「そばに居させて」
「それ、本当なの?」
エイナは怯えた表情で、鳥達とわたしを見ていた。信じたくないと言いたげな顔だ。けど、鳥達は嘘なんてつかないことをエイナは知っている。
「大丈夫、だよ、エイナ。絶対に、エイナには、辛い思いは、させない、から」
隠していたことが、エイナにバレ、焦りつつも、不安にさせないようにそう言う。
「……どうするつもりなの、ハツキ」
「二度と、この森に、近づけなく、する。奴隷の、子たちは、解放して、家に、帰して、あげる、つもり」
エイナはわたしがそう言ったのを聞き、嬉しそうな、不安そうな表情をした。
「ハツキなら、きっと大丈夫だと思うけど……怖くないの?」
「うん。だって、エイナを、守る、ため、だから」
「ハツキ……」
エイナはそれでも、不安そうな表情をしていたが、何かを決めたようにその表情を引き締めた。
「ねぇ、ハツキ。いつ、行くの」
「準備は、できてる、から、今すぐに、でも」
「なら私も連れていって。お願い」
わたしはその言葉に目を見開く。行かせるわけにはいかない。辛い思いはさせたくない。そう言おうとしたが、エイナの眼が、あまりにもまっすぐな物で、その言葉は口から出ることは無かった。
「私に辛い思いをさせないために、隠していてくれたことは嬉しいよ。でも私は、ハツキの力になりたいの。戦う力なんてないし、邪魔になると思う。だけど、私はハツキにも辛い思いはしてほしくないの」
「エイ、ナ」
「ハツキは、人の命を奪ってでも、盗賊を追い払うつもりなんでしょ? どれだけ覚悟を決めていたとしても、人の命を奪うのはきっと辛いこと。だから私に、そばに居させて。私がハツキを、支えるから。お願いだよ、ハツキ」
私はエイナのことを見つめる。その表情は覚悟と、恐怖が同時に見て取れた。エイナは怖くても、わたしのために頑張ろうとしている。わたしには、その思いを、拒絶なんてできない。それに――
(これを断ったら、エイナは悲しむよね。それじゃあ、何の意味もない、よね)
「わかった。一緒に、子供たちを、助けに、行こう」
「! うん。ありがとう! ハツキ!」
「それは、こっちの、セリフ。ありがとう、エイナ」
わたしはエイナ用に作っていた、フード付きのマントを渡す。
「これを、着てね。絶対に、フードは、外さないでね」
「うん、わかった」
「よし。じゃあ、行こっか」
わたしも同じように、ローブに着いたフードをかぶると、エイナをお姫様抱っこした。
「え⁉ ハ、ハツキ!」
「急いで、行く、から、我慢して、ね?」
「う、うん」
エイナは恥ずかしそうに赤面した。最近はエイナも飛ぶ練習をしているが、浮かべるだけで速度は出せない。なるべく急ぐ必要があるため、一番早く行ける方法を選ぶことにした。
(助けよう、必ず。きっとこれは、正しいことだから)
わたしたちは体を浮かべると、鳥達から聞いた洞窟の方へと飛んで行った。
あとがき
エイナの守られるだけは嫌という思いがはっきりと示されましたね。
次回は結構残酷な描写が入る予定です。ほのぼのしたのを書いてる以上、戦闘描写は可能な限り短くするつもりですので、気楽にお楽しみください。
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