いつか終わる幸せ
エイナと出会った日から約一年が過ぎた。わたしと違ってエイナは成長し、10㎝くらい身長が伸びていた。あとなんか胸も大きくなってきている気がする……羨ましくなんてないから。
こうしてエイナが成長していくことを素直に嬉しいと思いつつも、いつか背を抜かされるかもしれない思うと、少し複雑な気分だ。
この一年間の生活は、一人で暮らしていたころとほとんど違いはない。ただ、魔道具を作る機会がかなり増えた。エイナが魔法を使ってみたいと望んだためだ。
エイナを含め獣人は、元来魔力をわずかしか持たないため、基本的に魔法は使えないそうだ。そのため、魔力を持たずとも魔法を使える道具を作ることにしたわけだ。魔法を使って楽しそうにしているエイナを見るのは、本当に癒される。
共に過ごす人が一人いるだけでも、わたしの生活は一人だった時の何倍も充実していた。このことに気づかせてくれたエイナには、本当に感謝しかない。
この日は珍しく、わたしはエイナより先に起きていた。あの日以来ずっと、わたしたちは同じ布団で寝ている。エイナがそうしてほしいと言ったのもあるが、わたし自身も最近は、エイナと一緒に寝たいと思っており、エイナなしではもう寝られなくなっている気がする。
(ん……朝かな? あ、エイナまだ寝てる……可愛い寝顔だな。こういうところはまだ子供って感じだね)
基本的にここでやることは、全てわたし一人でこなせてしまう。わたしとしてはエイナが一緒にいてくれるだけで満足なのだが、エイナとしては、何もできないのが嫌だったみたいで、積極的に作業を手伝ってくれた。
(昨日は畑の収穫で、いつもより忙しかったからかな? ぐっすり眠ってるなー……うん、わたしもまだ眠たいし、もう少し寝よっか)
「おやすみ、エイナ。ずっと、一緒に、いて、ね」
起こさないように小さく呟き、再び目を閉じる。本当に、幸せな日々だと思う。これが、いつか終わる幸せだとわかっているからこそ、わたしは、この日々をただただ大切に思う。
この幸せが終わるとき、わたしは何を思うのだろう。分からない。分かりたくない。考えたくない。終わりなんて、来てほしくない。
そんな思いを心の底に押し込めながら、わたしは再び眠りについた。
あとがき
ハツキはこの一年で、大分エイナに依存しつつあります。だからこそ、エイナがいつかいなくなるかもしれない現実に、ただただ怯えています。それが、まだ想像できない未来であるうちは、心の奥に封じ込められていますが、その日が近づいた時、ハツキはどうするんでしょうかね?
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