いた。
「ねぇ、お姉ちゃん。お家に帰ったら、もう、お姉ちゃんやみんなと会えないの?」
きっとそれは、みんなが思っていたことで、聞くのが怖かったことだろう。わたしはその言葉に対して、笑顔を向けて応えた。
「ううん、会えるよ。絶対に、ね。そのために、これを、つくった、から」
わたしは、先ほど作り終えた指輪をみんなに配った。
「これは?」
「わたしの、作った、魔道具。いつでも、どこに、いても、それに、思いを、込めれば、ここに、来れる」
「! そんなこと、本当にできるの⁉」
「できる、よ。ここに、来たとき、どうやったか、覚えてる、でしょ? だから、絶対に、また、会える、よ。だから、心配は、いらない。みんなが、好きに、選んで、いいから」
この出会いを一度きりのものにはしたくない。これから先も、続いていくような、そんな縁を築いていきたい。それに、家族に会えるのなら、その大切さを忘れないでほしい。そう、思う。
「時間は、いくらでも、ある、から、好きなだけ、悩んで、良いよ。わたしは、この後、やること、が、あるから、行くね。お昼頃、には、帰ってくる、から」
わたしはそう言うと、魔法を起動し、ワープした。みんなが一番いいと思える道を歩んでほしいと、心の底から思いながら。
あとがき
失ってから大切なものに気づくなんてよく言いますよね。失う前から大切だったはずなのに、当たり前にあるものだったから、その大切さを自覚できずに、気づいた時にはもう遅い。ハツキは子供たちにそんな思いはしてほしくないと思っています。自分がそうだったからこそ。
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