守られるたけじゃ嫌

 私はその日、やることがなかったため、家でダラダラしていた。ハツキは森林の探索に出かけていた。着いていきたかったが、今日はダメと言われてしまった。


(はぁ、寂しいな······私が危ない目に遭うかもしれない時は、絶対に連れていってくれない。大切にしてくれるのは嬉しいけど、私はまだ守られる存在でしかないんだな……)


 守ろうとしてくれるのはすごく嬉しい。だけど、私たちは対等じゃないんだと、そう実感してしまう。


(ハツキはすごい。私なんかじゃ届かないくらい遠い人。だけど、このまま一生守られるだけじゃ嫌)


 隣に立ちたい。後ろに着いていくんじゃなくて、並んで進めるようになりたい。


(頑張ろう。1歩ずつで良いから、追い付こう。ハツキに。なにもかも遠いけど、いつか一緒に、肩を並べて歩んでいけるように)


 そんなことを思いながら、外を眺めていると、あのときと同じ、一筋の風が吹いた。そう、ハツキが帰ってきた。


「ただいま、エイナ」

「あ、おかえり!! ハツキ」


 私は帰ってきたハツキに抱きついた。そうするとハツキは、いつものように抱き返してくれる。自分でも子供らしいことをしてるとは思うけど、やっぱりハツキを見ると甘えたくなる。まだ私は子供なんだから。


「良い子で、お留守番、できたね。偉い、よ」

「うん! えへへ······」


 ハツキは、私の頭をよく撫でてくれる。子供扱いされてるという思いが無いわけではないけど、素直に心地良いし、嬉しいから拒絶できない。


(背がハツキより大きくなったら、もう撫でてくれないのかな······成長したってことになるから良いことではあるんだけど、そうなったら寂しいな)


 隣に立つと言うのは、こんな風に甘えられなくなることでもあると言うことを、はっきりと理解し、複雑な気分になる。だけど今は――


(まだ、甘えてもいいよね。もう少し、もう少しだけでいいから)


 そうやって幸せな日々を送っていくなかで、どうしても頭によぎるのは両親の顔。帰らないといけないのは分かっている。だけど……ハツキから離れたくない。


 (ごめんなさい、お父さん、お母さん。どうか許してください。二人に会うのが怖いと思う自分を言い訳にしてしまう、弱い私を)


 消えない罪悪感を常に感じながらも、私はハツキと一緒にいられる幸せを強くかみしめていた。





あとがき

 エイナのキャラがすごくいい感じになったと思います。ハツキと比べると、普通に健全な形でエイナはハツキのことを慕っています。色々な複雑な心境を持つエイナは、ぼくとしても結構好きなキャラになりそうです。

 次回からはしばらくの間ハツキ視点だけになる予定です。あとそろそろ他のキャラも登場するかもです。

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