穏やかな時間をもう一度
あれから数時間が経過しわたしは森林の中を歩き続けていた。道中でモンスターに会うと、襲って来た場合は殺し、来なかった場合は無視するといった感じで進んで行った。その過程でゲームによくあるアイテムボックスを作ってみた。殺したからにはその命を有効活用するのが、礼儀だと思ったため、死骸は持ち運ぶことにした。
しばらく歩き続けている内に気づいたが、わたしは体が全く疲れないようだ。足が痛くなったりも一切ない。これは素直に便利だし、ありがたいと思う。ただ、肉体とは違い精神はやっぱり疲れてしまう。いくら綺麗だといっても、ずっと変わらない森林を見続けるのは正直言って飽きてくる。
(休む必要がないっていうのも考え物だな。別に疲れてないんだから進もうって思考になっちゃうのは、あんまりよくないよね。いい加減休もうかな……あれ? あっちの方、なんか他より眩しい。外ではなさそうだけど、行ってみようか)
同じ景色ばかり見ていたこともありほんの少しの違いにも気づくことができた。その方向へと進んで行くと、そこは森が開けており、とても大きな湖があった。また、久しぶりに見えた空はすごく綺麗に見えた。
「……綺麗だな、すごく。うん、ここで休もっか。周りにモンスターはいないみたいだし」
湖を眺めながら、近くの木にもたれかかって座る。祖父母の家で見た景色を思い出す。穏やかな田舎で暮らしたあの日々は、今も大切な思い出だ。
(懐かしいな。もう一度生きられるのは嬉しいけど、あの場所にもう行けないっていうのは、やっぱり寂しいな……似た景色だとしても、一人だとしても、ここならまたあの日々を過ごすことができるかな?)
叶わないと分かっていても願ってしまう、あの美しい時間をもう一度って。だからわたしは決めた。
「ここで暮らそう。人と交流したりとかは……できるか分からないけど。きっと、どうにかなるよね。好きに生きるのが、一番だよね」
わたしはそんなことを考えながら目をつぶり、眠りについた。きっとこれからは良いことがいっぱいだと、未来への希望を抱きながら。
あとがき
前回と違いかなりのほほんとした感じになったのではないでしょうか?
主人公の中で、祖父母はとても大きな存在です。彼女の生き方にとても大きな影響を与えています。
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