「良いよ。おいで?」
エイナを家につれていくことに決めてから2分程歩き続けている。可能な限り進みやすい道を選んでいるが、慣れていない人にとっては、森林内を歩くのはすごく疲れるのじゃないだろうか。それにエイナは裸足だ。
「大丈夫? 疲れて、ない?」
「……あ、うん! 大丈夫だよ」
これは、大丈夫じゃないと判断すべきだろう。わたしは疲れることがないから、ちゃんと見ておかないと、こういうのに気づけないな。注意しなきゃ。
「おんぶ、するよ」
「しなくていいよ! 私は大丈夫だから」
「わたしは、あなたに、辛い思いを、して、ほしくない。だから、ね?」
「……うん。ありがとう、ハツキさん」
「ハツキでいいよ。エイナちゃん」
「だったら私も、エイナでいい」
そんなことを話しながらエイナを背負うと、ペースを上げ、進んで行った。
背負っているため顔は見えないが、人ひとり背負ってなお、楽々と進んでいるのをみて驚いているのが伝わってきた。
「……もうすぐ、着くよ。エイナ」
「うん。ハツキの家、どんな家なんだろう?」
「あまり、見たことの、ない、感じの、家だと、思うよ。でも、気に入って、もらえると、思う」
そして、家のある湖が見えてきた。建物や畑ができたことで、今や小さな村のようになっている。
「ようこそ、わたしの家へ。歓迎、するよ」
その景色に目を奪われていたエイナを家の前に下すと、改めてその姿を見る。逃げてきたということもあり、かなり汚れているし、小さな傷がいくつか見えた。
「こっちに、来て。けが、治すから」
「え?」
いきなりわたしがそんなことを言ったため、困惑しているエイナに触れると、その傷を消し、汚れも取り去った。
「……すごい。ハツキ、治癒魔法も使えるの?」
「まぁ、ね」
滅茶苦茶エイナの目が輝いている。すごいと思ってくれるのは嬉しいけど、なんというか、ちょっと、恥ずかしい。
「入ろうか」
「うん……おじゃましまーす!」
おそらくは初めて見るであろう和室を見て、エイナはすごく不思議そうな顔をしてた。
「変わった、部屋、でしょ?」
「うん。だけど、なんだか落ち着く部屋だね」
「そう、なら、よかった」
とりあえず、座ってもらい、この後どうするかを話すことにした。
「この後、どうする? お腹、すいてる?」
「うん……」
「わかった。じゃあ、料理、作ろうか。なにか、食べたいもの、ある?」
「お肉、お肉食べたい!」
「わかった。ちょっと、待ってね」
魔物の肉が食べられるのは実験済みだ。料理は、前世では全くしたことがなかったが、5年間の間に結構できるようになった。正直焼くだけでも十分おいしいのだが、初めて他人に食べてもらうのだから、頑張ろう。
「はい。召し上がれ」
「おいしそう……いただきます!!」
エイナはとても美味しそうに料理を食べてくれた。やっぱり、誰かが喜ぶ姿を見れるのは良い。もっと練習しようかな?
ご飯を食べ終わったころ、外はかなり暗くなっていた。
「じゃあ、そろそろ、寝よっか。布団を敷く、から、それで、寝ていいよ」
「うん……その、あの、ハツキ」
「何? エイナ」
エイナはとても恥ずかしそうにしながら、小さくつぶやいた。
「何というか、一人で寝るの、寂しいから……一緒に、寝てくれないかな?」
「……うん。わかったよ。一緒に、寝よっか」
わたしは少し大きめの布団を用意すると服を着替え、エイナにもパジャマを渡した。布団に入ってエイナを見ると、恥ずかしそうにこちらを見ていた。その姿を見ると、とても微笑ましい気分になる。
「良いよ。おいで?」
そう声をかけると、変わらず恥ずかしがりながらも、布団に入ってきた。わたしは、その身体を抱きしめると、エイナもわたしの背中に腕を回してきた。
「おやすみ、エイナ」
「うん。おやすみ、ハツキ」
約5年ぶりに感じる人肌は、とても暖かく、わたしの心にも安心感を与えてくれた。穏やかに目を閉じるエイナを見て、わたしも目を閉じた。
あとがき
こういうのが書きたいんですよぼくは。ようやく書きたい感じのほのぼの感を出せるようになってきました。次からも似たような感じで進んで行くのでお楽しみに!
あと、エイナの今の身長は120㎝くらいで、ハツキの方が当然大きいです。が、成長しないハツキと違って、エイナはまだまだ成長期です。いやー楽しみですね!
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