「必ず、わたしが」
かなりスピードを出したこともあり、わたしたちは数分で洞窟の前へと着いた。
「……行くよ、エイナ、わたし、から、離れ、ないで、ね」
「うん!」
わたしたちは迷うことなく洞窟へと入った。洞窟内は明らかに自然にできたとは思えないほど整っていた。
「この、洞窟、魔法で、作った、みたい」
「そうなの?」
「うん、人の、魔力が、見える、から」
もともとあった洞窟を魔力で加工したのだろう。洞窟内には明らかに自然のものではない、人の魔力が見て取れた。そして、生体感知で前に二人の人間がいるのを把握できた。
「いる、よ。顔は、見られ、ない、ようにね。エイナ、大丈夫?」
「大丈夫、だよ。行こう、ハツキ」
わたしは杖に魔力を込めつつ、慎重に近づいていった。前にいた二人の盗賊は、おそらく上層に対する愚痴を話していた。
「ったく、いつまでこんなこと続けなきゃなんねぇんだよ」
「そんなこと俺に聞いてもわかる分けねぇだろ」
「だけどよぉ、一年前に逃げた奴隷を探せとか、ふざけたこと言いやがって。どうせ死んでるだろ」
「だとしても死体が見つかっていない以上、探さなきゃいけないって、何度も言ってるだろ」
「わかってるけどよぉ······」
「なら俺たちは仕事をするだけだろ。よい報告が来るのを期待しとけば良いだろ」
(やっぱり、エイナのことを探してる。本当に、連れてきてよかったのかな?)
そう思いながら、エイナに視線を向けようとしたとき、左手を強く握られた。その手には、エイナの覚悟がはっきりと込められていた。
わたしはその手の暖かさを感じながら、前へと進んだ。
「お、帰ってきたか······いや、だれだてめぇら!?」
相手がわたしたちに気づいた瞬間、わたしは杖に込めていた魔力を風に変え、盗賊二人を壁に叩きつけた。
「ガハッ······」
「侵入、者······」
盗賊が気絶したのを確認すると、ロープを作り手足を縛り、更に先へと進んだ。それ以降は、同じように遭遇したら気絶させて縛るを繰り返し、わたしたちは洞窟の最奥に到着していた。そこにはいくつもの牢屋があり、中にはあの時のエイナと同じ格好をした子供たちが何人もいた。彼ら彼女らの多くには、目に光がなかった。
牢屋の扉を破壊するが、誰も出ようとはしない。全てを諦めているように見えた。
「助けに、来たよ。出てきて、良いよ」
わたしがそう言っても、子供達は動こうとしない。信用できないんだろう。
(どうすれば······あ、鳥達と話すときに使っているあれなら、意思を直接伝えればきっと、わかってくれる、かな?)
そう考えわたしは、意思を、思いを直接伝えるべく、魔力を集めた。
『大丈夫、だから。わたしは、あなた、達を、助けに、来た。安心、して。絶対に、助ける。必ず、わたしが、守るから』
突然脳に直接聞こえてきた声に、子供達は困惑していた。
『お願い。わたしを、信じて』
わたしの助けたいという思いが伝わったのか、子供達の中でも特に大きい子が、おずおずと口を開いた。
「本当に? 本当に助けてくれるの?」
「うん。助けるよ。わたしが、絶対に」
子供達は互いに顔を見合わせると、小さな声で話し始めた。そして、こちらに視線を向けると、さっきの子が代表して口を開く。
「本当の本当に、助けてくれるんだよね? なら、お願い。私たちを助けて」
「うん、任せて。わたしが、みんなを、家に帰して、あげる、から。居場所が、なくても、わたしが、居るから」
子供達は、恐る恐ると牢屋を出てきた。わたしは、みんなに触れると、傷を治し、枷をはずした。
みんな、信じられないと言いたげな顔をしていた。同時に、とても嬉しそうにも。
「よかったね、ハツキ。みんな本当に嬉しそう。」
「うん、よかった、よ。それ、じゃあ、帰ろうか?」
「帰れるわけねぇだろうが」
その声は、洞窟の入り口側から聞こえてきた。子供達はその声に怯えたような表情になる。姿を表したその男は、後ろに大量の仲間を引き連れており、一目で盗賊のリーダーだとわかるような見た目をしていた。
あとがき
長くなりすぎたので二つに分けました。すぐにもう一話も更新されるので、そちらもお楽しみにー。
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