そのためなら、わたしは
その日わたしは森の外に出ていた。エイナは連れてきていない。これをエイナに見せるわけにはいかないから。
(今日もいるな。やっぱり盗賊だよね、彼ら)
ここ最近、森の周囲で(おそらく)盗賊を見かけることが増えてきた。なぜこんなところに来ているのか探ったところ、逃げた商品を探しているらしい。商品、それはおそらく奴隷のことなんだろう。
(ここで逃げた奴隷、ほぼ確実にエイナのことだよね。エイナがいなくなったのは一年前、普通ならもう死んでいると考えるだろうに、どうして未だに探し続けているんだろう)
推測はいくつか立てられるが、どれも推測の域をでない。エイナに直接聞けば何か分かるかもしれないけど──
(聞くわけにはいかないよね。エイナに辛い思いはしてほしくないから)
最近は鳥達に頼んで、彼らの拠点を探っている。目的は当然、彼らをエイナから遠ざけるため。
(たとえどんな事情があろうと、わたしはエイナを守る。そのためなら、わたしは……)
森から離れようとした盗賊達を追いかけようとしたが、エイナに帰ると約束した時間になったことに気づき、諦めることにした。
(······うん。帰らなきゃだね。エイナのためだとしても、そのせいでエイナを悲しませたら本末転倒だからね。でも、絶対に見つけ出すから)
必ず居場所を突き止めると誓いながら、わたしは家に帰った。
「ただいま、エイナ」
「あ、おかえり!! ハツキ」
いつものようにエイナは抱きついてくれる。成長して大人びてきているが、こんな風に子供っぽい姿を見せてくれるのは、可愛らしいし、素直に嬉しいと思う。
(あぁ、可愛いな。本当に、守りたいな。この笑顔を)
その笑顔を見るたび思う。守りたいと。失いたくないと。だからわたしは決めた。
(わたしはエイナのためだったら、何だってできる。必要なら、人の命だって、奪ってやる)
エイナの頭を撫でながら、わたしは心の奥底にほの暗い闇が芽生えているのを実感した。
それから数日後、盗賊達の拠点と思われる場所を見つけたと、鳥達が教えてくれた。その場所は森林から少し離れた場所にある洞窟で、またそこには、かなりの人数の奴隷がいるらしいということも。
鳥達はそのことを、わたしがエイナと食事をしているときに話した。エイナはもう鳥達の言葉を理解できるというのに。
あとがき
ハツキの行動原理はエイナを悲しませないことに集約されています。エイナを笑顔にするためだったら本当に何だってするでしょうね。
盗賊たちのことを、エイナも知ってしまったわけですが、これからどうなるんでしょうかね。
あと、滅茶苦茶忘れてたんですが、エイナの毛の色は白っぽい茶色で、眼は金色です。描写してなかったなーって。
エイナには何かがあるみたいですね。それが何か分かるのは大分先になるとは思いますので、お楽しみに。
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